『グルメのためのシネガイド』淀川 長治・渡辺 祥子・田中 英一


グルメのためのシネガイド.jpgグルメのためのシネガイド   淀川 長治・渡辺 祥子・田中 英一 ハヤカワ文庫NF) ¥630  評価…★★★★★ <内容紹介> 映画論をたたかわせたり、俳優の顔に見とれるばかりが映画を見る楽しみじゃない。たとえばジェイムズ・ボンドのお気に入りのカクテル。ヴィスコンティの贅を尽した宮廷料理。チャップリンはドタ靴をきれいに平らげ、『駅馬車』の酔いどれ医者は、酔いざましにコーヒー15杯を飲みほした …… おいしいものには目のない3人の映画評論家が、250本の映画に出てくる食べものにウンチクを傾けた、映画をおいしく楽しむためのエッセイ!    (文庫裏表紙紹介文)
最近映画ばっかり見てる(返しに行っては、また借りるという悪循環にはまっています…)ので、映画関係の本でも紹介しようかなと思って、蔵書の中から何とか黒くない映画関係の本を探し出してきました^^; 著者名からも古いということは推定できると思いますが、この文庫は初版が1986年なので収録された原稿は1970~80年代に書かれており、その中で更に古き良き時代を懐古しちゃったりもしてるので、内容の方は下手すると1940~50年代だったりもします。ですが、時代錯誤で笑っちゃうというようなこともなく、意外と今でも十分に共感できる内容ばかりです。 まず、大いに共感できるのが西部劇と豆料理の話。これは淀長さんと田中氏がそれぞれ書いておられるけど、やっぱりあの豆の扱いは日本人にはしっくりきませんよね。今は自分でも普通にビーンズサラダを作ったりチリビーンズを作ったりするけど、やっぱり何か違和感は拭えないもの。 それからベーコンと各種の卵料理。このふたつはいつでも変わらず美味しいし共感も持てるんだけど、やっぱり何というかスケールの違いを感じますよね。私がかつて見た中で一番衝撃的だったのはオーブンでベーコンを焼く映像でした。某映画の朝食準備風景かなんかだったと思うんですが、つまりオーブンで焼くほどに厚くて多量なわけですよ、ベーコンが!これは成人してから見ましたがカルチャーショックでしたね。 そして、卵料理は何を見ても、とにかくバターをふんだんに使って、卵の量自体ももたっぷり。女性でも平気でひとりで目玉焼き3コとか食べちゃうでしょ。ベーコン、卵、バターたっぷりの食卓って確かに幸せ感あるんだけど、現実的には不幸への階段のような気が…。 ちなみに私が卵料理で憧れたのは、「サニーサイドアップ」と「ターンオーバー」っていう用語とエッグスタンドで食べる半熟ゆで卵ですね。前者はアメリカで後者はイギリスってイメージが強いけど、どちらも別に食味に結びつく憧れではないところが我ながら面白いな。そんなに卵好きではないからかもしれないけど。 その他、アップルパイを代表とするアメリカの各種パイ、欧州の食堂車、ベーグルやビスケットにコーヒー、七面鳥、チャプスイ…といまや日本ではありふれていても憧れを掻き立てる食べ物の話や日本ではまだ市民権を得てない食べ物の話、更には日本の食事の話(邦画もいくつか紹介されているのです)などに加えて、古き良き時代の映画やそれにまつわる話が満載です。決して題名のように 「グルメのための」ものではなく、ふつうに食べることが好きで映画が好きな人のための懐古風味の軽い読み物です。 『シネガイド』 としては微妙かしら…。でも、巻末に食べ物索引と映画題名索引がちゃんとついてるところが素敵です^^  (初読1998年10月)