『実録・アメリカ超能力部隊』 ジョン・ロンスン

実録・アメリカ超能力部隊 ジョン・ロンスン / 村上 和久 訳 (文春文庫) ¥660  評価…★★★☆☆ <内容紹介> 超能力で敵を制圧し、敵地をスパイする特殊部隊。そんな計画がアメリカに実在した!ヴェトナムの悪夢に苦しむ軍人が夢見た「敵を武力で傷つけることのない愛と平和の軍隊」。軍上層部を動かした構想は、いかに変質し、何を生み出したのか。関係者の証言が明かす仰天の真実。アメリカの狂気と悲喜劇を暴くノンフィクション。  (文庫裏表紙紹介文)
帯にしつこいくらい「これは実話です」的なことが書いてあって、それが逆にトンデモ本風味を醸し出しているのですが、まぁ、どっちにとられてもいいっやってコンセプトなんでしょうね。表紙もちょっとふざけてる感じだし。私もまぁどっちでもいいかなぁと思って買いました^^; アメリカならやりかねないし、当事者はマジメでもおかしな話ってのも多々あるし、何より帯にある「視線だけで山羊を殺す男」に興味があって。(ちなみに原題はずばり 『The Men Who Stare at Goats (山羊を見つめる男たち)』 なんだとか) そんな感じで比較的先入観のない状態(のつもり)で読み始めると、冒頭から物凄く真摯に壁抜けに取り組む将軍が出てきて呆気にとられます。これだけ聞くと「いやー、いきなり笑かしてくれよんなぁー」って感じなんですが、実際に読むと全然そんな感じじゃなくて、私は意味がわからなくなって思わず読み返しましたよ。そのくだりを全部紹介したいんだけど長すぎるので、壁抜けに失敗した後の将軍の独白だけ引用します。 スタッブルバイン将軍は自分が何度やっても壁を通り抜けられないことに困惑していた。 それができないなんて、自分にどんな落ち度があるのだろう? 困惑するのはこっちですよ、将軍…。 と、まぁ、最初の方はずっとこんな感じで、心霊治療だの、動物の心臓をとめる訓練のための山羊実験室だの、ユリ・ゲラーだの(これは本人出演^^;)出てきて、それこそ困惑しながら読み進めていったのですが、途中から「ああ、やっぱりこれまんざらない話でもないなぁ」って感じがしてくるんですね。特に例のテロがらみの話とか出てくるとリアルだし。 それに、メインで語られる人(ジム・チャノン)の発想のそもそもの前提がベトナム戦争の悲劇を繰り返さないっていうところにあるんで、どんなトンチキをしてくれても全然笑えないんだな、これが。もちろん、ちょっと意図や方向性の違う人たちもいるけど、やはり、できるだけ平和的な戦闘手段(なんと矛盾した言葉だ…)を用いたいという気持ちは共通している感じがするし。戦争をしないという選択肢がないのが実にアメリカですけども。 常套句的で申し訳ないが、ベトナム戦争アメリカの精神に残した傷跡みたいなものを感じさせられちゃいましたよ。しかし、ほんとコイツらバカだよなとも思うがな。 タイトル通り超能力部隊の訓練や、遠隔視をする人々の話、サブリミナル実験、音楽による拷問(実際にイラク兵にアメリカのポピュラーソングを聴かせるということをやってたそうな…)等々、その筋の話が好きな人には興味深い話もたくさん出てきますが、どれも大して踏み込んだ話ではないです。 面白いことは面白かったけど、何と言うか疲れる本でした。どう読んでいいのか最後までよくわからなかったからかな…。