『GOTH』 乙 一

(2005年7月読了分。感想などは当時のもの)
GOTHGOTH~僕の章~  ◆ GOTH 夜の章 ¥460  ◆ GOTH 僕の章 ¥500   乙 一 (角川文庫)   評価…★★★★☆ <あらすじ>僕と森野は悲惨で聞いた瞬間に首をつりたくなるようなエピソードを常に求めていた。僕たちの感覚は普通とずれている。それを認識している僕と森野はそれぞれの方法で他人と関わらずに生活していたが、同じ傾向を持つふたりは時折会話を交わしていた。そんなある日、森野が連続殺人犯のものと思われる手帳を拾ってきた。そこにはまだ報道されていない被害者のことも克明に記されていた。僕らは犯行現場を見に行くことにする。(『暗黒系』)「僕」と森野が登場する連作短編集。『夜の章』『僕の章』各3編を収録。
読みやすくて面白かったです。こんな狭い範囲で事件が頻出するものか?という突っ込みについてはあとがきで著者自身がいいわけしているので良しとしましょう。(「現実を舞台にした小説と思われがちですが、作者の心の中ではおとぎ話のようなものでした」~『夜の章』あとがきより) 実際、読後感も残酷なおとぎ話を読んだみたいな感じですね。全体的に淡々として全てが浮世離れしてるような。でも、普通とずれている主人公ふたりの心情は同じ思いを抱く若者には結構リアルに共鳴できるかも。ただ、現実に森野が存在してたら確実にいじめに遭うとおもうけどね。 ちなみにこの本、ハードカバーの時は1冊だったのが何故か文庫化にあたって2分冊されています。薄っぺらいのに何でだよ!と最近の出版業界のやり口(字を大きくしたり無理やり2分冊にしたり)には怒りを禁じ得ませんが、この作品についてはそれなりに意味があるかも。 『夜の章』が森野(夜という名前なのです)中心、『僕の章』が「僕」中心の話で、前者から読み始めた方が人間関係もつかみやすくて読みやすいように思います。私の好みからすると『僕の章』の方の評価がかなり高いので、逆に読んだらちょっとがっかりしたかもしれませんが。(殺人鬼系の話がフィクション、ノンフィクション問わず好きなので) しかし、森野がかわいそうだ。