『 SUKIYAKI WESTERN ジャンゴ』（ 2007・日）

◆　SUKIYAKI WESTERN ジャンゴ　（ 2007年・日本）

　監督：三池崇史

　出演：伊藤英明、佐藤浩市、伊勢谷友介、香川照之、桃井かおり、木村佳乃、

評価…★★★★☆

＜あらすじ＞

舞台は源氏と平家の決戦である壇ノ浦の戦いから数百年後の、日本のどこかの山村と思しき場所。世間は平家の落人の埋蔵金伝説で沸き立ち、あちこちでゴールドラッシュめいたものが起こっていた。そして、平家の落人の子孫から成る、その小さな山村にもその波は押し寄せ、各地から訪れるならず者に村は蹂躙され、保安官は業務を放棄し、村人のほとんどは逃げ出し、最終的に平氏の血を引く清盛率いる白軍と源氏の血を引く義経率いる赤軍が村のどこかにあるらしいお宝を巡って膠着状態となっていた。

そこにひとりの流れ者が現れ、「どっちでもいいから俺を用心棒に雇え」と言い出す。彼の優れた技量を見せつけられた両軍は、争って破格の待遇で迎え入れようとするが、そこに村の飲み屋の女主人が現れて腰を落ち着けて考えるよう流れ者に助言する。

流れ者は助言に従い女の経営する店へと向かう。そこで、現在に至るまでの経緯を聞くが、そこで出会った母子と、その家族の物語が彼の心の琴線に触れたらしい。そして、流れ者はその母親が身を寄せている平家側に付くことにするが…。

それぞれの陣営の思惑に、個々の構成員個人の愛憎、そして、女主人や母子を始めとする村人たちの思惑や因縁、流れ者の謎めいた行動などが絡まりあい、事態は急展開し、やがて全員入り乱れての壮絶な戦いへと発展していく。

いやぁー、ほとんど期待せずに見たんだけど予想外に面白かったですよ。三池崇史監督は結構好きなんだけど、作品のコンセプト（特に邦画で日本人俳優なのに総英語とか）にどうも首肯できないし、俳優陣のほとんどが嫌いだし、ちらほら見る映画評（余り一般的なものではないです）も良くはないし、見ることはないなぁと思ってたのに、ふと魔が差して借りてしまったのですが、いや、良かったよかった。結構拾い物。なので、ちょっと採点が甘めです^^;

※以下ネタバレ有り※

まぁ、お話はあって無きが如しです。ただ、いわゆるウエスタンとしてのストーリー性の無さではなく、単なるバカ話としての内容の無さなんですね。だから、普通なら見せ場になるはずの戦闘シーンとかガンアクションとかはお粗末だし、もうひとつの見せ場であるべきヒューマンな部分についても誠にお粗末です。でも、これはそんなもんだとして見れば、まぁ別にいいんじゃないかなぁ。俳優が無駄に豪華すぎる（私は好きじゃない人ばっかりだけど）気もするけど、そもそも内容のない話であるせいもあって結構使い捨て的だったりもするし、変に内容のあるフリをしたり、それぞれに見せ場を作ったりして、物凄くムダに長大な作品になっていたりする三谷幸喜作品よりはこっちの方がよっぽどいいですね。出演俳優は三谷作品の方が好きなんですけどね。

あ、タランティーノが思いの外、しっかり出演してるのにはちょっとびっくり。あれはカメオ出演というレベルじゃないですよね。冒頭にがっつり見せ場があって、終盤にもあって、しかも全部かっこいいの。台詞も設定も全部ふざけてるけど^^;　私はタランティーノ監督が作品も本人もは好きなので、これは全然アリでしたけど、彼を知らない人が見ても多分アリなんじゃないかな。あの独特の風貌がインチキくさくて、この映画にはふさわしい感じでした^^;　

しかし、日本語吹替え版の声は全然似合わないけど、何故あんなキャスティングにしたんだろう？できるなら、タランティーノ本人に頑張って下手な日本語でしゃべってほしかったなぁー。ここはほんと残念。

キャスティングについての疑問はもうひとつあります。というか、私に言わせるとこの作品の最大の欠点と言ってもいい謎の配役なのですが、何故、ヒロイン役が木村佳乃なのでしょうか？美人でもないし、色気もないし、体も貧弱で、その上、踊れないし、脱がない。全く意味ねぇじゃん！

