『 カタコンベ 』 ( 2007・米 )

◆ カタコンベ ( 2007年・アメリカ )

 監督:デヴィッド・エリオット/出演:シャニン・ソサモン、アリシア・ムーア 他

 

 評価…★★☆☆☆

<あらすじ>

ヴィクトリアは神経が細く内向的な性格で、精神安定剤が手放せない生活を送っていた。そんな彼女にアメリカからソルボンヌ大学へ留学している姉から遊びに来るようにという葉書が届く。そこに書かれた「 パリに来たら、あなたの人生が変わるわよ 」 という言葉に惹かれ、ヴィクトリアは思い切って誘いに応じることにする。

空港でのちょっとしたトラブルや英語の通じない人々、そしてイタズラ好きでちょっと意地悪な姉と、その友人たちに、少々たじろぎながらもヴィクトリアは初めての海外旅行、そして、美しく刺激的なパリの街と人々に高揚して、いつものようにパニックになったり、内にこもったりすることなく、何とか対応できていた。

そして、姉に連れて行かれたパーティーでも結構楽しく過ごすことができていた。その会場が、200年前に作られた巨大なカタコンベ( 地下墓地 )内で、周囲に大量の骸骨が積み上げられているということを考えれば、これはヴィクトリアにとっては大きな変化だ。そして、飲めないアルコールも飲み、麻薬も吸い、かなりハイになりながら、このアンダーグラウンド・パーティーの主催者だという姉の友人たちと楽しく過ごしていたヴィクトリアだったが、やはり完全に殻を破ることができず、ちょっとした気持ちの行き違いから彼らのいるところから離れようとする。

カタコンベ内は迷路状になっており、音も響かないので、迷子になったら終わりだと言って止めようとする姉たちを振り切って通路へと出たヴィクトリアだったが、やはり、すぐに道がわからなくなるし、妙な気配も感じるし、段々と不安が募ってくる。そこへ、心配して追いかけてきてくれた姉が来て一安心したものの、次々にトラブルに見舞われ、更に暗闇に潜む気配は強くなり始める。まさか、さっきのパーティーで話していた伝説のカタコンベに棲む悪魔が本当に存在するのか?恐怖と不安に囚われ始めたヴィクトリアの前に現れたものは…。


魅力的な題材と宣伝文句、予告編で見た映像などから相当に期待して借りたのですが、これが驚きのつまらなさ! 冒頭の雰囲気は悪くなかったのですが、中盤のダラダラ感と見所の無さ、そして妙なオチにはがっかり。

※以下ネタバレ有り※

まず、私はアメリカ映画とは思えないテンポの悪さと主人公の暗くグダグダした感じが受け入れにくかったんですよね。舞台はパリだし、ほんとにフランス映画かと思いましたよ。とはいえ、主人公役の女優さんはなかなか魅力的だし、フランスの大学生生活というのも物珍しかったので、最初はまぁガマンできたんですよね。来たるべき惨劇への期待もあり。

しかし、ようやくホラーっぽくなってきたと思ったら、それは一瞬で、しかもそのシーンはお粗末。そして、後はグダグダダラダラした暗い画面が延々と続いて、緊迫すべきシーンもさほど緊迫感もなく、もちろん怖さもなく、ほんと何だかなぁって感じの映画でした。

そもそも、問題の怪物ってのがえらくあっさり姿を現す上に別に怖くないんだよね。お姉さんの死に方もあっさり過ぎだし。そのくせ、その後は延々と暗闇を動転して駆け回るヴィクトリアの映像があるばかりで怪物君は片鱗も見せないし。

とか思ってたら、これがひっかけで、実は怪物はニセモノでお姉さんも死んでなかったんだよーんという大どんでん返しがあるんですな、これが。つまり、全てはお姉さんとその友人たちの仕組んだことで、ヴィクトリアの性格改善のためのショック療法のつもりでやったんだと。映画の冒頭で完全に無関係な女性が襲われるシーンがあるため、怪物かそれに類する存在は事実だと思っちゃってたので、不覚にも私もこのくだらないイタズラに騙されましたよ。

しかし、そうなるとあのシーンは何だったのだ?実はあれは…という説明とか全くなかったぞ。観客をひっかけるために入れたってことはないよねぇ?そんなの反則にもほどがある。実は怪物はほんとにいるかもよってオチにするには、そのどんでん返し後は完全にサイコ系になってるしなぁ。

このサイコ系にしても、元々精神不安定だったヴィクトリアが悪質なイタズラによってパニック状態になり、仕掛け人の一人を殺してしまい、さんざん彼女をバカにしたあげく、それに気付いて激昂して彼女を責める姉にブチッと切れて、彼女をぶち殺してしまって、その後勢いに乗って他のメンバーをガンガン殺していくところだけは面白かったけど、飛び道具があるわけでもないし、メンバーの大半は男なんだし、そんな易々と皆殺しにされてんじゃねぇよという気はする。それとヴィクトリアが自己中心的過ぎて、ちょっと感情移入しづらいんだよね。

あと、お姉さんのキャラ設定もよくわからない。いい人なんだか嫌な人なんだか。仕掛けをばらした後、「 あんた異常に怯えてたわねぇー 」とか言ってヴィクトリアを嘲笑するのだが、巨大な地下墓地で道に迷ってるところに突然出てきた得体の知れない存在に姉が殺された妹の適正な怯え方ってどんなだ?ヴィクトリアの感情表現は事情を考慮すれば、むしろ控えめだった気がするがな。

まぁ、きちんと描かれてないけど姉妹の関係性に問題があったんだろうなぁという気はしますけどね。出来が良くて自分勝手な姉に内気な妹。姉は心から妹を心配してはいるけど同時にバカにしてもいて、妹はそんな姉を憧れながら憎んでいる。妹の精神不安定の理由もそういうとことにあるのかもしれない、と。まぁ、ベタですけどね。しかし、ルックスだけで言えば妹の方が断然上なんだがな。

そんなこんなで、ホラーとしてもスリラー・サスペンスとしても中途半端で、実につまらない作品でした。久々の途中早送り鑑賞物件でしたよ(T_T)

蛇足ながら付け加えると、『 SAW 』 シリーズのプロデューサーの作品なんだそうですよ。あと、主題歌がX-JAPANYOSHIKIなんだって。それで、BGMが妙にうるさく入っていたのか。まぁ、これは好みの問題なので別に否定も肯定もしないけど。

それと、「 サイコ・ハラスメントスリラー 」 ってジャンル分けは初めて聞きましたけど意味不明ですね。いったい誰に対してのハラスメントなんでしょうか? 面白くない作品を見せることで観客に嫌がらせしてもしょうがないだろうし、スリラーってのは大体登場人物が精神的苦痛を味わうのが前提のジャンルだからな。