『 ギガンテス 』 (2004・米)

ギガンテス (2004年・アメリカ)

 監督:トミー・ウィズロウ/製作総指揮:ロジャー・コーマン

 出演:ジェフ・フェイヒー、ジョー・ボーン・テイラー、ジョナス・トーキントン 他

評価…★★★☆☆

<あらすじ>

米軍の貨物トラックが他国のテロリストに襲われ、奪われた。しかし、彼らがウランだと思っていた貨物は全く違うものだった。米軍が極秘で輸送していたその貨物は、実は遺伝子操作で作り出された恐ろしい怪物だったのだ。冷凍状態で運んでいたその生物が蘇生したら大変なことになると、関係者は近隣で訓練中だった小隊にその回収を命じるが、彼らが現場に到着した時は既に惨劇は始まっていた。

何を回収するのかすら知らされていなかった部隊の面々は、わけもわからないままに襲われ、仲間を失い、その危険性から生物を殺そうと主張するが、その生物を作り出した博士が貴重な存在なのだからと生け捕りにすることを強硬に主張し、上層部もそれに従えと言う。

反発しながらも命令には逆らえない軍人たちは、やむなく研究者と協力して捕獲計画を立て実行するが、

サソリをベースに様々な遺伝子操作を行ったというその生物は、そうする間にもどんどん進化・成長をしていき、とても太刀打ちできず、犠牲者が増えるばかりだ。もはや生物兵器とも言える存在になったヤツらを外に出すわけにはいかない。博士も腹を決め、ある作戦を立てるが…。


できれば、作品中でセリフを聞いて驚いて欲しいんですけど、DVDパッケージでネタバレしているので、ここで主役となるのがどんな生物か詳しく紹介しちゃいましょう。何と言ってもこれが本作の最大の魅力ですからね。

作中で新鮮に驚きたい人は以下は読まないで下さいね^^;

元々はどんなウィルスにも太刀打ちできるワクチンを製造するために作り出したというこの生物、猛毒を持つサソリがベースです。何でもサソリにはどんなウイルスにも打ち勝つ抗体が含まれているそうで。それをまず、ワクチンがたくさんとれるように巨大化し、更に成長速度を速めて、生命力を強くするためにゴキブリのDNAを加え、巨大化した体を保つためにチタン合金を加え、摂取時の拒絶反応回避のために人間のDNAを加えたという物凄いシロモノなんですねぇ。余りのことに私は見ながら、「 お前に倫理はないんかい! 」 とめいっぱい画面の博士に突っ込んじゃいましたよ(*_*) 

で、更に無茶な設定が続きます。人間のDNAが入ってるので知能が高く学習能力があるというんですね。そして、チタン合金が体内に含まれている(というか外骨格がチタン合金)ので、体内に入った金属は栄養として吸収してしまうと。だから、銃でいくら撃っても逆効果ですよって話なんですが、それはいくらなんでも無理がないですかね? まぁ、体内に残った金属片を吸収して栄養にしてもいいけど、銃はパチンコ( 飛び道具の方ね )とは違うんだから、衝撃とか火薬にによるダメージはあるだろうよ。

この無茶さに比べれば、この化け物サソリに襲われた後の人間がゾンビ化するなんて、全く自然な話ですね。はい。( サソリの体液が注入されて蘇っちゃうらしい。何しろすごくカラダにいいらしいからな… ) あ、ちなみに何故人間を襲うかというのは単純で突っ込みどころもなし。サソリは肉食だからです。

※以下ネタバレ有り※

まぁ、そんなとてつもない生物が大暴れ!と来たら、よっぽど間違わなければ面白いですよね。もちろん、あくまでB級以下映画としての面白さですが^^;  で、予想以上に面白かったです。これ。最初はテロリストが軍のトラックを襲うところから始まるんですが、ここら辺だけなんか別の映画みたいにかっこいいんですよね。現地( 東欧のどこか? )の乳幼児を抱いた素朴な若い母親を偽装して、軍のトラックを停車させて爆破、そして銃撃戦とえらくシリアスな感じで、「 これはアクション映画だったか? 」と不安になるくらいです。 母親役の女優さんが私好みのべっぴんだったのも好評価の一因ではありますが^^; ( 無意味に撃たれて死んじゃうんだけど、そこもかっこいいのだ(>_<)

