『 エイリアン パンデミック 』 ( 2005・英/愛 )

エイリアン パンデミック [DVD]

◆ エイリアン パンデミック [DVD] ( イギリス/アイルランド・2005年 )

 監督:ビリー・オブライエン

 出演:ジョン・リンチ、エシー・デイヴィス、マーセル・ユーレス、ルース・ネッガ、

     スタンリー・タウンゼン 他

評価…★★☆☆☆

<あらすじ>

とある湿地帯にある牧場。経営に行き詰まった経営者のダンは、飼っている牛のうち2頭を実験に提供する契約を科学者のジョンと結ぶ。ダンには具体的な実験内容は知らされていないが、どうやら遺伝子操作した卵を牛の胎内に戻し、その結果生まれてくる子牛で判断するらしい。

その日も、同じく実験に協力している獣医のオーラが出産を間近に控えた牝牛の検診に来ていた。すると、胎内を触診していたオーラが悲鳴を上げて手を引っ込めた。その手には生々しい傷跡が。「 噛まれた? 」「 そんなバカな。一体何に? 」 ふたりは同じことを考えながらも言葉にせず別れる。ただ、何かがおかしいという思いは拭いがたく残っており、オーラはジョンには噛まれた事実を訴え、計画の中止を促すが一笑に付される。

その夜、その牝牛がとうとう産気づく。電話を止められているため、オーラに連絡もとれないダンは何とか一人で出産させようとするが、経験したことのない難産で、とても一人では無事に終えられそうにない。切羽詰まったダンは敷地近くに車を停めて居座っているワケあり気なカップルに助けを求め、結局その青年ジェイミーと2人がかりで滑車を使って必死で介助した末に何とか無事に子牛が生まれる。

が、その子牛はやはり何かがおかしかった。難産の末生まれて息をしていなかった子牛が息を吹き返したか確認しようと差し出したダンの手を噛んだのだ。それも指を喰いちぎるほどに。

状況を確認する余裕もなく慌てて手当をするダンとジェイミーのもとに、折りよくオーラが現れる。事情を聞き、子牛を見たオーラはすぐさま子牛の形成異常に気付き、この実験は中止しなければと言い出し、子牛たちも処分すると言い出し、実際に即座に子牛を殺す。

そして、その子牛を解剖した結果さらに恐ろしい事実が判明する。何と生まれたばかりの子牛が妊娠していたのだ。それも牛には有り得ない多胎で6体もの胎児がおり、それらの胎児の姿は牛では有り得ないばかりか、この世のものとも思えないものだった。しかも、母体から離れてもまだ蠢いているという生命力の強さ。オーラはこれらの胎児をはじめ、できる限りの始末をし、いったん農場を去る。

そして、事情を聞いて駆けつけたジョンは更に恐ろしい発見をする。生き延びて、どこかに逃げ出した胎児がいること。そいつは繁殖を目的とし、宿主を求めてさまよっている。そして、これらの変異体の細胞は他の生物の細胞を汚染するということ。つまり、ヤツらの体液が別の生き物の体内に入ったりすると、その生き物の体はヤツらの細胞に乗っ取られてしまうのだ。農場を封鎖し、ヤツらを退治しなければ地球上の生物が滅びてしまうとジョンは言うのだが…。


繁殖力の強い牛を作るための遺伝子操作から生まれた恐るべき怪物は、強い攻撃力と生命力を持ち、猛烈な勢いで成長し、同時に単為生殖( なんだよな? 胎児の時点で妊娠するんだから )でどんどん繁殖していく。それも、ほかの生命体に寄生し、食い散らしながら……という設定はなかなかに魅力的だし、映像的にも結構グロくてコワいんですが、いかんせん世界が狭すぎする。だって、すべてはイギリスかどっかの片田舎の寂れた農場の中だけでの出来事なんですもの。

「 こいつらが外に出たら地球上の全ての生物が滅びる! 」とか言われても、物凄く緊迫感に欠けるのです。

っつーか、それ以前に説明不足過ぎるんだよなぁ。そもそもの元凶らしいジョンがどこのどいつか、実験がどの程度のもの とかすらわからないし、それで、遺伝子操作した結果とんでもない怪物が!とか言われても、そうかぁ???って感じになってしまう。

最初はジョンが計画の主体なのかと思ったのだけど、言動からすると経営者とか管理者じゃなく科学者みたいなんだけど、専門も所属もわかんないのね。で、ジョンが一介の研究者だとしたら、単独で農場に生体実験を依頼するのって不自然だし、企業なり何なりの何らかのバックがあるんじゃないのかとか思うよね。ああ、でも、契約金の支払いも滞っていたようだからスポンサーになるようなバックはないのかな?

