『みんな元気』 舞城 王太郎

みんな元気。 舞城 王太郎(新潮文庫)¥420  評価…★★★☆☆ <作品紹介> 山口家は私・枇杷と姉だけど同学年のゆり、2歳下弟の秀之、5歳下の妹の朝、そして両親の6人家族。ゆりは寝たまま浮かんだり朝は空を飛んだり父はそれを羨んだり…とみんなちょっと変わったところはあるし、ちょっとした感情の行き違いみたいなものはあるが基本的には仲のいい幸せな家族だ。 ところがある日、竜巻と共に空飛ぶ一家・杉山家が家ごと現われて朝を連れ去り、代わりに杉山家の次男・昭を置いてゆく。慌てて後を追う山口家の面々。そして…(表題作) 他、「Dead for Good」(サディストで自分を障害者にしたあげく南米でテロリストになった兼益と文通を続ける俺・哲朗の少し奇妙な生活)、「矢を止める五匹の梔鳥」(西暁町で繰り返される山火事と女子中学生殺し。僕・晴久は山火事は大好きだが殺人には興味はない。ところがある夜、奇妙な夢を見る。二つの事件に接続はあるのか?)の2作を収録。
ううううう、私、舞城氏かなり好きなんだけど今回ばかりはよくわからない…。 面白いことは面白いし魅力もあるんだよ。でも、今までみたいに無茶苦茶で何が何だかわかんないけど、でもいい!と言い切れるものがない。短編集だからなのかなぁ…。はっ、それとも私が歳をとったからか?Σ( ̄□ ̄ ; まぁ、それはそうと舞城氏の新潮文庫の帯作ってる人はいつも上手いなぁ。作中の台詞ではあるけど、「家族なんて入れ替え可能だっつうの」ときて「人生は愛と選択に満ちている」で、どーんだよ。ぐっとくるよね(笑) 『阿修羅ガール』の時も題名と帯の惹句「女子高生アイコ、魔界で恋に破れる」にやられちゃったからね。帯って賛否あるようだけど、私は結構本をジャケ買い(笑)する人なのであった方がいいかも。 一応個々についてコメントしとこう。 表題作は時制が入り乱れたり不思議な設定がやたらあったりと短い中に仕掛けがあり過ぎというか…。その混乱がいいという話もあるけど。そして、混沌としてるのに何だかほのぼのしててラストは前向きっていうのもいい。『阿修羅ガール』にちょっと通じるかも。 あと、セックスがらみの話がムダに多過ぎる。基本的にはセクシャルな話が好きな私がそう思うのだからわざとなのかもしれないけど。あ、イトウタカコのくだりでの「女の子が性器からぺろっとめくられる(めくれそう、裏返せそう)」というイメージは好きだな。確かにめくれそうな気がするよね。そういや、『B.B.joker (4)』で、指のさか剥けから全身を剥いていったら…っていうネタがあったなぁ。 『Dead for Good』 が私には一番しっくりくる話のような気がする。いや、登場人物は皆かなり変なんだけどね。でも、何か基本的にはみんないい人な感じがするのと、哲朗が考える神だの死だの生だのについての話がいい。しかし、哲朗くんは障害もたくさんあって、生活力も充分とは言えないのに何故あんなにモテるのかしらね? 『矢を止める五匹の梔鳥』 …これが一番わかんないや。コメント不能。方言の会話が何かいいってくらいだなぁ。