しかし、このシーンからテロリスト( そういえば、作中でロシアンマフィアだとか言ってた気もするけど、私はずっとテロリストだと思って見てたので、それで統一させて下さいm(_ _)m )のリーダー格が、検問で積荷の内容を問われて係員の喉を掻っ切るところまでは、かっこいいんだけど本筋から言えば余分な描写なんですよね。まぁ、そういうのが随所にあるんですけど( 米軍兵士と応援にきたNATO特殊部隊の女性兵士のジェンダーを巡る対立とか、遺伝子操作は自然に反していると博士にくってかかる兵士とか )意外に気に障りません。

まぁ、要するに全て、B級以下ホラー映画のお約束とも言える無意味なドラマ( 時間かせぎとも言う^^; )なんですが、本筋に必要かどうかとか、うまく接続しているかどうかは別として、単独で見て結構面白かったんですよね。やたら自然に従えという男とNATOの女兵士のアームレスリング対決なんか、そんな場合じゃないだろうと思って笑ってしまいましたけど。

…とまぁ、そういう映画なのでストーリーを云々しても仕方ないので詳細は割愛します(きっぱり^^;)。見所もサソリくんに設定に尽きるし(笑)

とりあえず、死にキャラだと思っていた博士と少尉が最後まで生き残るというのは予想外でよかったですね。で、最後の最後に取りこぼしが生きてて、実はこれから新たな惨劇がというのを暗示して終わるってのもベタでいいんですが、この映画の場合は殲滅作戦がお粗末過ぎるので、残ってるのが全然不思議じゃないのがちょっと残念です^^;

あと、サソリの体液の効果によりゾンビになる設定がほとんど生かされてなかった( ゾンビになった仲間との戦いとかいう展開には全然ならないのです )のがゾンビ好きとしては残念。そして、死にかけた兵士に「 どうせ死ぬんなら! 」って、サソリの体液だか抗体だかを注射したら何とびっくり蘇るんだけど、代わりにその後サソリ化していったのはお約束だけど笑ってしまいました。これは博士に教えてあげなきゃと思いましたね^^;

どうでもいいけど、便宜上「 サソリ 」って言ってるんですが、見た目あんまりサソリじゃないんですよね。まぁ、外骨格生物だなぁという感じではあるけど、どちらかというとバッタ系な感じです。

あ、そういえば、この映画はいわゆるサービスシーンは全然ありません。米軍にもNATO軍にも女性兵士が一人ずついるというのにルックスはいまいちだし、米軍の方は出てすぐ死んじゃうし。NATOのコは対立してた米軍兵士との唐突なキスシーンがあるが、これは別に嬉しくとも何ともない。

倫理観とか良識とかいうものが頭に存在していないらしい博士が、外見はなかなかいい女なんですが、性格にかなり難があるので、エロかグロかでサービスしてくれるのかと思ったら、何とどちらもなく、ぬけぬけと最後まで生き延びるし。まぁ、それはそれで面白かったから許すけど。

全くサービスシーン無しというのは正しいB級以下映画道に反するのですが、まぁ、それでも面白く見られたので、やはりこれは良い映画なのでしょう^^;

あ、グロシーンの方は質も量も結構見応えあります(^_^)b

ちなみにタイトルの「 ギガンテス 」は 「 Gigantes 」ですね。ギリシャ神話の巨人。

なんでギリシャ語やねんと思ったけど、原題も「 Scorpius Gigantus 」なんだよねぇ。ギリシャ語生かして和訳とかできないし、ふざけた邦題にしても「 巨大サソリの逆襲 」 「 サソリ巨神光臨 」くらいしか思いつかないので、やむなく和訳せずそのままにしました(T_T) スランプだわ…(-"-;)