『 江戸群盗伝 』 半村 良 

江戸群盗伝 (集英社文庫)

◆ 江戸群盗伝 (集英社文庫) 半村 良 ¥600

 評価…★★★☆☆

<作品紹介>
天保の時代、江戸の町人たちは義理と人情を重んじていた。裏社会の闇に生きる盗賊たちも例外ではない。狙う相手は、不正に蓄財する大商人に、鼻持ちならない大名たち。様々な技を駆使し、人を殺めず華麗な「盗み」の職人芸を決めていく。白鳶の徳兵衛と幸手の惣右衛門という二人の大盗のもと、鉄の掟に生きる彼らの「粋」に命を張った生き様。盗賊たちの義理と人情を描く一味違う傑作時代小説。 ( 文庫裏表紙紹介文 )




私世代にはSF作家としてのイメージが強い半村氏ですが、実は時代小説も結構書いてるんですよね。多分文庫になった作品は全部フォローしてると思うのですが、まぁ、ごくごく正統派時代小説で、平均点ではあるけど突出したところがないのが難点という感じでした。
本書もその範疇から大きく外れはしないのですが、素材が盗賊という何とも魅力のある存在であるため、ちょっといい感じの仕上がりになってます。
帯に 「 闇の義理、人情、そしてエロス!? 」 ってあって、何でやねん! と思ったけど、まぁ、確かにそういう描写も多目です。それがテーマに関わるような話もあるくらいで。しかし、私なんかに言わせると別にそんなにそそるものではないんですねぇ。逆にうっとうしい感じがするくらいで。
まぁ、池波正太郎氏の闇世界がらみの話でも、そういうのが結構出てくるし、裏社会と色ってのは切り離せない存在ってことなんですかね。

盗賊としての云々で言えば、そんなに目新しいこともないけど面白いって感じですかね。愚鈍のふりをしてる 「 じべたの甚六 」 とかはなかなか面白かったけど、さほど発展しないままだし、その甚六や彼に関わる七之助なんかのつながりで好感を持っていた親分の賽銭吉右衛門はいいとこのないまま非業の最期を遂げるしねぇ。この最期はほんとひどい。敵討ちも結局ないし(T_T)

まぁ、半村氏の時代小説はこのあっさりしたところが持ち味とも言えるのだけど、オトナのお伽噺である池波氏作品とかを読み慣れてるとこれはちょっと物足りないんですよね。更に言えば、どうせなら持ち味を活かして、変なエロス描写とか無しで徹頭徹尾あっさりしてくれてる方がよかったように思います。


あ、そうそう。作品以外で評価するのも何なのですが、本書は清水義範氏の解説が実にいい味出してまして、これは読む価値があります。というか一篇おまけの作品がついてたって感じで非常にお得感がありました^^ 
最近は変な教育オヤジみたいになってた清水氏が久々に パステの清水 」 の二つ名を取り戻してくれたって感じです^^;
そのお家芸とも言える文体模写の良さもさることながら、そこで語られている半村氏と清水氏の古き良き師弟関係といった感じのお話がまたいいんですよね^^
漱石一門とまではいかないけど、昔の作家志望の若者って結構自分の尊敬する作家に弟子入りを申し込んだりしてたりしたんですよねぇ。今の作家さんとかではこんなの有り得ないんだろうなぁ。まぁ、確かに自分がその立場であったらそんなことをしたいとは思わないんですが、こういう師弟関係って憧れます^^;