『LOFT』 (2006年・日)

LOFT  (2006年・日本)

 監督:黒沢 清/出演:中谷 美紀、豊川 悦司、西島 秀俊、安達祐実

評価…★★☆☆☆

<あらすじ>

駆け出しの作家である礼子は次の作品がなかなか書けないでいた。担当編集者の木島からは強い口調で催促をされるが、筆は進まず、最近では体調にも異変を感じ始めていた。状況を変えるために引越しでも…と口にした礼子に、意外にも木島が物件を世話してくれる。

そこはとんでもない郊外の古ぼけた洋館だった。森と沼と草原しかなく他に民家もないが、隣接した場所に一棟廃墟のような建物がある。薄気味悪く思っていた礼子はある夜、その建物に出入りする男を目撃する。男はシートに包んだ大きなものを抱えていた。不審に思った礼子は、ちょうど電気工事に来てくれた業者にその建物のことを訊いてみると、そこは大学の研修施設で今は使われていないという。

編集者である友人にその大学について調べてもらったところ意外なことがわかる。その大学では1000年前のミイラを沼で発見して話題になっているというのだ。そして、その記事に担当教授として写真が載っていたのがあの夜の男だった。あの男が持っていたのはもしや…。

やがて、ひょんなことから礼子とその男・吉岡は言葉を交わすようになる。そして、ふたりの周りにそれぞれ奇妙なことが起こり始め…


邦画ホラーは余り好きではないのですが、とある人がとあるところで賞賛していたのを読んで、ちょっと見てみようかなぁと。元々興味はあったんですよね。

で、鑑賞後の結論としては、ホラーではないんですね、これ。ホラーっぽい筋立てでホラーっぽい材料を使っているけど、ホラーではない。かと言って、サスペンスというにはふざけ過ぎだし、何だろこれ。バカ映画にしてはマジメに作ってるしなぁ。私はこういうの嫌いではないですけど、邦画だと役者に目がいってしまうからいまいち面白く見られないんだよな。でも、これってどう考えても一般向けに作られてないよねぇ?この人の映画ってみんなこんなの?だとしたら何故売れてるの???あ、役者陣が豪華で、宣伝に金かけてるからか。(自己完結)

※以下ネタバレ有り※

中身について少々触れておきましょう。

最初はホラーを期待していたもので、テンポの悪さにちょっとイライラしちゃいましたね。ホラーでないと思えば奇妙な雰囲気を醸し出していて悪くはないんですが。

わざとらしいショッカー演出みたいのにもちょっとイラっとしましたね。ずーっとひそひそぼそぼそしゃべってるのに悲鳴だけ絶叫調だったり、やたら大音立ててみたり。ホラーじゃないんだと気付いてからは、あれは様式美的なものだったのねと思って納得はしましたけど。それにしては、ミイラや幽霊の扱いは何だかなーって感じでしたけどね。しかし、そこをちゃんと様式に則ると普通にホラーになっちゃうから仕方ないのか。

唐突に礼子と吉岡が激しい恋に燃え上がるのも、まぁ冗談なんだろうな。しかし、安達祐実より中谷美紀の方が確実にミイラも幽霊も似合うと思うのに、敢えて逆に配役した意図が知りたいわ。と言っても、礼子は中谷美紀が適役で安達祐実は有り得ないですけどね。要は、なぜ安達祐実か?なんです。これも冗談のひとつなのかな。

ちなみに私は、吉岡がミイラに執着するのは実はあれが彼の殺した女だからだと思ってたんですけど違ってて残念。殺した後に趣味と実益を兼ねて専門知識を生かしてミイラにしたんだと思ってたんだけど、そこまで病んではなかったのか。いや、でも、そうでないのにあれだけ執着して傍らにおいてる方がミイラフェチ度は上か。でも、沼に沈めたのはやっぱりミイラになればいいなーと思ってたんだろうな。

この映画で最も怖くて気持ち悪いのは、幽霊でもミイラでもなく西島秀俊演じる木島ですね。この人、最初の登場シーンから、礼子に対していやに高圧的でなれなれしくて、でも無表情でしゃべりも一本調子で、何コイツって感じだったんだけど、後で殺人と死体遺棄まで犯している性格異常者か何かだと判明して納得! 徐々に正体を現し出すんだけど、特に二度目に夜中に突然やってきて合鍵で勝手に入ってからのシーンのコイツはほんとに怖くて気持ち悪かったです(>_<)

しかし、殺した女を住まわせてたところに平気で今の標的を住ませる辺り、こいつ慣れてんじゃないかって感じがしますよね。それ以前にも何かしてんじゃないかとか。立場を利用して女をモノにするっていうだけじゃない何かがありそうだよなぁ。ナントカ賞受賞作家の礼子はともかく安達祐実(役名がわからないので実名ですみません…)は作家志望の学生なんだから家まで提供してやることないもんね。単に女飼うのが趣味なのかな?あんまり性欲ありそうな男じゃなかったし。それとも殺すのが最終目的?安達祐実も状況的には別に殺さなくてもよさそうだったもんね。

しかし、安達祐実中谷美紀ってタイプ違い過ぎないか?キレイな女なら何でもいいのか?あ、作家志望もしくは作家ってとこが重要なのかな?うーん、興味深いな、木島。それにしても、終始、無表情で棒読みだった西島くんは実に良かったです^^; 彼はああいう役ぴったりですね。

ラストも冗談ぽいんですよね。「やっぱり死体なんかないじゃない、あなたの妄想だったのよ」「そうかー、良かったー」とハッピーエンドになるかと思わせておいて、突然、逆側に沈んでた死体がガーっとあがってきて代わりに吉岡が沈んじゃう。まぁ、これもホラーのお約束のひとつで様式美でございますが^^;

しかし、あの間抜けな落ち方はないよなぁとか、落ちただけだから別に死にはしないんじゃね?とか、礼子もぼーっとしてんなよとか色々突っ込みたくなるけど、やっぱりわざとなんでしょうねぇ。

ん、今気付いたが、もしかしてマジメな人はあのラストを見て、「きゃー!」とか思うのかしら?(@_@;)  ひょっとして、私が今まで言ってきた冗談だろってことは全く思わず、ふつうに怖いホラー映画として見られてたりするのでしょうか?

まぁ、確かに殺人も死体も出るし、ミイラは動くし幽霊は出るしなぁ…。吉岡の妄想だか現実だかわかんない安達祐実殺しも怖いといえば怖いよね。木島くんはリアルに怖いし。

いや、でも、この映画はやっぱり冗談でしょ? マジメな映画の登場人物は深夜によく知らない隣人の家に行って、「吉岡です」 「礼子です」 「ミイラ預かってもらえませんか?」 「え、それはちょっと…」 「そんなに長い間じゃないですから」 (会話内容は要約で正確ではありません)なんて会話はしないですよ。私の感覚が歪んでるのか?…歪んでるか。ああ、また自己完結(-_-)