『 死神の精度 』 伊坂 幸太郎

死神の精度 (文春文庫)

◆ 死神の精度 (文春文庫) 伊坂 幸太郎 ¥550

 

 評価…★★★★☆

 

<作品紹介> (1)CDショップに入りびたり (2)苗字が町や市の名前であり (3)受け答えが微妙にずれていて (4)素手で他人に触ろうとしない──そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。1週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌8日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う6つの人生。  (文庫裏表紙紹介文より)

 

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この紹介文はいいですね^^ 内容に即しているし興味を惹く。死神に 「 クール 」 はちょっとどうかと思うけど、まぁ、キャラクター説明としてわかりやすいからいいでしょう。 そんなわけなので、そのまま採用させて頂きました。大好きな伊坂作品なのに自分で紹介文を書かずに済ませられるとは思わなかった。読書記録が溜まってるので有り難いことです。

 

 

※以下ネタバレ有り※

 

 

映画公開される前に読まなきゃと思って、買ったままにしていた本書を急いで読んでたものの、結局なかなか感想が書けずにいました。好きな作家の作品ほど思い入れ過多になってしまって、ただでさえ冗長な私の文章がより長くなってしまうのですね(T_T)  

特に伊坂作品は、私の心のふだん使わないようにしているところを刺激するので、最近では読むこと自体をちょっとためらうようになってしまってます( 積ん読になってるのがまだ2冊ある…)。

しかし、本書はいい感じにドライで読みやすかったですね。主人公が人間じゃないから叙述に感情が入らないし、他の人間の感情も描写からこちらが推測するしかないから。それに、他の作品よりもミステリー色が強いのも良いです。もちろんミステリーとしては反則ですけどね^^; ( 同僚の死神が来てるということは、アイツはもうすぐ死ぬから犯人じゃないとか、同僚の死神が来てるということは、この死は自然死じゃないとかいう推理はないでしょう^^; )

個人的には、死神が最後まで人間臭くなったりしなかったところがとても良かったですね。最初の話でいきなり「 可 」を出さずに 「 見送り 」 にしたので、ちょっと警戒したのですが、これは単にミュージック ( 何故「 音楽 」 じゃないのかが気になって仕方が無いのですが、何故? ) が大好きだという死神の特性故の特殊事例だったみたいで、以降はさくさく仕事をこなしてくれて安心しました。

でも、萩原くんと古川朝美ちゃんの話なんかは、ひどいと思わせておいて、実はきっちり救いがある形になってるから、やはり伊坂幸太郎だなぁって感じではあります。

そして、主人公が同じ死神なんだから連作短編的になるのかなとは思ってたけど、やはり最終話でうまいこと環を閉じてくれます。この気の利いたベタな感じも伊坂幸太郎らしいな。

 

でも、死神の不具合が主に言語面にあるのはどうかなぁと思いますね。感情とか生活習慣ならまだしも、同音異義語を間違えるとか言葉自体を知らないってのはお粗末すぎませんか?今週は日本、来週はジャマイカ、再来週はハンガリー…みたいな勤務形態ではないみたいなんだから、もう少しマジメに学習させて( して )はいかがなもんだろうか?

 

しかし、伊坂氏の題名は相変わらず上手いですね。大抵は一目で興味を惹かれるし、奇妙に思える題名にもちゃんと読後にわかるような意味がある。私にとっては理想的な題名のつけ方です。

 

 

( 3月中旬読了分 )