『 噛みつき合う犬たち 』 ( 2006・香 )

◆ ドッグ・バイト・ドッグ ( 2006年・香港 )

 監督:ソイ・チェン/出演:エディソン・チャンサム・リー、ペイ・ペイ、ラム・シュー 他

 評価…★★☆☆☆

     

<あらすじ>

香港の高級レストランで殺人事件が発生した。犯人と思われる若い男は犯行直前に短時間で大量の食べ物を詰め込み、衆人環視の中で堂々と標的の女性を射殺し、白昼の街へ悠々と出て行った。冷酷で冷静な犯行ぶりに事件はプロの殺し屋の仕業だろうと思われるが、現場に駆けつけた刑事ワイは不審な若い男に気付き、相棒のリンと共に追い詰めるが、外国人らしい男はまだ少年の面影を残しているが狂犬そのもので、即座に人質を取りすぐに殺害し、説得しようと近づいたリンをも容赦なく殺害する。駆けつけた警官隊の助力で何とか逮捕に成功するが、男は護送中の隙をついて逃げ出す。

捜査の過程で、男はどうやらカンボジア人の孤児で、地下組織の手により殺人者として育てられてきたらしいことが明らかになる。相棒を殺された上に、裏をかかれた怒りに燃えるワイは違法捜査を繰り返しながら男を追い詰めていく。

一方、その男・パンは逃げ込んだゴミ埋め立て地にある民家で、ある少女に出会う。その場にいた中年男を昏倒させ、少女も同様に始末するつもりだったパンは、先ほど彼女にのしかかっていた男が彼女の父親だったことに気付き、彼女を手にかけるのをためらう。そして、そんな目に遭いながらも幼児のように無垢な彼女を見るにつけ、彼女を救いたいという気持ちが高まってくる。ほとんど会話もしないふたりだが、お互いの気持ちは通い合い、共に新天地へと逃げ出そうとするが、そこにもワイの追跡の手が及んでくる。実は、執拗で異常とも言えるワイの行動の裏にも、また肉親との確執があったのだ。そして、二匹の狂犬があいまみえる時、物語はカタストロフィへと突き進んで行く。


※以下ネタバレ有り※

途中までは凄くよかったんですよね。テンポも雰囲気も。ご都合主義的なところはあるし、色々難がないではないけど、それを上回るパワーみたいなものがあって。でも、途中でワイがただのファザコンのガキじゃんみたいな感じになってからは、もうグダグダ。ワイの壊れぶりも不愉快な感じ ( 少女に暴力ふるったり、人質にしたり )だしね。

元々さほど物語性がある作品ではないと思うのですが後半の展開はひど過ぎるでしょう。何よりも無駄な人死にが多過ぎる。最初から出てたワイの同僚や上司ほぼ全員死んでますからね。まぁ、父親は自殺だけど、その他のちょい役の人もバンバン死んでるし。いくら何でもあっさり殺し過ぎだよ。スプラッタホラーじゃないんだから。

カンボジアの地下組織とか、香港の殺し屋組織とか、下層階級における肉親による性的虐待とか、そういうアジアの闇みたいなところにもっと焦点を当てて描いてくれるのかと思ってたのに、その辺は道具立てに過ぎず、単に暴力を描きたかったのかなぁという感じの作品になってしまっていて、前半が良かっただけに何とも残念でした。

そうそう、最後の方はおかしなところがたくさんあるのですが、特にラストの、絶命した ( のかどうかはっきりわからないと思うんだが )愛する少女の腹を迷わずかっさばいて赤子を取り出すシーンは私には理解できませんでしたね。医学的にどうとかいうのでなく、パンが愛していたのは彼女自身であって、子供は行為の結果に過ぎないのではないのかしら?と思うわけです。更に言えば、パンは貧しい孤児だったが故に悲惨な子ども時代を過ごし、その後もろくな人生を送っていないないのに、母である少女が死に、自分も死にかけているという時に、子どもをこの世に送り出そうとするでしょうか? ささやかな愛を知ったとは言え、そのためだけに今まで苦労してきた甲斐があった、だからお前も何があっても生きろと子供にいえるほどのものではなかったと思うし、それまでに人生の悲惨さは苦労という言葉で表せるレベルじゃないと思うのだが。しかも、その時点でもそうやって殺し殺されるような生活を結局してるわけだしね。

しかし、主要俳優はみんな魅力的ですね。特にパン役のエディソン・チャンの無国籍な風貌が実にいい。少女役のペイ・ペイはちょっと肉が付き過ぎな気がするけど、ベタベタな感じのするイノセントな役柄に意外に合ってて良かったですね。自ら刃に身をかざすヒロインって、日本ではジャンル問わずたくさんある気がするけど、とりあえず 『 ろくでなしブルース 』しか思い出せなかった自分がちょっと嫌 ( ちなみに別にその作品に思い入れはないし、その行為を為したヒロインは凄く嫌いなんですけどね^^; )

ワイは個性的な風貌ですが、何か日本人ぽいというか、何かの映画やまんがで見たような既視感を感じます。

ちなみに原題は 『 狗咬狗 』で、邦題は原題の直訳って感じの英語題名をそのまま使っているようです。 この記事の題名は適当に意訳してみました m(_ _)m 直訳 ( 『 犬は犬を噛む 』 かな? ) も捨てがたいんですけどね^^;