『十八面の骰子』 森福 都

(2005年6月読了分。感想などは当時のもの) ◆『十八面の骰子』(光文社文庫) 森福 都 ¥660   評価…★★☆☆☆   <あらすじ> 舞台は中国・宋時代。実年齢は24歳なのに15歳にしか見えない一風かわった巡按御史(地方役人の不正を監察する秘密捜査官。隠し目付けみたいなものかな)が個性的な二人のお供を連れて各地で起こる事件を解決していく。(全5話収録) ------- 実はこの本、一度書店で手にとって買うのをやめていたのに、電車に乗るのに読む本がない時にキオスクで見つけてやむを得ず買ってしまったのです。これも運命ですよね。 で、読んでみたらこれが意外に面白かったんですよ。主人公・趙希舜とお供の傳伯淵にそれぞれ複雑な過去があったりなんかして。ミステリーとしてもよくできてるのですが、やはり中国時代小説としての面白さが勝ちますね。なので、その辺に全く興味がもてない人は逆に面白くないかも。あと、ふたりの複雑な過去について余り明らかにされていないのが不満が残るのですが、どうやら続編があるようなのでそちらに期待、というところでしょうか。 ちなみにこの本、惹句にも解説にも「中国版 水戸黄門」と書かれているのですが、これは逆にマイナスではないでしょうか?少なくとも私が最初に買うのをやめたのはそのせいです。そんな単純な話じゃないですから。まぁ、気楽に読めるのは確かですけどね。
森福氏の本を読むのは『吃逆』(講談社文庫)以来で2冊目です。これも斬新な設定(吃逆(=しゃっくり)をすると普通見えないものが見える主人公がその能力を利用して事件を解決していく…というような話だった多分)でなかなか面白かった。 そんなに読んでないけど何となく作者に好感を持っているのは、甚だ私的な理由ですが大学の先輩だからなんですよね。いや、単に同じ大学ってだけなんですけど。しかも、バリバリの文系学部の私と違って理系の難易度の高い学部でいらっしゃるし。 しかし、超文型人間でしかもそれを全く生かせてない人間としては、理系なのに文章の方に秀でた才能をもつ人って正直なところ憎いですよね。森鴎外とか寺田寅彦とか…これは古いな…えーっと、鈴木光司とか森博嗣とか。結局、優れている人は全てにおいて優れているということでしょうか。天は二物を与えずなんて嘘っぱちですよね。…好感を持っていると言いながら何だかひがみ心あふれる結びになってしまいした。