『槍持ち左五平の首』  佐藤 雅美

(2005年2月読了分。感想などは当時のもの)

槍持ち佐五平の首 佐藤 雅美 (文春文庫)¥580

 評価…★★★★☆

 

<あらすじ>

ご存知の通り江戸時代の大名は参勤交代という制度があった。決まったことを決まったようにやるだけではあるが、大人数の移動であるし同時期に多数の大名が動くことでもあり、事前の宿や人、物の調整は必須であった。そのため、各大名にはそういった事柄をとりしきる宿割役人という職が置かれていた。

絹川弥左衛門もそのひとりで、有能な彼は今年も相馬藩の参勤交代の段取りをつつがなく終えたところであった。そこに会津藩の宿割役人が大家を笠に着て宿を譲れと言ってくる。当初は拒否したもののお家のため忍びがたきを忍んで要求を飲んだ絹川であったが、それに対して相手は更に…。(表題作)

他、「小南一郎兵衛の不覚」「ヨフトホヘル」「重怨思の祐定」「身から出た錆」「見えは一日 恥は百日」「色でしくじりゃ井上様よ」「何故一言諌めクレザルヤ」の全8篇を収録


時代小説は池波正太郎藤沢周平宇江佐真理などの作品を中心として読んでいた私、自由な時間が増えた上に気分的な問題などから時代小説を集中して読むようになったもので、これらの作家さんの作品だけではまかなえなくなり、誰かいい人はいないものかと模索している折に何気なく買ったのがこの本でした。

著者の名は以前から目にしてはいたものの、お恥ずかしい話ですが、私は「さとう まさみ」で女性だと信じ込んでいて読む気にならずにいたのですね。(女性の時代小説が余り好きでないのです…)

で、買った時点ではまだ気付いておらず、読み終えて「面白いじゃん!文章も硬質だし!」と思って、著者紹介を見たら…「さとう まさよし」さんだったんですねー(>_<) しかも結構なお歳でいらっしゃる。何か凄い損した気分。その勢いでこの後、氏の作品を猛烈な勢いで買い集めることになるのだがそれはまた後の話。

この作品集は、主に「侍の悲哀」というところに力点をおいて書かれているもののとようです。現代の我々にとっては、「オー、サムラーイ、ハラキーリ!」とかいう紅毛人と同様に理解できない部分が多々ありますが、そこがまた面白いのですね。江戸幕府役人間でのいじめについて書いた「重怨思の祐定」なんか面白かったですね。いじめって日本人の持って生まれた性質みたいなもんなんだなーとか思って。

全体として、叙情に走らず叙述的なのでそこが嫌だという人もいるかと思いますが私はそこが好き。歳をとると感情って鬱陶しいものなのですよ。