『 むかし女がいた 』 大庭 みな子

◆ むかし女がいた  大庭 みな子 (新潮文庫) ¥380 評価…★★★☆☆ <作品紹介> 「 この世の全てのありようは、むかし生まれて逝った人たちの織る模様 」 戦争が終わり、敵国の花嫁となった女がいた。義弟を誘惑し、愛人にした女がいた。男の機嫌をとる女、男に嘘をつく女。子を産む女、産まない女。生涯において“女性性”を見つめ続けた著者が、女の根源的な残酷さ、愚かさ、そして愛おしさを、時空を超える寓話的な筆致で描いた、二十八編の物語と詩のタペストリー。 (文庫裏表紙紹介文)
大庭みな子って懐かしいなぁと思って手に取り、最近では珍しく安価だったのでハズレでもいいやと、とりあえず購入しました^^; で、思いの外よかったんですけれども、私はこういう女オンナした作品は、ほんとはちょっと苦手です。紹介文にあるような 「 寓話的 」な感じではないですね。文体は確かにちょっと独特のリズムみたいなものがあるんですけど、内容がねぇ。 「 むかし、女がいた 」という題名と書き出しは、言うまでもなく伊勢物語を踏まえているのだろうから、有名なプレイボーイ在原業平の話を書いたそれを踏まえるからには、色恋がらみの話多目で物語チックなのかなと思ったら、全然リアルな現代女性の話なんですね、これが。自伝ぽい雰囲気の作品もかなり多いし。 しかし、面白い作品集ではあります。戦時中に女学生だった年齢の人が書いたとは思えないほど現代的なものもあり、その時代を経験した人にしか書けないであろうものもあり、しかし、いずれも瑞々しい感性に満ちていて、詩のような文章なのに妙にリアル。特に、配偶者とか結婚に関わる話では、はっとさせられるところも多いです。 しかし、解説で筆者自身は配偶者と物凄くうまくいっていたという話があるので、これらの魅力は大いに減じられますねぇ(T_T) 別に不幸であって欲しいとは思わないけど、こんなことを書いておきながら、「 小説家の妻 」という物凄く特殊な存在を受け入れるのみならず、積極的にサポートする夫がいたって言われると何だか裏切られた気がします(-"-;) まぁ、そんな素晴らしい夫がいてもなお、こういうことを書かずにはいられない心のあり方という着眼点もありますけどね。とゆーか、私の心が歪んでいるのでそういう風に思うだけなのかもしれませんけどね(T_T) そんな感じの作品集なので、男性は余りぴんとこないかなぁと思います。既婚女性にはダイレクトにくるものがあるし、未婚女性にも、それぞれ心に届くものはあると思います。年齢や体験によって、その到達度はかなり違ってくるとは思いますが。