『ホステル』(2006年・米)

 

ホステル  (2006年・米) 

 

監督:イーライ・ロス/出演:ジェイ・ヘルナンデス他

 ※製作総指揮:クエンティン・タランティーノ

 

 評価…★★★★☆

 

<あらすじ>

アメリカの大学生二人組パクストンとジョシュはバックパッカーでヨーロッパを気ままに旅していた。途中で意気投合した女好きのアイスランド人・オリーが加わってから彼らの旅は遊びが中心になり、有名なオランダ・アムステルダムの歓楽街ではハメを外しすぎてホテルの門限をに遅れ締め出されてしまう。ハイになっている彼らは入れてくれと騒ぐが、アメリカ人に反感を持っている人が多いヨーロッパのことでひどい扱いを受け、通りに立ち尽くしていると救いの手を差し伸べてくれる男がいた。

招き入れられた男の部屋には彼のほかにラリって周囲が見えない状況でセックスしているカップルがいる。これは話のわかる相手らしいと喜ぶ彼らに、案の定、男は女を世話してやろうと言い出す。オリーは大喜びだがパクストンらは得体の知れない男の申し出にためらう。しかし、彼の差し出すデジカメの画像を見て、詳しい話を聞いて俄然その気になる。

この最高レベルの美女たちは商売女ではなく戦争の影響による男日照りに喘いでおり、彼女らのいる土地のホステルに行けば入れ食い状態、特にアメリカ人は引く手数多なんだという。その場所はスロバキアで、ホステルは観光案内などにも載っていない最高の穴場だという。それを聞いた3人は翌朝すぐにスロバキアへと向かう。

そして、辿り着いたホステルは話以上のパラダイスだった。夢見心地で美女とさんざん楽しんだ翌朝、パクストンらはオリーがいないことに気づく。

それがこの世の楽園が恐るべき地獄へと変貌するきっかけだった。

 

※以下ネタバレ有り※

 

 

 

 

※※※作品の内容上、エログロがらみの描写といつにも増して独断と偏見に満ちた発言が頻出します。そういうのが気にならない人だけ読んで下さい※※※

 

ずっと見たかったこの作品ですが、いざ見ると、あれ?期待したほどでもない…?

これはやっぱり期待感が物凄く大きかったのとサワリを既に見てしまってたからでしょうねぇ。うーむむむ。公開前に紹介されたのをちよっと見る機会があったのですが、あれがサワリだとは思ってなくて序章くらいだと思ってたんですよね。だから、もっと凄いシーンがあるんだろうなぁと期待に満ちて見てしまって…失敗しました(T_T)

それを考慮に入れて虚心に判断したら、やっぱり面白い映画だと思うので、評価は一応四つ星にしました。

 

 

でも、やっぱり残酷シーンは質も量も足りないと思う…。お客様方(要するに金を払って拷問する人達ね)も好事家の割にはイメージが貧困だよなぁ。頻繁にやってるならもっと洗練されていて然るべきだし、たまにしかできないというならもっと妄想が溜め込まれているものではないのかなぁ。しかも、皆さん単純バカのアメリカ人ではなくて拷問の歴史と文化を持つヨーロッパ人でしょ。もう少し頑張ってほしかったなぁ。

あ、でも、拷問中に血糊で足を滑らせて自分をチェーンソーで切っちゃうおじさんは間抜けすぎるけど面白かった(笑) 何事にもリスク管理は必要だとしみじみ思いました。いや、ほんとに。

まぁ、一般の人は充分満足(または辟易)できるレベルなのかな。映像的にはいい感じでした。

 

…という風にグロはちょっと物足りないのですが、グロと共にこの手の映画の両輪を担うところのエロの方はばっちりです!まぁ、劣情をそそるようなものでは全然なくて裸満載、おっぱい祭りだ!って感じなんですけどね(実際に作品中で「おっぱい…」って言うシーンがあって爆笑しちゃった^^;)。

でも、乳の質にも量にも不足はなく、冒頭のアムステルダムのシーンに出てくるチョイ役のおねーさんまで美形で美乳!これはちょっと感動かも。近来稀に見る乳偏差値の高さですよ!(何を言ってるんだ、この人は…。私だが…)

と、私は大喜びで見てたのですが、そういう趣味のない人にはこの映画の前半はかなり退屈かもしれませんね。バカガキどものバカな言動と女の裸くらいしか描かれてないですからね。まぁ、この能天気なくだりがあるから後の惨劇が際立つし、生贄斡旋人という正体を見せ始めてからとそれまでのフェロモン全開のおねえちゃんたちの対比というのも鮮やかになって良いというのもあったりするのかなと思うけど、やっぱり長過ぎかな。私は満足ですけど^^;

 

 

この映画の最も気に入らないところはラストですね。怯えてたパクストンが急にやり手になっちゃって、車で3人ひき殺した上に、電車で見かけた関係者の後をつけていって駅のトイレで手際良く惨殺する…というのは見てて面白いんだけど現実的じゃない。そもそも脱出成功したのも相当に現実的じゃないし。ひとりでならまだしも、ほとんど心神喪失してる上に言葉もろくに通じない一目でただ事じゃないとわかる外見の女連れて逃げおおせるって有り得ないだろ。

しかし、問題はリアリズムの追求とか構成云々ではないのです。私はとにかく、最後のひとりが脱出できただだけでなく復讐までも遂げてしまった(それもほぼ完璧に!)というのが何とも気に入らないのです。

 

本作の状況は理不尽な暴力みたいなものだから、通常であれば私は被害者側にすっごい感情移入するんですね(ちなみに理不尽なのが嫌いなので、被害者側に何らかの理由(加害者側をバカにしたとか、言い伝えに逆らったとか、封印を破ったとか…)がある場合はそうでもない。逆にやられちまえと思って見る事もある)。

何とか逃げてくれと祈るような思いで見続けて、最後の一人が満身創痍で今後の人生に支障ありそうな状態であったとしても、とにかく逃げ延びたということだけで拍手喝采して、加害者に復讐でもできたら気分的にはお祭り騒ぎってなもんなのですが、本作については何故そうではないのか?別に加害者側に感情移入しているわけでもないのに?

うーん、多分、個人的にこの映画に出てるようなバカなアメリカ人青年が好きではないからでしょうねぇ。あと、加害者側に感情移入はしてないけど同情できる余地があるからかな。

まぁ、突然切り刻まれた上に殺される立場にあったら相手はモンスターとしか思えないだろうけど、第三者的に見れば加害者はちょっと行き過ぎた普通の人間なんですよね。(激しく異論のある人もいるかと思うが、あくまでも私の意見なので見逃して下さい)

よくホラー映画の加害者役として出てくる完全に頭のおかしい人とか病的な殺人嗜虐症とか本来的な意味でのモンスター(この世のものでない存在含む)とかとは違って、彼らは野放しにしたとしても何ら危険のない存在なわけですよ。特に斡旋人(適当な言葉が見つからないが女衒の殺人版みたいなイメージ)たちは殺人衝動とか持ってるわけではなくて純粋なビジネスだし。だから、殺さないといけない必然性が感じられないわけです。いや、勿論パクストンの心理としては殺さずにいられないのはわかるけどね。

 

 

うーん、こうして感想を書いていくと東欧という舞台設定を始めとして何か考えさせられるところが多いなぁ。こういうのってホラー映画としては正しくないよなぁ…(T_T)