クワイエットルームにようこそ』 松尾 スズキ  

クワイエットルームにようこそ (文春文庫)

◆ クワイエットルームにようこそ (文春文庫) 松尾 スズキ ¥470

 評価…★★★★★

<あらすじ>
28歳バツイチ芸能系ライターの私・明日香は気づいたらとんでもなく馬鹿げた見世物に立っていた。何でこんなことをと思いつつも覚悟を決めようとした時、どうも周囲の状況がおかしいことに気付く。
あれ、ここ、病院…? これ、夢…?
そして目覚めた私は、どうやら自分が相当にまずい状態にあるらしいことを理解する。恋人とのケンカの後、酒をのみながらかじった向精神薬がまずかったらしい。薬の過剰摂取で死にかけた私は精神病院の閉鎖病棟に入れられてしまったのだ。それも医療保護入院で。つまり、どうあがいても自分の意思では出られないってことだ。

最初のうちは、仕事のことも気になるし、規則だらけの院内の生活にもなじめないし等々でじだばたしていた明日香だが、いくら騒いでも仕方がないことを悟ったと共に、恋人の態度などから自分が運ばれてきた時の状況も徐々に察し始め、当面はおとなしくしておくことにする。そして、そこでそれぞれの問題を抱えた女性患者たちと出逢い、入院生活を過ごしていくうちに色々なことがわかってくる。過去から現在にわたる自分自身の問題も、恋人の気持ちも。
そして明日香は…。



素晴らしい作品です。久しぶりに心から感動しました。
詳細を述べると私の病巣が明らかになっちゃうので割愛しますが(笑)、特に自分自身や人生に問題を抱えてない人でも、それはそれで充分に面白く読めると思います。重い内容が書かれていても、全体的に明るく軽い印象で読後感も爽快です。帯や紹介にも 『 絶望と再生の物語 』 とあるように、明日香が確実に癒され成長しているからでしょうね。それも自分の力で、自分と向き合い、再生へと向かっているところがまた素晴らしい。

それにしても、著者の小説は初めて読んだ( 他の著作は結構読んでる )のですが、この人、物凄く上手いですね。 私は通常はそういう感想は余り持たない( そういう観点で読まない )のですが、今回ばかりはほんとに唸りました。若い女性の一人称での、それも心に関わる物語をどうしてこんなにまで上手く書けるんでしょうか? 松尾スズキ実は女性説 」 を広めたくなるくらいです。感服致しました。

映画が今秋に公開されるとのことですが、脚本・監督もご本人だし、配役を見ても凄く期待できそうです( 内田有紀はちょっと線が太い気がするけど悪くない。クドカンが鉄ちゃんってのはハマり過ぎ! )。小説冒頭のシーンを映画でどう表現するのか凄く楽しみです^^


おっと、気付けば日付はもう9月ですね(@_@;)   これは8/31読了分です。