『 無用の隠密 』 藤沢 周平
◆ 無用の隠密 藤沢 周平 ( 文春文庫 ) \720
評価…★★★★☆
<作品紹介>
人に恐れられる隠密という存在も、巨大な組織からすれば卑小な歯車に過ぎない―命令権者に忘れられた男の悲哀を描く表題作ほか、歴史短篇 「 上意討 」、 悪女もの 「 佐賀屋喜七 」 など、作家デビュー前に書かれた15篇を収録。文庫化に際し、藤沢の浮世絵への並々ならぬ関心を知ることが出来る 「 浮世絵師 」 を追加した。 ( 文庫裏表紙紹介文 )
藤沢周平の未刊行作品があるという話は聞いてたけど、こんなに数があって質も良いとは! 没後10年も経過して未読の新刊が読めるなんて!等の歓喜の余りちょっと採点甘めです^^;
といっても、その評価も藤沢作品として考えればのことで時代小説全般の評価としてはこれで十分かな。全盛期の藤沢作品と比較しても、ほとんど遜色ないと言って良い作品ばかりです。
掲載誌の関係かちょっと下司になりがちなところとその後の作品に似通ったものが多いとことがちょっとマイナスなんですが、後者はこれくらい時間が経ってからだとファンとしては逆に嬉しかったりもしますね。既読の作品を読み返して比較するという楽しみができるから^^; 私はそんなに熱心なファンではないので全然気付かずに初読のような気持ちで読んじゃった作品もありましたが、解説で対応する作品と収録本が示されていたので該当作品は全部読み返しました(^_^)v
読み返してみると、何で気付かなかったんだろうってくらい文章もそのままなものもあって、自分の記憶力の無さに愕然としましたが、やはり作品として違う点もありましたし、前回読んだ時からかなり月日が経っているので自分自身の受け止め方が違ってきているのもあって、色んな意味でなかなか面白かったです。
表題作は題名通り存在意義を無くしてしまって隠密についての話です。欧米のスパイや工作員と違って、江戸以前の日本の隠密や忍びというのは己の人生全てを任務に捧げていたのですね。いわゆる 「 草 」 と呼ばれるような忍びだと下手すると、いざという時が来ないまま仮の身分のまま敵地で一生を終えたりすることも珍しくなく、子孫を作って任務を引き継いだりすることもあると言われています。
で、隠密というのは普通そこそこの地位の武士であるとともに任務もそんなに余裕のある内容ではないので、そういう事態に陥ることはないはずなんですが、命令系統が特殊であり、その任務も秘匿されていたがために、命令者がいなくなると共にその存在はほんとになかったことになってしまったのですね。しかし、そのことを知るものは誰もいないのです。本人は自分が無用な存在になったということを知ることもなく、一途に任務を果たそうとするのですが……
( 09.10月読了分 )
ここから、現在です^^;
今までの中で一番書きかけという言葉がふさわしい記事なので、ちょっとフォローというか言い訳をさせていただきたく思い、参りましたm(_ _)m
本書はほんとにいい作品がいっぱい入ってて、しかもそれに絡んで語りたいことがいっぱいあるんですよ。
で、表題作について語ろうと思ったら、隠密とかについて語らないわけにいかないし、任務を律儀にこなしていたがために孤立し、人生の大半を無為に過ごしてしまったという話なので、世代的にどうしても小野田さんとか横井さんの話にも言及したくなったりして、ほんとに収拾つかなくてですね…。
他の作品についても、例えば浮世絵について語りたいわ、新旧対比したいわで、もう、どうにもうにも…(-"-;)
そんなわけで、気になりながらも結局半年ほど放置していたのです (T_T)
多分、この続きを書くことはないだろうと思うけど、こんな下書きが山ほどある自分を戒めるためにアップすることにしました(>_<)