『壁男』 諸星 大二郎

壁男 (双葉文庫 も 9-4 名作シリーズ)

壁男  諸星 大二郎  (双葉文庫) ¥620  

 

 評価…★★★★★

 

<作品紹介> 壁の中から人間たちのすることをじっと見ている男がいる──誰が言い出したかわからない噂にとり憑かれた仁科は、壁男との交信を試みるが、彼には惨たらしい結末が!! 以来友人らは壁から目をそむけて暮らす日々だが、たった一人、仁科の恋人だけが、壁男の出現を待ち続けていた…。 表題作のほか『壁男』PART2、3、 『ブラック・マジック・ウーマン』 、『鰯の埋葬』 、『会社の幽霊』 、『夢の木の下で』 、 『遠い国から』第一信~第四信 の全8篇の短編を収録。 (※文庫裏表紙紹介文に他の収録作の題名を加筆)

 

 


うわー、これは凄い!やられました!  諸星大二郎氏ってまんが読みの中では凄く評価が高いんですが、私は若い頃に接する機会がなかったのと絵が苦手なので敬して遠ざける傾向にあったのですね。まぁ、何作かは教養としてという気分で読んではいたのですが、確かに面白いことは面白いけどやっぱりちょっと…という感じだったし。でも、本書はちょっとレベルが違いました。 少女の頃 『箱男』 に感銘を受けた私はこういう題名に弱いんで(『電車男』は除く(-_-)b)、 ついふらふらと買ってしまったのですが、完全にノックアウトされました。

 

表題作は奇想ではあるけど、まぁ結構ふつうなんですね。でも、これが続編、続々編となるにつれて凄いことになるんです。これは絶対単行本で続けて読んだ方がいいですね。迫力が違う。 で、そこでちょっと自失しているところに 『ブラック・マジック・ウーマン』 が攻めて来ます。これ、表紙からして凄いインパクトですけど、内容も凄いです。怖いといえば怖いけど、ちょっと脱力した感じもあって、ちゃんとオチもあって良くできてます^^;

 

そして、第二部になると全く違う世界のお話になるんですが、これがほんとに凄い。最初の 『夢の木の下で』 は、凄く簡単に言ってしまうと樹木と人間が共生関係にある世界のお話なんですが、その関係でもっとも重要なのが夢だというところが普通と違う。これは下手に説明するよりぜひ読んで頂きたい。

その後に続く 『遠い国から』 のシリーズは『夢の木~』と同じ世界だけど、ちょっと設定が違うところが舞台。このシリーズはほんとに奇想に満ちていて物凄く面白いです。先に触れた通り私は諸星氏の絵が苦手なんですが、この作品はこの絵でないとという気がしたくらいです。世界が完全に作り上げられているからなんでしょうねぇ。 SFやファンタジーが好きな方にはぜひぜひ読んで頂きたい一冊です。