『明治・大正・昭和華族事件録』 千田 稔

明治・大正・昭和華族事件録 千田 稔 (新潮文庫)¥780  評価…★★★★☆ <内容紹介> 華族とは───、旧公家、旧諸侯、国家に貢献した者などに、政府が与えた身分である。皇室の藩屏であり国民の模範とされた。だが彼らの特権ゆえか人の子に過ぎぬ証左か、華族のなかには、さまざまな事件に関与するものが現われる。貧窮の末の殺人、身分を悪用する詐欺、名家を傾けた放蕩、恋路の果ての心中。華族制度の始まりから終焉まで、当時の新聞を騒がせた人間ドラマを完全収録。(文庫裏表紙紹介文) 武士に比べるとその仕組みや生活自体が余り知られていないお華族様の醜聞集。しばしば引用される当時の新聞の文章などがまた面白い。
※2005年11月読了分。 明治物などには欠かせない存在ではあるのですが、公・侯・伯・子・男があって、公家系と武家系があって、華やかなお名前の割には意外と貧乏している人も多かった…くらいのことしか知らなかった華族とその世界。この本を読むとそこまで知りたくなかったくらいの実情が明らかになります。 身分制度が廃止された中での特権階級故にそれを利用したりされたり、身分に拘泥する余り悪い方向に行ったり…、その様は確かに非常に面白いけど、私なんかは貴なる存在のはずの人がそういう風になっちゃうのを見ると何だか悲しくなってしまいます。子爵姉妹がそろって男にだまされて弄ばれた末に売り飛ばされて不幸な死を遂げるとかね(T_T) 江戸時代の吉原とかで素性を買われてみたいなのなら、まだ救いがあるような気がするんですが実に安い扱いなんですよ…。 しかし、時代背景もあるのでしょうが、その身分自体が新しいせいか武士と違って意地や誇りに欠ける人々も目立ちますね。(お公家様が多いから?) 卑劣な女たらしや放蕩は以前からあったことで驚くにはあたらないといえばあたらないけど、睡眠薬飲ませてモノにした子爵はちょっとあんまり…(-"-;) 最終章『華族「醜聞」の深刻化』はもう目を覆うばかりのひどさです。華族だからという問題ではなく人としてどうかという醜聞だらけ。 妻が浮気してるのではという病的嫉妬に駆られ、お手洗いに潜んで用を足している妻の局部を竹槍で突き刺した男爵とか、礼金目当てに飼い犬を誘拐する子爵とか(あくまで礼金目当てで身代金は要求しない。なので捜索広告が出なかった場合は犬を殺すというのが許しがたい)。 有名なところでは柳原 子(白蓮)や九条武子の話もあります。白蓮さんは写真が載ってますがほんとにきれいです。女の美貌は両刃の剣ですよねぇ。  ※空白部分は火偏に華という字なのですが文字化けします(T_T)