『玄冶店の女』 宇江佐 真理


玄冶店の女

◆ 玄冶店の女 宇江佐 真理  (幻冬舎文庫) ¥600


評価…★★★☆☆

<作品紹介>
日本橋の玄冶店と呼ばれる路地で小間物屋を営むお玉は元花魁。身請けされた旦那と縁が切れた矢先、芸妓屋の顔見知りの娘が通う手習い所の師範・青木陽蔵に出会う。その清廉な人柄に、お玉は強く惹かれるが、それは世間が許さぬ分を越えた恋だった…。
運命に翻弄されながらも健気に生きる女たちの切なくて心温まる八つの物語。傑作人情譚。
 (文庫裏表紙紹介文)

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登場人物のほとんどが自ら生計を立てる女性で、しかも、現在妾という立場かそれを経験したことがあるというちょっと珍しい設定の作品集。
宇江佐さんらしい良い作品集だと思います。みんないい人で頑張ってるんだけど、思うようにいかないことが色々あって、いいことがあれば悪いこともあるし、女としての意地を張れば幸せが逃げていく…みたいな切ないお話ばかりです。





宇江佐作品の売りはやっぱり、この女性的視点と切なさ( それは恋愛の切なさだったり、人間として生きていく上での切なさだったり色々だけど )なんでしょうね。実は、私はそれが好きでもあり苦手でもあって、作品によってはちょっと耐えられない気持ちになることもあります。しょっちゅう言ってるような気がするけど、恋愛モノが苦手でウェットなのが苦手なもので…。
本書も、玄人あがりとはいえ地女の恋愛モノかぁ…とちょっと警戒しながら読んだのですが、先に述べたように登場する女性がみなワケありな設定だったのでウェットになり過ぎず、なかなか良かったです。
何と言ってもお喜代姐さんが効いてます。私は辰巳芸者が好きで^^

お玉と青木の恋模様だけはちょっともう勘弁してくれよって感じなんですが、宇江佐さんの場合はこういうの多いからなぁ…。
あ、でも、今書いてて気付いたけど、女性作家の時代小説の恋愛描写って大抵は受け付けない感じがするかも。『 御宿かわせみ 』なんて、あれを読むのが嫌な余り途中でやめたくらいだもん。私の問題なのか、時代小説の問題なのか?
……私、かなぁ、やっぱり。 男性作家の描写は受け入れられるってところに自ずと問題が明らかになっている気がする。うむむ。何か最近、読書記録を書いては自らの病巣を炙り出している気が…(-"-;)

それはそうと、お花には全く共感できないんだけど、あんな結末にしないでもいいんじゃないかと思いました(T_T) あの点だけは宇江佐さんぽくない。