『 紗央里ちゃんの家 』 矢部 嵩

◆ 紗央里ちゃんの家  矢部 嵩 ( 角川ホラー文庫 ) \460

 評価…★★★☆☆

     

<あらすじ>

僕の家族は毎年夏休みには一家全員で、従姉の紗央里ちゃんの家に数日間泊まりに行っていた。その家には紗央里ちゃんと彼女の両親、つまり僕の叔母と叔父と、父の両親、つまり僕の祖父母が住んでいた。そして、今年の夏休みもいつものように紗央里ちゃんの家へ遊びに行くことになったのだが、今年は今までと違うことがいくつかあり、僕は少し落ち着かない気分だった。

まず、受験生である姉が不参加、そして、姉に付き添うため母が不参加。更に、大好きだった祖母が数ヶ月前に亡くなっているということ。そして、もうひとつの大きな違いは現地に行って初めてわかったことだが、紗央里ちゃんもいなくなっているということだった。

それ以外にも、紗央里ちゃんの家に着いてから気付いた変わったことはたくさんある。まず、僕らを迎え入れた叔母が血まみれだった。エプロンも手も、おそらくは足の裏までも血に染まっているが、本人には異常はないらしく、にこやかに僕らに話しかけている。そして、家の中にはその血のせいだけではない、生臭いような湿ったような臭いが充満していた。祖父も叔父も何となく様子が変だし、祖母の死因も紗央里ちゃんの行方もはっきりしない。そして、洗濯機の下には指が落ちていた。

誰が誰に何をしたのかはわからないが、この家で何かがあったのは間違いないのではないかと思った僕は、家の中をこっそりと探り始めるが…。

第13回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。


※以下ネタバレ有り※

余り期待せずに読んだせいか思いの外面白かったです。結構感心しました。

しかし、若者狙いなのはわかるけど、この表紙はどうかと思うなぁ…。最近こういう若者狙い多いですけど、それで本当の本好きが離れてしまったらマイナスの方が多いんじゃないかなぁ。実際、森見登美彦氏のコメント入りの帯がなかったら買いませんでしたよ(T_T) 

でも、私は余りグロいとは思わなかったですね。文体のせいかな?それとも死体が老婆のものだから、いくら切り刻んでても、流血してても、干物みたいな感じだからでしょうか?(笑) それなりに描写はしてるけどリアルに迫ってくるものはなくて、悪夢のようだとまでもいかない感じ。したがって、怖さもほとんどなくて、わずかにあるそれはホラー的な怖さじゃないもの。ただ、この部分はかなり怖いです ( これは森見氏と同意見^^; )。 そして、ここだけが妙にリアル。これがために本作の評価が私の中ではかなり高くなりましたね。

他の妙にふざけたようなシーンとか会話とかも別に嫌いではないんですが、お姉さんの言葉遣いがちょっと乱暴過ぎはしないかしら?それと、現代日本が舞台のようなのに、何故この人たちは携帯を使わないのかしら? 考えてのことなのかもしれないけど、誰ひとり使わないのは不自然に感じられて仕方がなかったですね。不条理感と不自然さは違いますよね。

しかし、今気付きましたが、この著者凄い若いんですねぇ。1986年生まれですって(@_@;) 受賞時 ( 2006年 )は20歳かな? 

「 さおり 」 の字面が題名にするには気障りだよなぁ、どうしてこんなのにしたんだろうと思ってたんですが、その年齢ならムリもないか。こういう名前が普通の世代ですもんね。うーむ、ジェネレーションギャップがこんなところにも現れるとは…(-"-;)