『復讐執行人』 大石 圭

(2005年7月読了分。感想などは当時のもの) 復讐執行人 大石 圭 (角川ホラー文庫)¥620  評価…★★★☆☆ <あらすじ> 香月は33歳の平凡なサラーリマン。しかし、分不相応なほどに美しく優しい妻とかわいい娘2人との生活は幸福そのもので、時に怖くなるほどだった。そう、香月は杞憂だと思いながら、いつも恐れずにはいられなかった。これは俺には過ぎた幸せだ、いつかこのしっぺ返しがくるのではないか?と。 そして、それは予想もしなかったような形で現実となった。 --------------- いつもながら心惹かれるタイトル(笑)をつける鬼畜系作家の新作。  ※以下ネタバレ有り
著者は自身あとがきで書いているように「鬼畜系犯罪を加害者の側から、加害者の主観で書く」(下線部筆者追記(^^;) 作家さんです。ほんとにこの方は何でこんなのばっかり書いてるんでしょう?そして、私は何でそんなのばっか読んでるんでしょう? それはさておき(笑)、今回は一応被害者側にも立って書いてるんですが、そこのところは正直どうでもいい感じです。わりとすぐに妻と娘が陵辱され殺されるシーンになり、おお古典的ー、西村寿行とか何か古きよき時代って感じとか思っちゃうんですが、オチは結構びっくり。そんな突飛なオチでいいんですか?と誰にともなく聞いてしまうくらい。ただ、この作品は基本的にリアリティがないんで、まぁ別にいいか、それもありかなと。 何がリアリティないかって、まず、ちょっと驚く程の美人でスタイル抜群、気立てはいいし家事万端もこなす、その上夫婦生活にも積極的、なーんて女房がいて、しかも結婚して8年も経つのにラブラブなんて男のどこが平凡だ?本人だって怖いくらい幸せだって言ってるじゃないか。日々そんなことを考えて暮らしてる人はありきたりなんかじゃありません。 大体その妻のキャラ設定自体に無理があると言いたいが、まぁそこは勘弁しときます。お話に美人はつきものなんで。あと、年齢・家族構成・職業等からすると生活レベルが高すぎる。どっちかの実家が金持ちというわけでもないのにおかしい。 そして、個人的に絶対許せないのがこの家の夕食のメニュー。殺された日は、5歳と6歳の娘にサーロインステーキ、夫婦はクリームソースをかけた舌平目のムニエル、サラダ、ワイン(赤、白)、殺される前日は5歳の娘にビーフシチューとオムライス、6歳の娘にエビフライとトンカツ、自分(妻)にはサラダ、夫にはホタテと赤貝の刺身と日本酒。……絶対ありえない!!! ちなみに2番目に殺された家族のその日の夕食(チンジャオロース、えびチリ、かに玉、ワンタンスープ)も相当不自然。 これらに比べれば、犯人が被害2家族を凄い偶然の積み重ねで見つけるご都合主義ぶりなんて全く気になりません。まぁ、元々その辺を問わない種類の小説ですし。 と、散々文句をつけながらも★3つなのは、私の鬼畜ゴコロは満足させてくれたからです。(おいおい…)いや、娯楽ものとして読む分には及第かなと。途中までは犯人を、犯人がわかってからはその真意を知りたくて一気に読めたし、その真意にも結構驚かされたし(そうだろうとは思いながら読んでたんだけどオチが面白かった)。そういう意味では私がこれまでに読んだ著者の作品(『湘南人肉医』『死者の体温』)より面白かったですね。