青は藍より出でて藍より青し

表題のことわざは、弟子が師より優れているという意味で使われますが、藍色は藍色で求められているわけだから一概に優劣は決められないんじゃないかなぁと私は思うのですが、どんなもんですかね? 染物について何も知らないで言ってるだけですけど。 …という前フリで、何が言いたいかというとヒルとキングの話なのですね、これが。 まぁ、師弟関係というわけではないので、そもそも前提が違うし、必ずしもヒルの方が優れているというわけではないのですが。 てゆーか、お前、こないだは 「 キングの圧倒的な力には及ばない 」とか言ってなかったか? という話もあるのですが。
いや、先日『 20世紀の幽霊たち 』 を読んだ後に、思い立って久々にキング作品を幾つか読み返してみていたのですが、何だか自分の抱いていたキング作品のイメージと随分違っていて驚いたんですよね。 もちろん面白いのは面白いんです。文句のつけようもなく面白い。今も昔も圧倒的なリーダビリティです。が、しかし、そこかしこに違和感があるのです。はっきり言えば、思っていた以上に低俗というか野卑というか、そんな感じが全体に漂っているように思われるのです。ところによってはちょっと嫌悪感を感じるようなところすらある。 大好きなキング御大なのに、そんなバカな。何故だ? 文学系とは違ってジャンル小説だし、そんなに自分の感覚が変わったとは思えないのだけど、それに今までだってキング作品何度も読み返してたよね? …と思ったのですが、考えてみると今回読み返したような古い作品群を読むのは本当に久しぶり ( 最低でも10年ぶり? ) だったんですね。 私は基本的に再読派なので、何度読んでも面白いキング作品は当然過去何度も読み返しているのに、どうもここら辺の作品群は無意識に避けていた節があるのです。キングとは言え、古い作品は完成度が低いかったりするから余り再読欲を感じないんだろうと思っていたけど、やはり当時からちょっと違和感を感じていたのかなぁ…。 そんなわけで、こないだの私はヒル作品をちょっと不当に低く評価していたように思います。リーダビリティという点では確かに劣るかもしれませんが、文章や構成はヒルの方が圧倒的に上手いですね ( ※あくまでも初期作品との比較です。つまり潜在能力の比較。今現在のキングであればヒルにひけは取らないけど、ヒルが同じくらい経験を積んだらどうか?という話です )。 まぁ、発表媒体やジャンルの差もあるし、そう単純に比較するわけにはいかないとは思いますがね。そして、それだけ嫌なところがあっても気付かせない、あるいは看過させるだけの力を持つキング作品は、やはり素晴らしいと思います。 ちなみに該当する作品は今のところ 『 呪われた町 』、『 最後の抵抗 』、『 ペット・セマタリー 』 などです。これ以上はちょっと読む気を失ってます(T_T) あ、でも、『最後の抵抗 』はキング作品には珍しくスーパーナチュラル要素も奇妙な設定もサイコ要素もない ( 最終的にはちょっとヤバい感じになってくるけど、私の感覚で言うとこの主人公は最後まで正常だったと思う ) 作品で、これには改めてちょっと感心しました。 扶桑社ミステリーのキング作品は駄作が多いと言われますが、確かに妙な作品がいっぱい入った短編集も含めて、何というか毛色が変わってて面白いのは面白いです。 キングの違う一面を見る思いで私は結構好きです^^;