しかし、繁殖力の強い牛を作り出すための遺伝子操作がどうねじまがったらあんなものを作り出しちゃうわけ? この場合、ジャンル映画でよくある様々な遺伝子操作の結果とんでもない化け物が ( 『 アナコンダ 』 とか『 ギガンテス 』 とかその他膨大な例あり^^; )ってのとはちょっと違うと思うんだよねー。

だって、それって、そんな複雑な遺伝子操作じゃないでしょ? しかも、そもそも牛の遺伝子のみに限って行ってるわけだしさ。肉食だったり毒を持ってたりする生き物である蛇だのクモだのサソリだのなら、遺伝子操作の結果ちょっと巨大化したり凶暴化しただけでもやばいことになるのはわかるが、元が牛なんだよ??? いくら凶暴化しても草食だろ? 何で肉食になっちゃうの? 細胞が変異した結果、毒物同様になるってのはまだ理解してやれんではないが…。

それに、題名からして感染推しで( むろん原題は違うが^^; )、作中でもウィルス、ウィルス言ってんだが( 字幕見る限りですが^^; )、その怪物の体内にある何かが他者の細胞を征服する働きがあるらしいんだが、それってウィルスとは違くねぇか? 

まぁ、要するにその怪物に噛まれたりして、体液とかが入ると細胞組織が変異して怪物化したりするらしいのだが、ゾンビ採りがゾンビにとか、吸血鬼ハンターが吸血鬼にとかいうのとはちょっと違うみたいだし、作中で実際に変異した例はひとつもないしな。そのウィルスにやられる以前にフツーに外傷で死んじゃう感じ ( 内臓を食い尽くされるのも外傷に入れていいのかな?^^ ; )なんすけど。 あと、今、例に出したけど、そもそもゾンビや吸血鬼に噛まれて変化するのもウィルスとは言わないよね? 別の種類の生き物というのとウィルスは違うよな。毒という言い方はしてもいいかもしらんが。

あ、エイリアンも全然全く出てきませんよ、念のため^^; モンスター胎児が何でだか外骨格生物みたいなつくりのようなので、「 あ。ここんとこがエイリアン?(笑)」と思わせられるくらい^^; 

まぁ、こじつければエイリアンとも言うべき恐ろしい変異体ということなのかしらねぇ。

なもんで、「 エイリアン 」でも「 パンデミック 」 でも、無論「 エイリアン・パンデミック 」 でもないお話なんですが、 一体どういうわけで、こんな邦題つけちまったんでしょうか?(*_*) 

ちなみに原題は 『 ISOLATION 』( 孤立、隔離といった意味 ) と、例によって内容にはぴったりだけど至って地味なので変えたくなる気持ちはわかるのだが、内容と全く違うってのは羊頭狗肉にもほどがあるでなぁ。

最後はきっとメアリーの赤ん坊に何かが起こってるんだろうなと暗示させて終わるベタに嫌な感じのラストでした。まぁ、この辺はお約束というかね。

しかし、ひとり生き残ったメアリーはあれらの事件をどう言い訳したのであろうか? まぁ、通りすがりのところで起こったことだから、その場を去ればそれで済むのかな。人気もないとこだったし、彼女はほぼ無傷だったしな。

まぁ、そういう狭い場所での話であることや説明不足などから終盤はどうしようもなくダレてくるのですが、前半はなかなか良かったですよ。映像がいい感じに怖いんですよね。ホラーとかで画面

が薄暗いのってあんまり好きじゃないんですが、これは盛り上げ方がいいというか、センスがいいというか。かわいい牛さんがかわいいと同時に怖く見えるの。モンスターの姿がはっきりしないのも、なかなか本論に入らないのも本作の場合はプラスに働いてると思う。牛の出産シーンの( 滑車を使ってやるんですね! ) 迫力のせいもあるかもだけど。

そんなこんなで評価は低めですけど、決して悪い作品ではありません。 好みは分かれるかもしれないけど、ジャンルファンなら見て損したとまでは思わないはず。 あ、題名のことは忘れて見てね(^_^;)b