『 影が行く―ホラーSF傑作選 』 中村 融 編・訳

◆ 影が行く―ホラーSF傑作選  中村 融 編・訳 (創元SF文庫) ¥1,050

 評価…★★★★★

<作品紹介>

末知に直面した時、好奇心と同時に人間の心に呼びさまされるもの――それが恐怖である。その根源に迫る古今の名作ホラーSFを日本オリジナル編集で贈る。閉ざされた南極基地を襲う影、地球に帰還した探検隊を待つ戦慄、過去の記憶をなくして破壊を繰り返す若者たち、19世紀英国の片田舎に飛来した宇宙怪物など、第一級の作家による13編。 (文庫裏表紙紹介文より)

収録作品は以下の通り。

 リチャード・マシスン   『 消えた少女 』

 ディーン・R・クーンツ  『 悪夢団(ナイトメア・ギャング) 』

 シオドア・L・トーマス   『 群体 』

 フリッツ・ライバー     『 歴戦の勇士 』

 キース・ロバーツ    『 ボールターのカナリア

 ジョン・W・キャンベル・ジュニア   『 影が行く 』

 フィリップ・K・ディック   『 探検隊帰る 』

 デーモン・ナイト     『 仮面(マスク) 』

 ロジャー・ゼラズニイ   『 吸血機伝説 』

 クラーク・アシュトン・スミス   『 ヨー・ヴォムビスの地下墓地 』

 ジャック・ヴァンス    『 五つの月が昇るとき 』

 アルフレッド・ベスター      『 ごきげん目盛り 』

 ブライアン・W・オールディス   『 唾の樹 』


時代小説以外で私が主に読んでいるジャンルはホラー、ミステリ・サスペンス、SFなのですが、常々これのジャンル分けには疑問を感じていたのですよね。それぞれが日常から逸脱した話を書く以上お互いのカバーする範囲が被るのは仕方のないことなんじゃないかと。で、本書はその疑問に対しての答え…というわけではないですが、ホラーとSFが極めて近接するジャンルであるということを示す好例です^^

ちなみに表題作はホラーファンにとってもSFファンにとっても忘れ難い名作 『 遊星からの物体X 』 の原作です^^

私がSF者だったのはかなり以前の話だし、最近のSF小説ってほとんど読んでないし、そんなヤツがSFについて語るのはどうだろうという気もするのですが、これを読んではつい語らずにはおられませんね。昔のSF小説ってやっぱり素晴らしいです。何十年経って読んでも全然古く感じない。もちろん実際にはそこで書かれていることがらは現在では全く的外れだったり、逆に既に実現されてしまったりもするのですが、それでも魅力を減じることがないのですよね。夢があるというのかなぁ。逆に現代のSF作品の方が嘘臭い感じがしてしまったりして。不便であっても可能性がある時代の方が夢があり、希望もあり、想像力の飛翔する範囲も広大なのではないかという気がしますね。って、すごい年寄り臭い意見ですが^^;

もしかすると、現代の若者が読んだ場合、一部を除いてアナクロでどうしようもない小説集だったりするのかもしれませんが、少なくとも昭和生まれのSF・ホラーファンには血沸き肉踊る感じの作品集です^^

ちなみに、私のお気に入りはやっぱり表題作である 『 影が行く 』 、他に 『 群体 』 、 『 唾の樹 』 といったところかなぁ。どうも不気味な異生物が出るのが好きらしいです^^;

(2月読了分)