『 女という病 』 中村 うさぎ

◆ 女という病  中村 うさぎ (新潮文庫) ¥420

 

 評価…★★★☆☆

 

<作品紹介> ツーショットダイヤルで命を落としたエリート医師の妻、我が子の局部を切断した母親、親友をバラバラにした内気な看護師……。殺した女、殺された女。際限ない欲望、ついに訪れた破滅。彼女たちは焼けるような焦りに憑かれて「本当の私」を追い求め、狂い、堕ちた。女性が主役を演じた13事件の闇に迫る圧倒的ドキュメント! 女の自意識は、それ自体、病である。これは、あなたの物語。 (文庫裏表紙紹介文)

 

扱われている事件は最近のものばかりで、被害側加害側問わず殺人が多いですが、それ以外の妙な事件もいくつか取り上げられています。主なところを以下に列挙します。 人気同人誌まんが家殺害事件 ( 2000 )、 広島エリート医師の妻誘拐殺人事件( 2003 )、 神奈川無認可保育園の園長による園児殺害と傷害事件 ( 2000 )、 偽有栖川宮事件 ( 2003 )、 実母による息子の局部切断事件 ( 2004 )、 長崎小6女児同級生殺害事件 ( 2004 )など…

 

 


 本書は紹介文にあるような「 圧倒的ドキュメント 」ではないと思います。著者自身がまえがきで 「 事実と想像が入り混じっていて、純粋な意味でのノンフィクションではない。これは 「 彼女たちの物語 」という体裁を取りながら、実は 「 私の物語 」 だ 」 と述べていますが、そのこと自体は良いのです。ドキュメント= 記録「 文学 」というくらいですからね。だが、しかし、事件関係の資料が余りにも少な過ぎる!まぁ、このページ数( 235ページ )で13もの事件を扱ってるわけだから、想定はしてたけど、それにしてもねぇ…(T_T)

そういう本なので、がっつり事件記録が読みたい人にはおすすめできません。これらの事件をよく知らない方にはちょうど良いかもしれませんが、前述の通り、かなり著者の主観が入っていることをお忘れなく。客観的な事実でない可能性があるというだけでなく、ふつうのドキュメントより著者の人間性みたいなものが強く出てるので、ちょっと読みづらい感じもあります。

 

 

※以下ネタバレ有り※

 

 

私は中村うさぎ氏( どう敬称をつけても妙になる困った名前だな… )が好きです。かなり熱心な読者だと言ってもいいし、ご本人にもかなりシンパシーを感じています。あ、外見的にも好きです。整形前も後も^^ 

だがしかし、なのか、だからこそなのか、彼女が自己分析的な自分語りを始めると、どうもダメなんですよねぇ。読んでるとうんざりしてくる。ひとことで言うとクドい。冷静なようだけど自己陶酔してる感じがあるんですよね。言ってる内容は冷静で鋭かったりするんだけど、何かが過剰。自分と似たところがあるだけに強く感じてしまうのかもしれないけど。

でも、同時期に出た 『 愚者の道 』 と本書を比べてみると、真っ向から自己分析している前者より本書の方が嫌悪感( キツい言葉ですが他に適当な言葉が思い当たらない… )が強かったので、問題は自己分析だけじゃなく、図らずも出てしまったウェット感みたいなものにあるのかなと思ったりもしました。

そういえば、エッセイなんかで嫌だなと思うのも図らずも語ってしまってる感があるのが多い気がする。最初から自己分析するつもりだと、少しひいた目で見られるから違うんでしょうね。

 

そんなわけで、本書は最初は相当に読みづらくて投げ出しそうになったくらいですが、中盤くらいから、こちらが慣れたのか著者が慣れたのか、かなり楽になってきました。後半の事件はよく知らないものもあって、なかなか面白かったですし。 24歳の母親が生後4ヶ月の息子の局部を切り取った事件なんかは、色々な問題を孕んでいる上に関係者が全て生存していることもあって、事件性の割には余りメディアに取り上げられなかったので、詳細を初めて知って興味深かったです。

犯人である母親の 「 義父に性的虐待を受けていた 」という供述を認めた義父は最低野郎だけどえらい! 犯した罪は消えないし最低最悪のゲス野郎だと思うけど、その点だけは高く評価する。

ちなみに切り取られたのは意外にもサオの方ではないんですよね。著者の想像による説明は自然なようなそうでないような微妙な感じだけど。生まれたてで成人のものとは別のものにしか見えなかったとしても、男性器への憎しみであれば、やはりサオに向かうんじゃないでしょうか?それに、そちらの方が切除しても後の生活に余り支障ないし。まぁ、人の心はわかりませんがねぇ。

 

和歌山マリオネット殺人事件( こんな呼称があったとは知らなんだ(@_@;) は事件自体も珍妙で面白いのですが、拘置所に投稿誌があるというのが初耳で面白かったですね。しかも、本書を読む限り結構好き勝手なことを言えるらしい。読みたい(>_<)

 

その他、かなり共感できるものもあり、納得できないものもあり、様々ですが事件自体はやはり面白いですね。もう少し資料増やして突っ込んで書いてくれればいいのになぁ。

 

しかし、こういう事件モノを読むと、呆れるような虚言者とそれに騙される人とか、全く根拠のない自信を持っている人の、その自信に何故か騙されてしまう人とかよく出てきますが、やはり人間気合が肝心なのでしょうか?(*_*)

確かに、ファッションとメイクがばっちり決まってて、あたしキレイでしょってオーラを出されると並以下でも美人に見えたりするもんなぁ。

そうか、気合かぁ、確かに持ち合わせてないなぁ…。まぁ、 私に足りないのはそれだけではないが。