『首断ち六地蔵』 霞 流一

首断ち六地蔵  霞 流一  (光文社文庫) ¥660  評価…★★★★☆ <あらすじ> 豪凡寺の六地蔵の首が何者かに持ち去られた。悪質なカルト集団を取り締まる特殊法人・寺社捜査局に勤める魚間岳士は、住職の風峰と調査に乗り出す。が、地蔵の首が見つかるたびに、そばには奇妙な死体が。邪悪な見立て殺人の謎を次々に解決していく魚間たちは、背後に新興宗教教祖の存在を突き止めるが!? 超絶技巧の推理合戦! 本格魂が炸裂する傑作ミステリ。  (文庫裏表紙紹介文より)
自称「獣道ミステリ」を書き続けるバカミス系本格の旗手・霞氏の作品ですが、今回は動物は出てません^^; (解説によれば「今回の動物は人間です」だそうですが) それもあってか、本作はバカミス感は比較的抑え目で、普通に良くできたミステリになってます。私は読み物として楽しむ派なので、謎解きにそんなに執着しないんですが、本書はもうトリックと謎解きシーン満載^^; 警部と主人公が代わるがわる間違った推理を披露しては失敗して、最後に名探偵役の風峰が決めるってパターンなんで最低でも通常の3倍は謎解きが楽しめます(笑) 設定も主人公が「寺社捜査局」という組織に所属しているということ以外は至ってマジメ。というか、脱会者を次々と殺していくカルト教団がいて、その殺人は常に成功するが名探偵により犯行は暴かれる。そして、犯人は全てその場で自決するというストーリーは実はかなり陰惨ですよね。ラストは更に陰惨かつ驚愕のラストだし。でも、それがおどろおどろした感じにならないのが霞氏の良さなんですね。そして、それぞれの事件のトリックや最後の全体的な仕掛けが不自然でなく成り立ってるのも、この独特な作風故といえるでしょう。 ※以下ネタバレ有り※ だって、最後になって突然、名探偵役が入れ替わって全ての前提が覆されるなんて、ふつうのミステリでは有り得ないし許されないよ?しかも、新名探偵はその最後の回になって初めて出てきた人で、途中まではあからさまに脇役扱いだったというのがまた凄い。反則というか裏技というか…。 名探偵役が実は全ての黒幕で真犯人でした…というのはないではないけど、本作の場合は「落語好きの貧乏坊主」っていう設定が良くて、好感をもってたのでかなりショックでした(T_T) しかも、金目当ての極悪カルト教団で、最初から稼ぐだけ稼いだら潰すつもりで、殺人を含めたシナリオが描かれてたってのがまたショック。数えてないけど死屍累々ですよ。20人近いかな。そんなわけでラストはさすがにシリアスに終わります。いつもの霞節を期待して読んだ場合、そこがちょっとツラい感じだけど面白い作品なのは確かです。