『 ウィッカーマン 』 (2006・米)

ウィッカーマン [DVD]

 

◆ 

ウィッカーマン (2006年・アメリカ)

 

 監督:ニール・ラビュート

 出演:ニコラス・ケイジエレン・バースティン、ケイト・ビーハン 他

 

評価…★★★★☆

 

<あらすじ>

警察官であるメイラスは、ハイウェイパトロール中に母娘連れの事故に遭遇する。メイラスは危険も顧みず車中のふたりを助けようとしたが、車が爆発し吹き飛ばされてしまう。事故の責任が自分にもあるような気がする上に、目前のふたりを救えなかったことでショックを受けるメイラスは、しばらく休養をすることにする。

そんな彼に奇妙な手紙が届く。差出人は8年前に突然失踪した婚約者ウィローで、内容は 「 娘が行方不明になったのに、周りの人はその事実を認めず探してくれない。身勝手だとは思うが、あなたしか頼る人がいない。是非こちらに来て娘を探してほしい 」というものだった。

突然のことに困惑するメイラスだが、彼女が今住んでいる故郷だという聞いたこともない島について調べてみると、妙なことがわかる。その島は個人の所有で、外部からの立ち入りが禁じられているというのだ。そもそもメイラスはウィローがそんな島の出身だということも知らなかった。彼女の失踪の秘密が明らかになるのではという思いと、救えなかった少女を今度は救いたいという気持ちから、メイラスは申し出を受けることにする。

そして、辿り着いた島・サマーズアイルは予想以上に奇妙な島だった。電話もなく外部との接触は物資を運ぶ飛行機だけだ。女性ばかりが目立つこの島では、独特の宗教か何ががあり、教育もそれに基づいて行われているらしい。数少ない男たちはメイラスと言葉を交わそうとしないし、女性たちは翻弄するような言動をとるばかりだ。それは、ウイローでさえも例外ではなかった。「 島の人の言うことを信じないで 」と言う彼女自身の言葉も真実だとは思えないもの多く、確実に何かを隠している様子なのだ。そもそも、自分から去った理由もはっきりしない。しかし、彼女はまだ彼を愛している様子ではある。

悩み戸惑いながらも、独りで捜査を続けるメイラス。やがて、彼の前にこの島の秘密が明らかになってくる。果たして、娘は無事なのか?

 

 

 

 

 

全然期待せずに借りたのですが、意外にもちゃんと面白かったです! 

ストーリーはかなりわかりやすい感じですね。リメイクだからかな?

 

※以下ネタバレ有り※

 

 

まず、ウィローの娘はメイラスの娘なんだろうし、彼女が失踪したのもその妊娠のせいで、その理由は島の秘密に関わる何かなんだろうな…と手紙が来た時点で思いますね^^;

で、後半ぐらいからオチも見え見えになっちゃうんですが、こういう作りの映画で、このオチになるとは思わなかったので、ちょっと感心しました。

感情移入して見てた主人公が最後は惨殺( 生きたまま火あぶりにされる )かぁって。そこに至るまでもほとんどイジメですよ。

意外さの余り見ながら思わず喝采しちゃったけど、メイラスは基本的には善人なんだから、あの最期はかわいそうだよねぇ。ごめんね、メイラス。でも、ウィローが無邪気に喜ぶ自分の母と娘とは違う複雑な表情を浮かべていたから、せめてそれを以って冥してくれたまえ。

 

でも、なかなかよく出来た映画だと思いますよ。何しろ、いつも見てるこのテの映画と比べると俳優が豪華! ニコラス・ケイジはあんまり好きじゃないんですが、老若問わず女性がいいです。まぁ、ケイジ以外の主要人物は女性しかいないんですが^^;

ウィロー役のケイト・ビーハンは、危ない感じなのに妙な魅力がある女にぴったりだし、シスター・サマーズアイル役のエレン・バースティンは、あの年齢なのにほんとに美しくて存在感があって、島のカリスマ的な存在にふさわしい。そして、ちょい役に懐かしいリー・リー・ソビエスキーが! お、いい女だなとは思って見てたけど、『 グラスハウス 』 の時より顔が二回りくらい膨らんでいたのでクレジット見るまで誰かわかんなかったです(*_*) 

それと、シスター・ローズ役のモリー・パーカーが妙に良かったですね。ふだんは全然好みじゃないタイプだし、別に女教師萌えとかいう属性も持ってないんだけど、やたら良かったのよね。容姿も雰囲気も作品世界に凄く合ってるからかな?鮮やかな黒髪とソバカスの散る色白の薄い顔の対比、細身で華奢な感じなのに強気な振る舞いなんかがたまらない感じでした。あ、もしかすると黒髪巻き毛萌えかもしれない!黒い羽をあしらった祭りの衣装も、髪の色に合ってて良いなぁとか思ったし。うーむ、己の新しい属性を発見してしまった(*_*)

 

…と、どうしても私の話は変な方向に行きますが、映像もよかったし、閉鎖された島の独特の雰囲気とかもいい感じだったし、オーラスのオチもお約束にイヤな感じで良かったですよ ( ウィローがハント役は年齢的にちょっとムリがあると思うけど。でも、彼らは自分たちの生活様式は古いのに、生贄を捕まえるために、ちゃんと現代風のファッションや行動を研究しているのだなぁと感心^^; )。

 

 

ラジー賞に5部門ノミネートされたというこの作品、私はふつうに面白かったです ( ノミネートされてたのは、この感想を書くためにちょっと調べ物をするまで知らなかったんですけどね )。

現代的なリアリティとかを追及すると、サマーズアイルの存在自体がムリがあり過ぎるという話になるのかもしれないけど、アメリカなら国土は広いし、21世紀においても進化論や地動説を否定する人々が多数いるような国だから、あんな島があっても別に不思議ではないのでは? 私は、オリジナルが作られた当時(1970年代)よりも、今現在にああいう場所があり、ああいう人々が存在しているという方が不気味で良いと思いましたけどね。それに、あれと大して変わらないような不気味な人たちがたくさんいるじゃないですか、実際に、世界のあちこちに。

冒頭の母娘連れの事故も唐突で無意味なようだけど、私なんかは、若いお母さんと幼い娘が、車両登録されてない車で大荷物を持って先を急いでいるというところに感じるものがありましたけどね。娘の質の悪いイタズラも見ようによっては意味があるし。まぁ、そこまで行くと穿ち過ぎかもしれないけど、この件は 「 救えなかった少女 」 ということで作品に絡んできますし、必要なのは必要ですよね。

ああ、でも、管轄外の土地に平警官ひとりで乗り込んで、住民を恫喝して捜査しようとするメイラスはちょっとムリがあったな…。でも、それだけ一生懸命だというのと単純バカだというのを表しているから、あれはあれでいいのかな。

 

そんなわけで、B級映画だと思ってさらっと見ても面白いし、何かを考えようと思えば考えることもできるし、結構いい映画だと思いますよ。まぁ、私の目は曇っているか歪んでいるかしているかもしれませんがね。

 

 

題名の 『 WICKER MAN 』 は直訳すると、「 枝編み細工の男 」 って感じなんですが、ちょっと調べてみたら、この題名自体が実はある程度ネタバレなんですね。

実は「 Wicker Man 」 というのは、柳の枝で編んだ巨大な人型の檻で、これに生贄の人間を入れて燃やすんだそうです。確かにメイラスは最終的にそんなことになってました。ケルト人とかそっちの方の話になるらしいので、オリジナル(イギリス映画)では、これはもっとリアルな話だったのかもしれませんねぇ。そんなわけで今回もカタカナ題名そのままですが、これはやむ無しです。