『 いろは歌に暗号( かくしごと )』 鯨 統一郎

◆ いろは歌に暗号( かくしごと )  鯨 統一郎 ( 祥伝社文庫 ) \670 評価…★★★☆☆ <あらすじ> 弘仁元年 ( 810 )、平城上皇を操って謀反を起こしたと言われる「 薬子の変 」 。その稀代の悪女・藤原薬子とは何者か?事件の真相を追うは、若き真言密教僧の空海とライバルである天台宗の高僧・最澄。二人の知恵比べに型破りな推理が錯綜する…。 「 いろは歌 」、さらに「 かたらむ歌 」 四十七文字に隠された驚愕の真相とは!これはもしかして歴史上の大発見? ( 文庫裏表紙紹介文 )
これは全然バカミスではない作品なんですね。おふざけ的な要素も全くなく、それどころかシリアスな、ちょっとドロドロした人間ドラマが軸になった歴史ミステリーです。こういう内容であれば一休さんシリーズの二人が謎を追究するという二層構造はなかった方が気がします。まぁ、この構造にしてる方が説明しやすいのでしょうけど。 作中で書かれてる歴史的事項がどの程度、事実に基づいてるのか浅学にしてわかりませんが、平城上皇と神野天皇の関係、その二人と薬子の関係、そして、三人を巡る人々のいずれも面白かったですね。薬子は物凄く癖のある人物として設定されているし、他の主要人物もかなり問題のある感じで、ちょっと感情移入しづらい人も多いのではないかと思いますが、私はそこが逆にリアルな感じがして面白かったですね。同じ女として、色々な意味で薬子に同情を禁じ得ません( かなり嫌な女でもあって、共感できないところも多々ありますけどね^^; ) 後の将軍に比べると、帝の方が好き勝手やってたんだろうなぁと改めて思いました。 ミステリーとしての仕掛けは、いずれも割とわかりやすいんですが悪くはないです。ちなみに薬子が強烈過ぎて、探偵役の空海はそれほど印象に残りませんが、この場合はそれでいいんでしょうね。割と類型的な書かれ方をしてるせいもあるかなと思うけど、本作の主役はやはり薬子ですよね。 ( 8月読了分 )