『よるねこ』 姫野カオルコ

(2005年6月読了分。感想などは当時のもの) ◆『よるねこ』 姫野カオルコ (集英社文庫) ¥560   評価…★★☆☆☆ <あらすじ> ※著者初のホラー短編集 表題作「よるねこ」…空想的なところがある娘が情緒的なところが欠落していると思っていた母が学生時代は正反対だったということをひょんなことから知る。それは母が学生時代に深夜巨大な青い猫を見たことと関係があるのか?それとも全ては気のせいと勘違いのなせるわざなのか?平凡な日常の中に潜む恐怖。 表題作他「女優」「探偵物語」「心霊術師」「X博士」「ほんとうの話」「通常潜伏期7日」「通りゃんせ」「獏」の全9編を収録。
-------------- 姫野カオルコさんは私の大好きな作家のひとりです。作家さんの書いてることを全て鵜呑みにするのは愚かな所業でしょうが、まぁそれこれから何となく同じ系統の魂を持つ方にような気がして心惹かれておりましたし、ちょっと壊れた感じの作品世界も好きでした。出会いは多分『H(アッシュ)』(徳間文庫)というポルノ小説集だったような気がする。その頃、雨後のタケノコのように出没していた女流なんとやら女子大生なんとやらの流れをくむようなふざけた著者名が気に入らず、書店で見ても手に取ることもなかった著者の本を何故この時購入したのかはもはや覚えていない。ただの助平根性からかもしれない。でも、その後他の作品を買い集めるようになったということはやはり何か訴えるものがあったのでしょう。今「ポルノ小説」と書きましたが、もちろん単純なエロ小説ではありません。ポルノの体を装った何かが書かれているのです。でも、個人的にはエロとしても充分使えると思います。 閑話休題。私の大好きな作家が私の好きなホラーを、という喜びによる期待感が大きすぎたのが読了後の感想は正直いまいち。著者があとがきで「とにかくひとつの意味というか答えというかを提供されないと気がすまないタイプの読み方をされる方がごくたまにおられます。」と書かれていて、えっ、私はこれか?とちょっと反省したりもした(実際ちょっとそういうところがある)のですが、やっぱりそういうことを考慮してもいまいちかなー、と。作品としてはどれも端正な感じ漂う良い出来ではないかなと思いますが、これはもう純粋に好みの問題でしょう。私は基本的に行き過ぎたようなホラーが好きな人なので。 と言いつつ実は、漱石や百 、綺堂の書くホラーというより恐怖・怪奇小説も好きなんですが、この領域には現代作家は到達できないのかなと思ってます。それは作家側の問題だけではなくて。今回がその例かなーとか思ったりもしてます。 ※何故か百鬼園先生の「ケン」を入れるとその後の文章が文字化けするので空白にしました(T_T)