『 精神科医は腹の底で何を考えているか 』 春日 武彦

◆ 精神科医は腹の底で何を考えているか  春日 武彦 (幻冬舎新書) \798  評価…★★★★☆ <作品紹介> 精神科医とはどんな人たちなんだろうか。人の心を治療する医者だから、人の心の闇を知り精神の歪みにも精通し、人格的にも高い成長を遂げているはず。だが本当はどうなのか。テレビに出てくるあの人はあやしくないか。臨床体験豊富で熟練の精神科医である著者が、エクソシスト医師、無責任医師、赤ひげ医師、新興宗教の教祖的医師、タレント医師、世間知らず医師などなど累計100名を、裏も表も建前も本音もすべてリアルに描き尽くす。 ( 新書裏表紙紹介文 ) -------------------------------------------- 紹介文や帯にある 「 100人の精神科医 というのは全てが実在の医師というわけではありません。著者も含めた実在の医師たちから、ある部分( 性格や行動パターンなど ) だけを抜き出して、その例=ひとりの医師という風にみなしての 「 100人の精神科医 なのです。 読んだ限りでは、実在する特定の人物について語っていることの方が少なく、大半が著者の分身では?と思われますが、実例であることは間違いないですね(^_^;) そんな感じなので、いわゆる実録モノとかインタビュー的なモノを期待して読むと完全に裏切られますが、書名から想定される内容には充分適っており、非常に面白い本です。
…というわけで、大変面白かったのですが、裏切られた感は否めないですねー。私は新書は買わない主義 ( とか言って結構買ってますけど… )なのですが、敬愛する春日先生の著作で、しかも、かなり露悪的なところのある先生が、自分以外の医師にまで言及するなんて読まないわけにはいかない!と思ってやむを得ず購入したのに、実在の医師じゃないんじゃねぇ…(T_T) まぁ、前書きであっさり種明かしされてるので、読み始めて裏切られた!ってのじゃないのが救いですが、本文中で例が挙がるたびにいちいち一人の医師としてカウントするシステム( 文章のあとに「 Dr.1-○○な医師 」という風に小カッコ付き太字文章がつく )が鬱陶しくて仕方がなかったです。読みにくいっつーの(-_-#) こんな変な形式にせずにフツーに書いてくれてた方がどんなによかったか。具体例を挙げてタイプを整理していくのは悪くないと思うけど、本書のやり方は頂けないですね。せめて、文章のあとにナンバリングだけして、巻末に内容付きで表示するとかしてくれればよかったのに。 っつーか、100人の精神科医って言うのを出してくる必要性がそもそもわからん。まぁ、それにひっかかって買ったわけだから販促効果は確かにあったけどね(-"-;) でも、内容が優れている作品に変な仕掛けをすると逆に価値が下がるから、やめてほしいなぁ…。 まぁ、こうやってぶつぶつ文句を言い、形式によるマイナスを評価をしながらも、内容は星四つつけざるを得ないというのが春日先生の素晴らしさ(笑) 文章が上手いのは言うまでもないですが、本書では投薬や治療方法などについてかなり突っ込んで書かれており、精神医学について興味がある方には非常に面白い本だと思います。病気自体や患者とその家族についての説明や考察も極めて興味深いですし、著者自身に対する自虐的にも見える分析も相変わらずで面白いです。 感心したり共鳴したりした部分をいくつか具体的に紹介したいのですが、そうすると私の病理が明らかになってしまうので割愛します。 …って言うのは一部本気でもあるのですけど、多過ぎて紹介しきれないというのが真実かなf^_^;)  精神疾患に関わる状況だけに限定されない、日常の人間関係や社会生活にも通じるような分析が結構あり、色々と考えさせられます。 本書を読んで、そういう部分に興味を持たれた方には、 同著者の 『 幸福論 』 や 『 不幸になりたがる人たち 』 がお勧めですね。 む、こうしてみると私が主義に反して新書を買うのは春日先生のせいであることが多いようだな…(-"-;)