『もののたはむれ』 松浦 寿輝

(2005年6月読了分。感想などは当時のもの) もののたはむれ  松浦 寿輝 (文春文庫) ¥560  評価…★★★★☆ <内容紹介> なにげない日常の延長線上に広がる、この世ならざる世界。そこへ迷い込んでしまった人々の途惑いと陶酔の物語は、夢とも現実ともつかぬまに展開していく。(文庫裏表紙紹介文より) 表題作他「胡蝶骨」「彗星考」「黄のはなの」など全14篇を収録。
著者は東大教授で芥川賞作家なんだそうです。なんか感じ悪い経歴とかつい思ってしまいますね(笑) 久々の純文学ですが、やはり文章がいいですね。「空気中に何か亜熱帯の果物の繊維がただよっているようで、それとも蒸れた花粉のようなものが充満している感じとでもいうのか、初夏の暮れがたには空気が液体のようにたゆたうこんな日があるのだ」とか、よくぞ表現して下さったって感じです。凄く実感できます。 お話は紹介文にもあるように夢とも現実ともつかない世界が描かれており、いわゆる純文学的リアリズムの世界では全然ないけどリアルという不思議な感じでなかなか良いです。 本の内容とはさほど関係ないのですが、『並木』という話の中で、主人公が「行きつけの店ができても主人や店員と顔馴染みになって個人的なお喋りに興じたり、ちょっとしたわがままを言って特別扱いしてもらったりするような関係になるのは煩わしく田舎臭いことのように思われた」というのに全く同感。いや、田舎の出身なんで「田舎臭いこと」とは思わないですが、心底煩わしいです。別にあんたと個人的な付き合いなんかしたくないんだよと思います。飲食店でやたら店主や従業員に話し掛ける人も好きじゃありませんね。 私は美容院が大嫌いなのですが、それも妙にパーソナルな話をしなきゃいけなくなるからです。美容院の場合はある程度パーソナルデータがあった方がいいのはわかるのですが、それでも凄く嫌。何でほとんど見ず知らずのあんたとそんな話をしなきゃいけないの?と思います。ちなみに今までで一番引いたのは「彼氏とお風呂一緒に入りますー?」という質問です。しかも質問者は男性。私を誘ってるとかなら別だが日常会話でそれはないだろう。