『眠る盃』 向田 邦子

眠る盃 向田 邦子 (講談社文庫) ¥490  評価…★★★☆☆ <内容紹介> 荒城の月」の「めぐる盃かげさして」の一節を「眠る盃」と覚えてしまった少女時代の回想に、戦前のサラリーマン家庭の暮しの手触りをいきいきと甦らせる表題作をはじめ、片々とした日常から鮮やかな人生を截りとる珠玉の随筆集。知的なユーモアと鋭い感性を内に包んだ温かな人柄が偲ばれるファン待望の書。(文庫裏表紙紹介文)
何か今、講談社の「泣ける本フェア」の対象作品になってるらしいので、へぇと思って便乗紹介^^; しかし、何だよ「泣ける本フェア」って。と、便乗していながら文句を言う。 それはともかく、つい最近の増刷分も変わらず字が小さいのはいいなぁ。やっぱり文庫の字は小さくなくっちゃね。最近の字の大きさと余白の広さは許しがたいですよ。おかげで読みたくても買えない本があるんですから。 …と、いきなり内容に全く関係のないことばかり書いてるのにはわけがあって、大きな声では言えないんですが、実は私そんなに好きじゃないんですよ、向田作品。いや、嫌いではなくて共感するところも評価するところも数多くあるんですが、そんなには感心しないというか…。出会ったのが完全にオトナになってからだったからかなぁ。こういう大抵の人に高い評価をされてる人のことを特に確固たる信念もなく、「いやー、どうもいまひとつ」って言うのって勇気がいるんですよね…。 で、口をつぐんでいたのですが、今回再読して何故そうなのかがちょっとわかった。 向田さんは私には真っ直ぐ過ぎ、健康的過ぎる。この本にも「学級委員をしていたので、つい他人の面倒を見てしまう」という話があるのだけど、元気で明るくて世話焼きの学級委員の邦子ちゃんがそのまま大人になった感じで、私はそういう人は苦手なんだ。ちなみに随筆のオチは全然違って負け犬的な感じになるんだけどね。 「女は、しっかりしている、などと言われないほうがいい。鶴がうまく折れなかったり、綿入れがうまく出来なかったりしてベソをかき、人に手伝ってもらったりするほうが可愛気があって結局は幸せなのではないか」というのは全く同感なのだが、それでも彼女と私には見えてる景色が違う気がするのだな。不思議なもんですね。 それと作品自体には関係ないところで気になったところをひとつ。 この本に収録されてる随筆は大体今から30年くらい前の話なんですが、見知らぬ読者とかからガンガン電話がかかってきて、それに平気で出てるのに凄くびっくりしました。今の感覚から言えば手紙が自宅に直接くるのもちょっと有り得ない感じなのに、電話って…。出るのにも驚きますが、見ず知らずの作家にいきなり電話するっていう感覚も全く理解できませんね。なんというか古き良き恐ろしき時代ですねぇ。私なんか自宅の電話やインターフォンにすらほとんど出ないけどな(電話は番号表示見て知ってる番号だけ、インターフォンは宅急便か郵便と明確に確認できる時と来客予定がある時だけ出る)。ああ、それは私の方に問題がありますか、そうですか、そうですよね。(今回ちょっとやさぐれ気味(-_-メ)