『 キング・オブ・バイオレンス 』 ( 2003・米 )

◆ キング・オブ・バイオレンス ( 2003年・アメリカ )

 監督:スチュワート・ゴードン

 出演:クリス・マッケーナ、カリ・ウーラー、ジョージ・ウェント、ダニエル・ボールドウィン

 

 評価…★★★☆☆

<あらすじ>

定職に就かず雇われ仕事を転々とする青年・ショーンは、ある日ペンキ塗りの仕事現場で出会った電気工の男・デュークから、そんな仕事で満足しているのかと問われ、実は私立探偵みたいな仕事に憧れていると答える。唐突な質問だが世間話のようなものだと思っていたショーンに、デュークは妙に積極的で、それなら仕事があったら紹介すると言い彼の連絡先を聞き出す。

そして、驚いたことにすぐにデュークから仕事の依頼の電話がある。仕事は建設会社の社長の依頼で、ある男を尾行して、その行動の逐一を報告するというものだった。仕事の意図はわからないが、秘密めいた話にショーンは興奮を覚え、自転車とポラロイドカメラというお粗末な装備で、見よう見まねの尾行に励む。どうにか報告を終えたその夜、ショーンの前に依頼主の社長が現れる。一応は紳士的な雰囲気だった彼が、ボトルから酒を飲み酔って、暴力的な行為をした話をするのを落ち着かない気持ちで見守っていたショーンだったが、話は更にとんでもない方向へと向かう。尾行していた男を報酬と引き換えに殺害しろというのだ。社長の巧みな話術に乗せられたショーンは気付けば金と条件の交渉をし、その異様な興奮のまま殺害を引き受けてしまう。

混乱しながらも殺害は意外にも上手くいき、ショーンは約束の報酬をもらおうとデュークに連絡するが反応は予想外のものだった。侮辱するようなセリフを浴びせられた上に絶息寸前まで首を絞められ、死にたくなければ今すぐ町を出て行けと脅されたのだ。しかし、ショーンも負けてはいなかった。彼は社長があの男を殺したいと思っていた秘密が書かれた資料を手に入れていたのだ。それを条件に取引を有利に運ぼうとするショーンに社長はこう言い放つ。「死ななくても人間として機能しないようにすればい」。そして、ショーンは監禁され、激しい暴力と虐待を受け続けることになる。心身共に衰弱し廃人となったかと思われたショーンだったが、ある日、機会と援助に恵まれて脱出に成功する。そして、今度は彼の報復が始まる。


※以下ネタバレ有り※

何なんだろう、この映画。面白いことは確かに面白いんですよ。緊迫感に満ちているし、セリフもなかなか面白いし、プロットも面白いと思う。おそらく最も売りなんであろう暴力シーンも見応え充分だし、特に求めてはなかったけど一応セクシーなシーンもありますし。でも、何を描こうとしているのかが私にはわからないんですね。暴力の怖さとかいうのはちょっと違う気がする。

うーん、多分、私はショーンが物凄く安易に殺人を請け負った(それも1万3千ドルぽっちで!)のが、どうにも納得できなくて、その説明が為されないままなのが気になって、すっきりできないんでしょうねぇ。過度の暴力が人を変容させてしまうということと共に、ごく普通のどちらかといえば好青年という感じの若者が、さしたる理由もきっかけもなく小金と引き換えに人を殺してしまうという不可解さ不気味さというような現代社会の怖さを描いてると思えばいいのかなぁ。でも、私にはショーンくんは結構最初から不気味な人間に見えなくもないんだよね。無気力なようで鬱屈を秘めていて、一人前の大人のようなのに中身は意外なほど子供で、でも妙な知識や歳相応の欲望はあったりして、でも、見た目はあくまでさわやか。今どきの理解不能な若者って感じ。殺そうとしている男に気を遣っちゃうところなども、そのくらい現実を正しく認識していないということで滑稽なんだかコワいんだか。あと、正しく認識してるのに、そういうことをするんだったら精神的に正常ではないですよね。

うーん、混乱したまま以下に感想を並べていきましょう。

とにかくこの映画の中で何が嫌って、ショーンが自分が殺した男の妻とできちゃうこと!しかも殺しちゃう。探偵のつもりで男をつけたりしてる時から、その美人の奥さんに惹かれてる風ではあったんだけど、ええー、そう来る~?って感じでしたね(-"-;) 奥さんがいい人なんだ、また。ホームレスの支援運動かなんかをしてる人なんですね。それで、ショーンはそれを前に調べて知ってたから、行き場のなくなった自分を保護してもらおうとするのです。で、どんどん親切につけこんでいく。でも、些細なことから真実が発覚して、奥さんがショーンに襲い掛かってくる。この悲嘆にくれたりしないで、暴力に訴えるとこが奥さんかっこいいなぁと思いましたが、その結果、反撃に遭い命を落としてしまうのですね(T_T) 

そして、ショーンは 「 せっかく何もかもうまくいってたのに 」みたいなことをほざくのです。狂ってる。そう言ってしまう気持ちはわからないではないけど、やはり狂ってる。愛する夫を殺した相手を助けてしまって、同居している上に、娘も自分もその男を愛し始めていたということに気付いた奥さんの気持ちを考えてみろよ。

男を殺した後に奥さんに対しての罪悪感みたいなのを感じたりしてるようなのに、平気でそんなことをしてしまえるようになったくらい狂ってしまったという表現なのかもしれないけど、ひどいよ。

その後の復讐シーンはまぁ普通ですね。そこまでやる?ってか、できる?とか色々あるけど、まぁ、グロシーンの度合いも含めて悪くはない。友人( いい人だ )の助けを借りる感じになるのが話としては微妙だけど。こういう心が病んだような人は独りで頑張ってほしいよね。

で、見終わってやっと気付いたんですけど、この監督って、 私をスプラッタホラー好きにした理由のひとつともいえるかの名作『 死霊のしたたり 』 の監督なんですねぇ(@_@;) 全然共通点が見出せなかったわ(*_*)

まぁ、そんなこと言ったら、私の偏愛するスプラッタゾンビホラー 『 ブレインデッド 』 の監督であるピーター・ジャクソンの作品群についてはどうなんだって話になりますけどね^^; でも、彼の場合は、全然カラーは違うけど、 『 乙女の祈り 』 も 『 さまよう魂たち 』 も好きですね。 『 バッド・テイスト 』 は好きとは言い切れないけど^^; あと、ロードなんちゃらとキングなんちゃらは見てないけど^^;