『 ドッペルゲンガー 』 (2003・日)

◆ ドッペルゲンガー (2003年・日本)

 監督:黒沢 清/出演:役所 広司、永作博美ユースケ・サンタマリア

 評価…★★★★☆

<あらすじ>

由佳は弟と2人暮らしだ。ある日、仕事中に弟を見かけ、一緒に帰ろうと声をかけるが彼はあらぬ方向へ立ち去る。ところが、帰宅した部屋には弟がいた。彼は外に出てないし、由佳に会ってもいないと言う。不審に思いながらも、人違いだと自分を納得させた由佳のもとへ一本の電話が入る。警察から弟が自殺したという連絡だった。本人がここにいるのに何を、と一笑に付した由佳が降りむいた時、部屋の中には誰もいなかった。しかし、その後も彼女の前に弟は現れる。これはドッペルゲンガーなのか?

一方で、医療機器メーカーに研究職として勤務する早崎は、現在の研究に行き詰っていた。優秀な技術者であった彼は過去に大いに会社に貢献しているため、かなりの特別待遇を受け、周囲からも尊敬も期待もされているが、それ故に彼の焦りと苛立ちは大きく、精神的にかなり追い詰められていた。そんな彼も最近奇妙な現象に遭遇していた。自分に似た姿を見たり、行っていないところにいたと言われたりしていたのだ。

そしてある晩、とうとう早崎の前にもうひとりの自分が現れる。そのドッペルゲンガーとおぼしき存在は、お前を助けに来たんだと言うが、早崎にはとても受け入れられない。混乱する早崎は、部下の高野が以前に友人の話として、由佳の弟のドッペルゲンガーの話をしていたのを思い出し、連絡をつけてもらい由佳と会ってみたりもするが、解決の糸口は全く見つからない。

そうこうするうちに、ドッペルゲンガーはどんどん自分勝手に振る舞い始めるが、確かにその殆どは早崎のためになることだった。会社も首になった今、研究資金を調達し、資料や人材を集めてくれる彼を早崎は利用せずにはおられなかった。

そして、早崎の必死の努力の甲斐あって、研究していた機械は完成するが、そこにドッペルゲンガーが現れ…。


※以下ネタバレ有り※

黒沢清作品2作め。

いやぁ、意外に面白かったです。やっぱり、マジメなようでふざけてるんだけど、本作にはそれがマッチしてるみたいで 『 LOFT 』 で感じたような違和感はないし、コワイといえばコワイ。まぁ、決してホラーの怖さではないんですけどね。ホラー的に言えば、「 ドッペンルゲンガーでこれはないだろ 」的な突っ込みどころ満載なんですが、本来のドッペルゲンガーの定義に従ってたらこの物語は全く成立しないので、最初からそういうお約束は気にしないことにして見ないとダメですね^^; 私はそのつもりで見たので、逆に「 あ、こんなことしちゃうんだ!」と新鮮な驚きがあったりして楽しめましたね。

ラストは唐突に青春映画のノリで、全てを放り出して早崎と由佳が新しい生活に踏み出すって感じの終わり方でしたが、後半ちょっとロードムービーっぽくもなってたし、違和感なく受け入れられました。むしろ予定調和な感じかな。ほぼ全篇を通して最大の目的ともなってた機械が海に落ちてもお構いなしってのは、そこまでやるかという感じはしましたけど、そのわざとらしいドタバタ感みたいなものも良かったです。

しかし、この機械の造型自体がやっぱり冗談だよな。最先端機器のはずなのに、すっごいアナログな感じなんですもの。

個人的には、人を襲う時の道具の大半が金ヅチだったのが愉快でしたね^^;

でも、早崎自身のドッペルゲンガーを襲う際は手近にあったんだろうという感じで、さほど不自然ではなかったんですが、割と最初の方で由佳の弟のドッペルゲンガー(だか何なんだか…)を殺す時に金ヅチだったのは、ちょっと笑ってしまいました^^;  由佳に真摯な態度で、 「俺に任せてくれれば悪いようにはしないから」 か何か言っておいて、やることは金ヅチでカーンかよとか思っちゃって^^;

しかし、この時は割と一撃必殺な感じだったけど、自分を殺した時はえらく流血してたなぁ。被害者側の心構えとかの問題もあるだろうけど、道具も違いがあったのかしら?

あとドッペルゲンガー役所広司がむやみにテンションが高くて、ユースケ・サンタマリアみたいだったのがユースケ本人も出てるだけにおかしかった。人はむやみにテンションを上げるとユースケ・サンタマリアになるものなのですね^^;

あ、作中でのユースケ・サンタマリア自身は、テンションは特に高くなく、いい加減なだけでした。極めて本人に近いイメージでしたが、暗くて軽い感じが妙で良かったですね。私はあっさり犯罪を犯す人物が好きなんですよね。( あくまでフィクションの中だけで、ですよ。念のため )

それと、永作演じる由佳のファッションが妙に野暮ったくて、そのくせ胸元をアピールするものが多いのが気になって仕方がありませんでした。あんなコーディネートをするスタイリストは有り得ないから、狙いだと言うことだけはわかるけど、その意図がいまひとつ。ああいうファッションを好む女がいるのはわかるんだけど、私の中でイメージするそういう女と由佳が重ならないんだよね。見解の相違なのでしょうか? ああ、でも、「 新しいことがしたいんだけど自分だけじゃできなくて 」 てなスカタンなことを言う女は、ああいう服装をしていそうな気がしないでもないな。

しかし、ユースケ演じる君島くんはともかく、柄本明演じる村上さんは全く意味不明な存在でしたね。一介のサラリーマン( それも本来は技術畑の )だった彼が、何故2000万円と拳銃を容易に手に入れられるのか?ヤバい連中とつながりができたというセリフだけでは説明できないし、そもそも、そんなつながりできませんでしょう。しかも、登場シーンにほとんど意味がない。これはある意味凄い。

まぁ、早崎と君島と村上の殺し合いを含めた循環みたいなシーンは面白かったですけどね。やはり、こいつらは生命力あると思うべきか、こいつらはみんな詰めが甘いと思うべきか迷うけど(笑)

前回の『LOFT』は期待外れだった(期待の方向性が間違ってたのかもしれないですが…)のですが、今回は期待以上に面白かったです。 他の黒沢清作品も見なければ。でも、近所のレンタル店に古い作品が置いてないんですよねぇ(T_T) 既に変な順番で見始めてるけど、できれば公開順に見たいんだけどなぁ。

妙な作品を好む人間でもあるので、ネット宅配レンタルを利用すべきかとも思うのだけど、あれって(私のチェックした範囲では)、返却してから次が来るまでにかなりタイムラグが生じるのが納得できないのよねぇ。オプション料金つけるとかなり高額になるし(-"-;) そもそも月額料金を払い続けるのが何か嫌。俺は何者にも縛られたくないのさ、ベイビー。(すいません、既に早朝なんでちょっとアタマが沸いてます…)