『百万のマルコ』 柳 広司

(7月読了分) 百万のマルコ 柳 広司 (創元推理文庫) ¥720  評価…★★★☆☆ <内容紹介> 黄金が溢れる島ジパングで、大冒険の末、黄金を捨てることで莫大な黄金を手に入れた――。囚人たちが退屈に苦しむジェノヴァの牢。新入り囚人〈百万のマルコ〉ことマルコ・ポーロは、彼らに不思議な物語を語りはじめる。いつも肝心なところが不可解なまま終わってしまう彼の物語。囚人たちは知恵を絞って真相を推理するのだが……。多彩な謎が詰まった、文庫オリジナル連作集。(文庫裏表紙紹介文より)
初めての柳広司作品です。 著者の作品は以前から気にはなっていたのですが、歴史上の人物や古典的名作中の人物を登場人物にしての本格ってのがどうもピンとこなくて、なかなか手にとれずにおりました。特に文庫になってる作品の主人公は、ダーウィンソクラテスシュリーマンといったメンバーだし、基礎知識を要求される読むのに疲れるようなのだったら嫌だなぁと思って、最近とみにアタマが衰えている私はずっと敬遠していたのです。 ところが本作の帯を見て、「あ、これならアリかも」と思いました。 「5分間ミステリや鯨統一郎が好きな方におすすめ」 。とにかく軽く読めるってことだよな、バカミスだったらもっと嬉しいけど…と思いつつ購入。 そして読了。はい、予想に違わず軽~いものでした。バカミスとまでは言わないけどミステリとは言いづらい頓知系の謎解きで、語られる事件も登場人物も何かほのぼのしてます。何かちょっと昔の作品(『半七捕物帖』とか)を読んでるような感覚がありますね。別に登場人物はマルコ・ポーロでなくても良いのではないかという気もしますが、まぁ、その方が設定がわかりやすいからかな。でも、他の作品においても有名人であるということがこの程度の道具立てとして使われているんだったら、ちょっとつまんないな。 でも、そうだったらあれほど同系統での作品集が出るとは思えないから、やっぱり柳氏の作品を正当に評価するためには他の作品にもチャレンジしてみないとなぁ。 正直、本書は食い足りない感じ。これはこれでいいんですけどね。アタマもココロも使いたくない時にはおすすめです^^; ちなみにタイトルの「百万」は日本語で言うところの「万三つ」(万に三つしか本当のことを言わないやつ=ほら吹き)的なものなのかな? 深町眞理子氏が解説で説明してくれているのですが、イタリア語がわからないのでいまひとつピンときませぬ…(T_T)