『 絶望ブランコ 』 大石 圭

絶望ブランコ (光文社文庫) ◆ 絶望ブランコ  大石 圭 ( 光文社文庫 ) \680 評価…★☆☆☆☆ <作品紹介> 空中ブランコ乗りの母を、ある日襲った転落事故。それをきっかけに、仲睦まじかった姉弟は離ればなれになってしまう。根無し草の父に育てられ、社会の底辺を這いずるように生きる弟。無関心で冷淡な母と暮らす中、視力を失い、結婚相手にも捨てられた姉。姉弟が再び一緒に暮らし始めたとき、さらなる悲劇が幕を開けるのだった…。優しくも残酷な究極の愛の物語。 ( 文庫裏表紙紹介文 )
あー、正しくヤマ無しオチ無し意味無しな作品だな。何だこりゃ。文学作品というならこういう構成とラストも有りだろうけど本作は文学では有り得ないからなぁ。エンタメにもなり損ねているけど。( ←単に面白くないからね ) サーカス出身の盲目の娼婦の姉と連続殺人鬼の弟( 双方極めて美形 )という奇想天外とも言える設定でこれだけつまんねえって逆に凄いね。 ※以下ネタバレ有り※ 異父姉弟であるふたりの間に妙な感情が漂っていてというベタベタな設定はまぁいいんだけど、姉が娼婦であることを知っていた弟が殺し屋の仕事をしくじって追い詰められた時に思いつめて姉を呼び、姉は部屋に来た瞬間に弟だと気付き、そして、そのままなるようになるという展開の意外性の無さに愕然。そして、そのシーン全般に愛もエロも感じられないのに驚愕。 まぁ、その後に死んだりせず今までと変わらぬ穏やかな日常を過ごし、ふたり仲良く幼少期を過ごしたサーカスの興行を見に行ってしみじみ幸せを感じるというシーンで終わるのはやや意外性かな。物語としての良し悪しは別として、何かほのぼのしてちょっとよかった(^_^;) 遠からず訪れるであろう不幸や破綻を暗示してはいるようだけど、元々不安定極まりない上に行く末は不幸になって当然という生活を送っていたわけだから別に気にはならないんだよね。職業殺人者とそれを知っていてその収入に依存して生活している人物が幸せな生活を送るなんて許されるべきことではないから、不幸になって当然だろうと思うしさ。ただ、そんなふたりであっても心から幸せって感じることができたのはよかったねぇと思うのです。 しかし、元々大石圭に多くを求めてはないんだけど、話は面白くないわエロもグロもないわじゃ得られるものが何もないよねぇ。残るのはいつもの細部の不自然さに対する苛立ちだけですよ。何を思ってこんなの書いちゃって、そして出版を許しちゃったのかしら。まぁ、物凄いサクサク読めましたけどね。でも、最後まで読み続けられたのは決してリーダビリティがあるからではなく、一体どこで面白くなるんだろうか、せめて大石圭っぽい鬼畜展開があるよなという期待があったからですけどね。 今回は比較的マシではあったが、家庭の夕食メニューの異常な豪華さと品数の多さは相変わらずだなぁ。前よりメニューが洗練されているのは作者がいいもん食うようになったからかな( 笑 ) でも、「 社会の底辺を這いずるように生き 」できた人たちにはふさわしくないけどねぇ。まぁ、それは生活全般がそうだけど。あと、周囲の人が無意味に不自然なまでに親切なのも何か違う気がする。 あ、エロがないとは言ったけど性交シーンはありますよ。お姉さんの職業柄外せませんものね(笑) ただ全く何にも感じないんですよね。官能的ではもちろんないし、下品なエロさもない。結局全てはリアリティがないというのに尽きるのだろうか。全編これ官能シーンといった感じのデビュー作( 何と文藝賞佳作! 文学出でエンタメに流れた珍しいタイプ )は悪くはなかったんだけど、あれは設定が非現実的だからだろうな。あと文学だとリアリティの無さと非現実感がいい方に作用することもあるし。 あと今回若い女性のファッションにかなり触れているのだが、それは不自然ながらも、ああ、結構勉強したのね、もしくはアドバイザーがいるのねと思わされる程度にはなってるんだけど、「 タンクトップ 」が頻出するとこがちょっと…苦笑って感じでした。しかも、「 木綿のタンクトップ 」って。さらに同じようなのをたくさん持ってるって。私は所有したことはもちろんないし、そんな商品見たことすらないぞ。あと、麻のワンピが頻出するとこも微妙。昔は夏と言えば麻だったかもしれんが、今はジャケットとかスーツで麻混があるかないかってとこでしょ。若いコ向けのお店ではそうそう見ないぞ。 あ、盲導犬だけの描写だけはちょっとよかった。作者は犬好きなのかな。私が犬好きなせいもあるかもしれないけどかわいかった^^