『 13/ザメッティ 』 ( 2005・仏 )

◆ 13/ザメッティ ( 2005年・フランス )

 監督:ゲラ・バブルアニ

 出演:ギオルギ・バブルアニ、オーレリアン・ルコワン、パスカル・ボンガール 他

評価…★★☆☆☆

<あらすじ>

22歳の青年セバスチャンは修理工だ。家族は母と兄だが、移民一家である彼らはなかなか職が得られず、彼のわずかな収入で一家の暮らしを支えていた。

ある日のこと、セバスチャンは屋根の修理に行っていた家の主人が、大金が得られる可能性のある仕事が入る予定だと話しているのを耳にする。その男は薬物中毒でまともに動くこともできないのに、そんな都合のいい仕事があるのだろうか? どうも怪しげな雰囲気だが一体どんな仕事なのだろう?仕事の連絡は郵便でくるらしいが…。生活が苦しいセバスチャンは、大金が入るというその仕事に興味があり、何となく彼の様子に注意していた。

そして、その郵便が届いてまもなく、その男は薬物による事故で急死してしまう。 家の中はバタバタしており、手間賃も払ってもらえそうにない。偶然から、その仕事の依頼の手紙を手にしたセバスチャンは、自分が代理でその仕事に行くことを決意する。

郵便物の内容はパリ行きの列車のチケットとホテルの領収書で、それ以外には何の指示もない。セバスチャンは、とりあえず指定の列車に乗り、該当のホテルに向かうことにする。するとホテルの部屋に次の行動を指示する電話がかかってきた。次々と与えられる指示に従って辿り着いたのは森の奥の屋敷だった。

セバスチャンを迎えた雇い主は、当然ながら別人であることに気付き彼を難詰するが、事情があるらしく最終的には彼を受け入れ、これから始まるゲームに出場するように言う。明らかに不穏な空気に不安になってきたセバスチャンは、ダメならやめてもいい、内容を聞いたら僕は断るかもしれないしと言い出すが、もはや出場するしか選択肢はないのだと言われる。

そして、始まったゲームは彼の想像を絶するものだった。内容はごく単純だ。出場者全員が輪になって、前の人間の頭部に銃を向ける。その銃の中には一発だけ弾が込められている。合図と同時に引き金を引き、生き残っていたものがその回の勝者だ。そう、つまり、ゲームとは集団で行うロシアンルーレットだったのだ。そして、見物客たちは回ごとに誰が生き残るかを賭ける。胴元やセバスチャンの雇い主のような連中には賭け金の何割かがその度に懐に入り、ゲームの出場者は最終的に勝ち残った者だけが大金を得ることができるという仕組みだ。

銃に触れるのも初めてのセバスチャンは激しく動揺しつつも、その場から逃れることもできず、教えられながら、どうにか銃を構える。果たしてセバスチャンの運命は…?


※以下ネタバレ有り※

うーん、いつものクズ映画とは違って、かなりよく出来た映画だとは思うのですが、私にはつまんなかったですねぇ。これは完全に好みの問題ですが、前半は見てるのが苦痛になるぐらいつまんなかったです。私はもっと単純な娯楽っぽいノリを求めてたのですが、これはまさにフランス映画って感じ ( 偏見 )で、ダラダラとした展開、重苦しい雰囲気、わざと白黒にしている感覚なども含めて苦手なタイプの作品でした。

その白黒ならではの映像の美しさや、主演の青年の演技力と魅力などは認めますけど、それでも、うーん…って感じなのです。この作品の主題は私の求めているものとは明らかに違うんだろうとは思うのですが、それでも、この題材だとつい期待してしまいますよねぇ。私同様に裏切られた思いを感じた人も多いのではないかしら。

何がつまんないって、とにかくメインとなるゲームの場面が全くもってつまんないんですよ。ほんとにロシアンルーレットを大勢でやるってだけで、何の盛り上がりもない。ちょっと錯乱したりする人などは出るけど、観客も出場者も基本的にはみんなお行儀よく、頭を撃ち抜かれるシーンもごくごく控えめ。至近距離で撃つのに頭部が破壊されるようなこともなく、白黒だということもあって出血すら確認できず、ただ、倒れたことによって、「 ああ、アイツ当たり( 外れというべき? ) だったんだな 」 と分かる程度なんですよ。