この作品では演技力は必要ではないので、そこは問いませんが、とにかく、この役は乳があってナンボじゃないっすか？？？で、本来なら脱ぐべきですよね。乳丸出しにしろとまでは言いませんが、下着だけになるとか、全裸で絡み合うとかいうシーンはあって然るべきですよ。

あ、木村佳乃がきっちり脱いでいたら、この役は彼女でＯＫだったかというとそういうわけでもないんで、彼女が脱がなかったことを責めているわけではありません。念のため。本来脱がない人がこんな映画のために脱ぐ必要はないです(^_^;)b

そして、ダンサーという設定であるからには肉体と並ぶ売りであるべき踊りは、全くひどいもので精神病の発作か何かにしか見えなかったですが、実際にフラッシュバックや幻覚めいたものが起こっているようだったので、もしかしたら本当にそういう意図なのかもしれませんね。なので、踊れないことについては余り追求はしません。ギャグだとして見れば成立していなくもないですしね。まぁ、それでも、もう少し踊りとしての魅力があるにこしたことはないと思うんだけど…。

とにかく、この役には美貌と肉体美と色気ですよ！本来なら、この女のためなら人を殺してもいいと思わせるくらいの女にしてもらいたいところですが、まぁ、女日照りの村でもあるし、最悪、乳だけでもあればいいです。例えば、そうだな、何なら倖田來未とかでもいいですよ。乳もあるし、踊れるし、話題性もあるし、木村佳乃よりは随分マシだわ。彼女は別に名前で客呼べるほどの女優さんでもないですよねぇ？そういうのも考え合わせてリアルなところで言えば、常盤貴子とかどうでしょう？とりあえず乳はあるし、ある種の色気はあるし、日本的な顔立ちなところもいいですよね。

…と、まぁ、めいっぱい文句を言いたいのはそれくらいかなぁ。後はバカ話だと思えば特に気にならない程度。時間はちょっと長いし、その分テンポの悪いところとかムダなところがあるようには思うけど、耐えられないほどではないし。ウエスタンにしては、流れ者のガンマンの影が薄過ぎると思うけど、私は伊藤英明は嫌いなので、むしろ良かったかな^^;

あ、でも、冒頭でも言いましたが、この映画のメインどころの俳優のほとんどが私の嫌いな俳優で、義経役の伊勢谷友介もそのひとりなんですが、本作で初めて彼をいいと思いましたね。役者としてとかではなく、とにかくきれいな男だなぁということに感心しました。白軍の首領にふさわしく、ほんと白皙の美青年って感じなのですね。周りの連中が薄汚い（造作もだけど、衣装とかメイクも）だけに美しさが際立ってました。木村佳乃よりよっぽどキレイで、彼が欲望にまかせてという感じで木村佳乃とヤるシーンは物凄く不自然に感じましたよ。キレイ過ぎて性欲なさそうorあっても女は嫌いそうな男に見えるというのもあるんだけど。

ああ、そういえば、最後の義経と流れ者の対決シーンはちょっとあんまりなんじゃないのって感じでしたねぇ。ある意味、最大の見せ場のはずなのにめちゃめちゃあっさり終了ですから。てゆーか、ほとんど戦ってないんですよね。敢えて銃を捨てて刀で向かって行った義経を、容赦なく二丁拳銃で出迎えて、ためらいもなく頭を撃ち抜く流れ者が悪役にしか見えず、義経は愚かではあるけど自分のポリシーに殉じて死んでいったある種のヒーローのように見えましたが、まさかそういうつもりで作ってはないですよね^^;　私の目が歪んでいるのだとは思うけど、どう考えても刀で弾を真っ二つにする義経の方がかっこよかったぞ。義経だからって判官びいきするわけじゃないけど（笑）

あと、突然降り出した雪があっという間に降り積もるのは、ちょっとやり過ぎ感あったけど、あれもわざとなのかしら？まぁ、別にいいけど、あんなに雪が降る時期にはふつうバラは咲かないんだけどなというのもあって、ちょっと気になったのでした。

そうそう、更にとてもどうでもいい話ですけど、パッケージとか見る限り、この作品の題名は『ジャンゴ』であって、『スキヤキ・ウエスタン』ってのは説明なのですよね。「ＳＦ大作」「実録女囚もの」とか付いてるようなもので。私はずっと全部ひっくるめて題名なのかと思ってて、その点も余り気に入らなかった（題名自体で「スキヤキ・ウエスタン」って新ジャンルであることを主張するのはどうなんだ？とか思って）のだけど、そうでないとするとちょっと違ってきますね。何かもっと上手いことできなかったのかなぁ。

（７月末鑑賞分）