『怖ろしい味』 勝見 洋一

◆ 怖ろしい味  勝見 洋一 (光文社文庫) ¥540  評価…★★★★☆ <作品紹介> 新橋に代々続く古美術商の家に生まれ、文革下の北京で美術品の鑑定に携わり、パリでは大学で教鞭をとり、ミシュラン調査員のアルバイト経験も持つという著者が、その血統と経験に裏打ちされた審美眼と舌を用いて、様々な味や物、そして人について語る。その文章は時に虚実の境すら越えていく。上品で淡白なようでいて滋味深く濃厚な随筆集。 表題作他『 桜鯛の花見 』、『 ムッシュー・バタール 』、『 毛沢東のスープ 』、『 執事の偏愛 』、『 嗚呼!熱海キネマ 』など全20篇を収録。
食べ物エッセイの類だと思って、軽い気持ちで読み始めたらこれがもう凄い濃厚。話題の対象が多岐にわたる上に深いんですよ。 お話の内容が高尚というか高級過ぎて、貧乏人で貧乏舌の私なんかは「 住む世界が違い過ぎる! 」と叫びたくならないでもないけど、不思議と厭味な感じはせず面白く読めます。紹介文でも書きましたが、随筆と銘打ってはいるけど虚構感があるものも多いせいかもしれませんね。完全なフィクションではない感じ。久世光彦氏の『 飲食男女 』と種村季弘氏の『 食物漫遊記 』の中間みたいな感じかなぁ。随筆として読んでも小説として読んでもいい感じの作品集です。 表題作は短い中に物凄く色んなことが詰め込まれた深いお話で感服しましたし、『 ムッシュー・バタール 』は無類のパン好きの私には実に楽しく美味しそうなお話でした。ああ、焼きたてのフランスパンよ!(>_<) 強いて難点をあげるとすれば、『 桜鯛の花見 』に登場する漁師さんの方言。私には不自然に感じられて気に障るんですが、あれは地元(と言っても場所は明確にはされてないけど)の人が読んだらアリなのかなぁ?私からするとあちこちの方言の寄せ集めのように感じられるんだけど。まぁ今思えば、作品集の性質からするとそれはそれでアリと言えばありなんですけど、冒頭の作品だったので随筆のリアリズムを要求してしまったので、読んでる時は凄く気障りでした。 ああ、でも、考えてみると、私、小説でも場所をある程度指定した上で、変な方言使われるの好きじゃないなぁ。これは田舎者のひがみなのかしら? あ、『 桜鯛の花見 』自体は良い作品です。魚喰いにはたまりません(>_<)