それとルールも何だか微妙。回を重ねるごとに、メンバーは減るのに込める弾の数は増えるという仕組みは、当事者( 出場者 ) には緊迫感はあるのかもしれないけど、見てる方は 「だから? 」 って感じ。それに、あんなに弾数増やしたら相打ちになるんじゃないか?てゆーか、可能性としてはそっちの方が確実に高いと思うんですが、その辺はどうなってるのでしょうね? 効率面やゲームの盛り上がりなどを考えると逆にすべきじゃないかと思いますが。

あと、ゲームがほんとに運だけに頼るもので、出場者は全く無力な存在だというのも面白くない要因のひとつですね。自分の力で何とかすることができないようなゲームは見ていて面白くないし、出る方も嫌じゃないのかな。まぁ、自分自身の能力に全く自信がない人には願ってもないゲームかもしれないですけどね。

でも、こんなゲームだったら人間使ってやる必要があるのかなぁ?人間性とか個性とか必要ないし、実際出場者の情報は全然提示されてないんですよね。見た目で判断するだけ。 ちなみに、映画の観客にも情報はほとんど提示されてません。これも面白くない理由のひとつ。

こういうゲームが題材の作品って、主題が人間的なものであれ鬼畜的なものであれ、それに関わる人のドラマが見たいものじゃないですか。何故こんなゲームに出場することになったかとか、このゲームはどういう連中によって行われているかとか。もちろん、ゲーム自体のショッキングな映像が見たいというのもあるわけですが、ヒューマンドラマが主題ならそこはガマンしてもいいですよ。しかし、この映画の場合は、そのいずれも描かれないんですよね。このゲームの場面にくるまでさんざん待たされて、あげくにこれかよって感じで、肩透かしもいいところでした。

まぁ、銃の扱い方もわからなかったセバスチャンが運良く勝ち残っていくにつれて、だんだん表情が変わってきて、最終的に優勝した時には別人のように酷薄な表情をするようになってきたのは、なかなか見応えありましたが。彼は白黒がよく似合うタイプの美形ですね。

で、最後に警察の追及 ( この警察の連中も何やってんだか今いちわかんない。手際悪過ぎないか? ) を別人のようなふてぶてしさと機知で逃れたのに、帰りの電車の中で金目当てで彼を追ってきた男に撃たれて敢え無く死亡、という予定調和なオチは良くも悪くもないけど、セバスチャンは最後に絶対死ぬんだろうなぁという雰囲気だったので、ここは逆に生かしておいて欲しかった気がしないでもなかったです。 それに、せっかく頑張ってきたのに、かわいそうだし ( 珍しく人間らしい意見 ) 。

まぁ、何というか様式美な感じの映画でありましたね。作品自体に文句はない ( 今まで言ってきたのはあくまで感想です^^; ) けど、パッケージの説明文には結構文句言いたいなぁ。この作品を評するのに 『 ファイトクラブ 』 を引き合いに出す意味がわからん。間違った先入観を与えるとお互い損するだけだと思います。

題名の 『 ザメッティ 』 は 「 THAMETI 」 で、グルジア語で「 13 」 を意味する語だそうです。 何故に13かというと、作中のゲームに参加するメンバーが13人で、参加が決まった時点でそれぞれに番号が与えられているのですが、セバスチャンに付与される番号が13なのですね。それで、集合場所に行くための指示の際にもその数字が出てくる。

そして、この数字がキリスト教では不吉な数字とされることは言うまでもありませんよね ( ちなみにグルジアキリスト教国らしいです ) 。

あ、何故グルジア語かというと、監督がグルジア人だから or セバスチャンがグルジア人という設定だから or その両方のいずれかの理由であろうと思われます。日本語の感覚で言うと促音と拗音が入ってて、何となく響きがいいからかしらと思ったりもしますけど、ホラー・スリラー頭で考えれば、「 13 」 というだけで十分ですね^^;

( 7/31鑑賞分 )