『淫らな罰』 岩井 志麻子

淫らな罰 岩井 志麻子(光文社文庫)¥500  評価…★★★☆☆ <作品紹介> 作家の月島美百合はある賞で優秀賞をとってデビューし、その作品がドラマ化等された上に、そこそこの容姿だったためメデイアへの露出もうまく行き、一般への知名度も高く、作家としてはとんとん拍子で成功しているといえる状況にいた。そんな彼女を唯一悩ませているのはネット上での悪意ある書き込みだった。彼女はそれによくある匿名による中傷とは違う悪意を感じ、密かに怯えていた。何故ならば、その書き込みは間違いなく同じ賞の大賞をとってデビューした晴海鷹夫によるものだったからだ。彼と美百合は直接に何があったというわけではないのだが、初対面の時から何となく厭な雰囲気があり、更に美百合にはその後に夢とも現ともつかないある厭な記憶があったのだ。そんなある日、鷹夫が失踪したという話が飛び込んできた。その話以降、例の書き込みも途絶えている。得たいの知れない不安に襲われる美百合。そして、その彼女のところに鷹夫が現れた。(表題作) 他、「日向の影」「暗かった帰り道」「隣の花は黒い」「ひとり奏でる恋の歌」の全5編を収録。 ※以下ネタバレ有り
(5月読了分) うーん、面白くないわけではないんだけど何か全てがどっかで読んだような話なんだよな。本人の話の焼き直しっていうか。それはそれで有りと思うけど新味とか何らかのプラスがない場合は無しだよな。性愛と平凡な日常に潜む悪意と狂気…みたいのを描いてると似てくるんでしょうか? 志麻子さん大好きなんで、受賞作が一番良かったとか言われるような作家にはなってほしくないなぁと思うんですがね…。正直色ボケなんじゃねーか?とか思っちゃうよなぁ…。私、エロは好きだけど恋愛は嫌いなんで、志麻子さんのあのテの作品は微妙なんだよね。 ちなみに「日向の影」は全て計算ずくで優秀な由利恵とその殆ど逆である智美の高校生のときからの不思議な関係について。女子にとっては、あー、あるよねーって感じの話なんだけど、智美のヒモ的彼氏の雅典が侮れない。 「暗かった帰り道」…不釣合いなようなのにいつも一緒に行動している主婦三人組。実はその共通点は同じ刑務所にいたこと。その過去を隠したいかずみと由紀子は佐和子のいいなりになっているが、やがて…。これ、そっくりの設定の話があったよねぇ。佐和子がかわいそうとしか思えないんだけど、現実には私は他のふたりのタイプなんだよな(笑) 「隣の花は黒い」…いわゆる金棒引きで人の中心になろうとする性癖のある陽子。若干迷惑ではあるが悪気はないので周りの人にはそこそこ好かれていたし、本人も自分の行動に疑問をもっていなかった。しかし、人には意外な過去や事情があるもので…。まぁ、ベタな話ですな。 「ひとり奏でる恋の歌」…事情のある女性オーナーが事情のある女性を集めて問題のある客に周旋するデートクラブ…みたいな話。ちょっと『偽偽満州』?それはともかく、元芸能人とかいうネタが同じ作品集の中にふたつあるのはどうかなぁ…。