『花火屋の大将』 丸谷 才一

(2005年7月読了分。感想などは当時のもの)

花火屋の大将 丸谷 才一(文春文庫) ¥550

 評価…★★★★☆

<内容紹介>

随筆の名手の相も変らぬ名調子が楽しめる一冊。膨大な知識と思いがけない発想からくる様々な話題を軽い調子の名文で綴っています。旧かな使用が全く気にならない読みやすさはお見事。

今回のテーマもお得意の言葉関係や歴史こぼれ話や裏話系から野球や二日酔いといった身近な話題まで縦横無尽。

『コラム論からスパイ論へ』『カレームの藝術論』『朝日伝説』『蛙の研究』など全17篇を収録。


丸谷さんの本を久々に読みましたが、やっぱりいいですね。和田誠さんのイラストも最早切り離せない存在だなー。何だか安心します。

私は高校~大学時代、丸谷随筆及び評論に物凄くはまってたのですが、社会人になってからはその衒学的なところが鼻について遠ざかってしまっていたのです。

今回久々に読んで、その一篇あたりの情報量の膨大さに改めて感心すると共に、やはり「こりゃ心に余裕がないと読めんわ…」とも思ってしまいました。

社会人になってからの私は心にも時間にも余裕がなかったので、氏から遠ざかったのも無理もないことです。ちなみにその頃から猟奇犯罪もの鬼畜ものにハマり始めました。

ま、それはさておき。本書で思わず感嘆の声をあげたのは氏がモー娘のCDを聴いているということです。(『お倫ぴくぴく』より)

息子さんがおられるからとも思うけど、ご自分で購入されてた方がらしいし嬉しいなぁ。そして、つんく(当時は「♂」無し)のことを「才人だね、この人」と評されている!さすがだー。この柔軟さ。人間こうありたいですね。私も同意見なので実に嬉しかったです。

お得意分野の大正天皇の詩歌の話(『一枝の花』)、藩の借金のカタに絵を下賜するという名案を考案したのは誰かという話(『天童広重』)等もよかったな。自分の知識が増えてから読むとまた面白さが増しますね。

やはり浮世離れしてるなぁという感じもするけど、そこが良さでもあるよね。

ぜひ若人に読んで頂きたいものです。