『 姫百合たちの放課後 』 森 奈津子

 

◆ 姫百合たちの放課後  森 奈津子 (ハヤカワ文庫 JA ) ¥735    

 

 評価…★★★☆☆  

 

 <作品紹介> 「ああ、静香お姉様!気高く清らかな白百合!わたくしがあなたを守ってさしあげます!」―サディストの魔手が迫る美しき先輩・静香の純潔を守るため、一計を案じた女子高生・純子の奮闘を描く表題作、オリンピック正式種目となった“自慰道”に懸ける青春「花と指」、地球外生命の侵攻から人類を救うレズビアニズムの奇跡「2001年宇宙の足袋」など、可笑しくも甘酸っぱい全9篇を収録する“百合コメディ”作品集。 ( 文庫裏表紙紹介文 )

 

 


※※※作品の特性上、以下の文章には性的な描写や発言が多く含まれます。そういった内容が苦手な方はご遠慮下さい。※※※

 

※以下ネタバレ有り※

 

 

 

噂だけはかねがね聞いていたこの作品集、読んでみると意外と普通 ( モリナツ作品比^^; )でしたね。期待感が強過ぎたせいかしら。

『 フリーネ 』 や 『 アニース 』 といった専門誌に掲載された作品の方が一般誌に掲載された作品よりおとなしいのが意外なような納得できるような。女性は男性ほど即物的ではないですからね。男性同性愛者向けの雑誌とか読むと余りのストレートさに思わず笑っちゃいますもの。ストレートの人向けの成人雑誌と違って商業的な要素が極めて少ない ( 雑誌自体の商売っけという意味ではなく、各種サービス業や商品の広告だの芸能がらみだのという要素ね ) だけに非常にわかりやすいんですよね。読者参加部分も多いし。女性向けの専門誌がどうも根付かないのは数の問題ではなく、そういう欲望の質の違いによるところが大きいのかなと思いますね。…と、門外漢が語るのもなんですが。

 

えーと、本題に戻りましょうね^^; 本書収録の作品はいずれも笑いの要素が大きいですね。官能描写も多めで結構露骨な描写もあるのですが、全体の雰囲気がコミカルなので余り劣情はそそらないように思います。まぁ、好みは人それぞれですけどね。私はそういう目的で読んでるわけではないので別に劣情をそそらなくても構わないのですが、官能系だとついそういう基準で評価をしてしまうクセがありましてね^^;  ちなみに一応、私基準ではなく一般的な目線で評価しているつもりです^^;

 

本書の中で一番エロティックなのは 『 放課後の生活指導 』 かな。これはモリナツさんには珍しく笑いの要素は全然ない上にリリカルな部分もないんですね。そういう意味でも正しい官能小説と言えるかも。

女子中学生が担任の女性教師 ( 24歳・生娘 )に教育を施すというお話で、経験豊富な女子中学生とその友達以上恋人未満の同級生( いずれも美少女 )が放課後の生活指導室で、清楚で奥手の美人教師をムリヤリ…という背徳的で魅力的な設定も大変によろしいのですが、登場人物それぞれの性格とかバックボーンがきちんと描かれていて、ストーリー展開も自然な上に、同性愛に対する向き合い方のようなものが語られているところが実に素晴らしいです。専門誌に掲載されていただけあって単なるポルノグラフィではないという感じです。あ、でも、官能小説としても全然いけると思いますけど^^; これなら、ストレートの男性でも使えるんじゃないかなぁ。

 

表題作でもある姫百合シリーズは面白いのですが、主人公の純子の余りの自己中ぶりと彼女にひどい目に遭わせられながらも結局彼女の言うなりになってしまうレイ ( 大変わかりやすいタチタイプ^^; )が、私はちょっと受け入れられなくて、いまいちな感じがしてしまいます。モリナツ作品の登場人物は物凄い自己中で、とんでもない行動をとる人であることが多いのに何故純子だけダメなのかというと、多分彼女は規模が小さいからでしょうね。リアルに嫌な感じがする。 『 たったひとつの冴えたやり方 』 や 『 西城秀樹のおかげです  』 の登場人物たちみたいに突き抜けてれば、むしろ喝采するのですが^^; 

 

『 2001年宇宙の足袋 』 は題名からもおわかりの通り( 笑 )、モリナツさんではおなじみの百合エロお笑いSFです。 ある日、地球を侵略しに現れた地球外生命体は地球人に敬意を表明しろと命じる。その敬意の表明方法は、何と彼らの目の前で同性との性行為に及ぶことだという。そして、たまたま彼らにその実行者として選ばれた優香は、相手や場所、条件など好きなように指定して良いという話を聞いて願ってもないチャンスに狂喜する。彼女はカミングアウトしてない同性愛者だったのだ。

……とくれば、後の展開は大体おわかりですよね^^; 

憧れの上司を指定し思う存分プレイした優香の敬意の表明ぶりに侵略者たちは大いに喜び、更なる敬意の表明を求める。そこで、優香は今度は彼女のテクニックの虜になった上司と共に、美人だけど意地悪な先輩をサディスティックに責めることにする。彼女たちのプレイに感銘を受けた侵略者は地球の侵略をとりやめて、この件に関する全てのデータと記憶を消して去っていく。ただし、地球を救った3人の女性だけはその対象外で、彼女たちはその後も幸せに暮らしたらしい。 …というベタで素敵なバカSFです^^;

やっぱりモリナツさんはSF風味がある方が私はすきだな。本書収録作はこれ以外はほとんどSF要素がないので残念です。

 

 

( 10月読了分 )