『 悪魔のリズム 』 ( 2007・英/西 )

悪魔のリズム [DVD]

◆ 悪魔のリズム  ( 2007年・イギリス/スペイン )

 監督:ヴィチェンテ・ペニャロッチャ

 出演:ルパート・エヴァンス、ナタリア・ヴェルベケ、デレク・ジャコビ

 評価…★★☆☆☆

<あらすじ>

嵐の翌日の浜辺に倒れている1人の青年。彼は意識を取り戻した後も自分が誰で、何故ここにいるのかも全くわからなかった。

目的もなく街をさまよううちに出会ったひとりの美しい女性は、呆然としている彼に親切にしてくれ、自分の家に住まわせてくれる。自分の名前さえわからない青年だが、彼の脳裏にはいくつかの光景が蘇っていた。実際の夢の中にも現れ、白昼夢のようにしきりにフラッシュバックするその光景は、どことも知れない薄暗い密室で拷問を受けている自分の姿だ。彼を責めて苛んでいるのは軍人風の女性だ。彼女は誰で、自分は一体何者なのか? あんな仕打ちを受けるようなことをした人間なのか?

自分が誰なのかわからない不安と、それに関わるらしい苦痛に満ちた光景の記憶に悩まされながらも、やがて、彼は自分を助けてくれた女性と恋に落ち、ささやかな心の安定が得られるかに見えた。

しかし、その現実と忌まわしい記憶が交差し始め、彼の精神はどんどん追い詰められていく。そして、記憶を取り戻した彼が見た自分の真実の姿は……。


これ看板に偽りありだろう(-"-;)

何か変に幻想的なだけで、残酷シーンがあるでなし、戦争とかテロに関わる暗い部分( って、そんなものに明るい部分なんかないのだが )を明確に描いているわけでもなし。全くこれだから欧州映画は…( 偏見 )。

何故これがR15なのか全く理解できない。これをこどもに見せて、そうプラスになるとも思えないけど、害になるとも思えないし、とりあえず戦争だの拷問だのには否定的なんだし、別にいいんじゃないのか?

私みたいなスレたオトナにはわからない何かを年少者なら感じ取るかもしれんしな。あ、別に年少者にも年長者にも全く推奨はしないんですけど。

こういう素材を敢えて採り上げるからにはもっと突っ込んだ内容にして欲しいと思う。こんな中途半端な内容なら、むしろ悪趣味なくらいに残虐にするとか、いっそ滑稽にするとかした方がいいんじゃないかと思うよ。

ちなみに、本来は戦争やテロ系は嫌いな私が本作を借りたのはグアンタナモ収容所の真実と拷問シーンに興味があったためです。あの戦争における米軍のやりくちを書いた本を読んでたので、以前から興味があったんですね。女性兵士が拷問者側ってのも当時報道された事件を想起させるし。しかし、どっちも全然ダメでしたね。で、「 最後に明らかになる驚きの真実 」 はベタベタで全然驚きません。ってか、それしかないだろうと冒頭から思ってたよ。

まあ、考えてみると、当事者国 ( =アメリカ )の製作じゃないって時点で色々ダメな気もするよね。 当事者国の製作であれば、告発しようとすれば結構踏み込めるだろうし、隠蔽しようとしているところがあればそれも感じ取れる気がするし、出来がどうであれ、何らかの価値が感じられる気がするもんな。いや、こっちの気分の問題だけかもしれないけどf^_^;)

あと、私は戦争における拷問とか虐待とか各種陵辱行為を激しく憎み非難する者ではありますが、そういうことが発生してしまうのはしょうがないことなんじゃないかという思いもあるんですね。だって、戦争という行為自体が異常でしょう? その中で正常でいることはひどく困難だと思うし、また、こういうことを言う語弊があるかとは思うけど、そういう場に好き好んで行く人々( 特に職業軍人 ) というのは元々ちょっと正常じゃない部分があるのではないかと思うんですね。ですので、その行為自体を単純に非難するのではなく、そういうことをするに至った背景であるとか精神状態であるとか、その辺に力点を置いて描いて欲しいなと思うのであります。そうすることによって、その原因となる行いとか思想自体を何とかするという方向につながらないものかなとか。まぁ、本作の主題はそんなところにないんだろうけど。

( 09年8月鑑賞分 )