『 黒鷺死体宅配便 』(2)、(3) 山崎 峰水(原作:大塚 英志)

◆ 黒鷺死体宅配便 2   (角川ホラー文庫) \499  評価…★★★☆☆ <作品紹介> 死体の声を聞き、その依頼に応えて報酬を得る黒鷺死体宅配便。手違いから死刑囚の死体を手に入れた唐津。その死体の望みは、殺してしまった一家の、生き残った子供に会って謝ること―。そんなとき葬儀会社の経営者、楡からの電話が。死体は楡が引き取るはずのものだったのだ。社会奉仕として、裁かれ、罪を償った死刑受刑者の葬儀を行うのだという楡は、黒鷺死体宅配便との合併を提案する。その真の目的とは―。 ( 文庫裏表紙紹介文 ) ◆ 黒鷺死体宅配便3  (角川ホラー文庫) \499  評価…★★★☆☆ <作品紹介> 「頼む、カラダを戻してくれ」……死体からしか聞こえないはずの声が、死ぬ間際のホームレスから聞こえてきた。壊死した腎臓が病院で摘出され、ホームレスは息を引き取った。超えはどうやらこの腎臓から聞こえてきたらしい。死体の願いを叶える「黒鷺死体宅急便」のメンバーは、腎臓の本来の持ち主を追ううち、思いがけない事実に突き当たることに……。( 文庫裏紹介文より ) ---------------------------------------- それぞれに死体がらみの現実的な能力と超自然的な能力を持つ5人の若者が、ある事件で手に入れたちょとした金を元手に自分たちの才能を生かせる会社を設立した。それが 「 黒鷺死体宅配便 」 で、ダウジング能力のある沼田が死体を見つけ、イタコ能力のある唐津がその声を聞き、望みがあれば報酬とひきかえに叶えるというのが基本コンセプトの会社だ。 …と言うのが基本の設定のシリーズです。
3巻を買ってから、2巻を紹介するつもりで放置していたことに気付いたので、今回まとめて紹介します f^_^;) あ、1巻は紹介済です。 ※以下ネタバレ有り※ 1巻は設立前後の事件を一話完結で描いていますが、2巻は一冊がワンテーマで描かれており、ひとつの長編と言っても良いですね。そして、コミカルだった前作に比べて、これは重い話です。まぁ、作風はさほど変わらないし設定は荒唐無稽ですから、採り上げられているテーマについて深く考えない人には同様のエンタテイメントとして楽しく読めるかもしれないですが、私は結構暗い気持ちになりましたね。 ちなみに描かれているのは、犯罪被害者とその家族たちの事件後の生活や心情がメインですが、犯罪加害者の家族についても少々触れられています。彼らのいずれに対しても、国や司法がいかに冷たく無関心であるか、マスコミや周囲の人々が無責任で残酷であるか等々の様々な問題があり、私は非常に関心を持っているテーマで、訴えたいことは多々あるのですが、きちんと語れる知識と能力をまだ持ちませんので、ここでは詳細は割愛します。 で、本書においてはエンタイテイメント性が期待されますので、被害者遺族の復讐したいという気持ちに応えるため死刑になった犯人の遺体を反魂の術で蘇らせ、それを遺族の手によって改めて制裁するという商売をやる会社という極端な連中が現れ、そこに黒鷺死体宅配便の代表であるクール・ビューティー・佐々木の過去の話とそれに関わる現在の犯罪なども絡み、その他の要素がこれでもかと出てきてかなり凄い展開になってきます。まぁ、面白いことは面白いんですけど、ちょっとやり過ぎって感じですね。解決されないことも多いし。( 特に、自己保身のためだけに自分の家族を殺し死体を損壊までした男に、だまされて結婚までしてしまった佐々木のお姉さんの今後はどうなってしまうの?(T_T) ) 後に続くのかもしれないけど。この復讐の是非、死刑の是非なども難しい問題でありますね。しかし、佐々木さんの過去は壮絶過ぎるよなぁ…。 あ、本筋とは余り関係ないですが、1巻では 「 コイツいらないんじゃない? 」とか 「 何のためにいるの ? 」的な存在だったチャネラー谷田くんが2巻では結構活躍してるのも見所と言えば見所かも^^; 3巻は前巻の内容を全くひきずらない形で、新しい話が展開されます。新登場のヤクザにしか見えない元殺人課の刑事で現在新宿区役所福祉課職員の笹山さんがいい味出してます^^; ( 他の大塚作品にも出てるらしいけど、私は未読 ) 本書で扱われているのは、闇の臓器売買や不法入国者や、戦時下にある国々の話、自殺サイトから更に発展した悪質な闇サイトと問題提起しようと思えばいくらでもできるテーマですが、深くは踏み込まず、さらっと描いています。もう一押しして欲しいような気もするんだけど、表現様式や発表媒体からするとこの程度が適切なのかなぁ。でも、好みの問題以外にも社会的責任みたいなのを考えざるを得ない今日このごろなんですよねぇ。 フィクション・ノンフィクション関わらず死体や殺人の話が大好きな人間としては、そういう表現がされているメディアが犯罪を誘発するというような理論は本来は相手にもしたくないのですが、最近の世情を見るにつけて、対象にする受け手の年齢によっては、やはり色々なことを考慮しなければいけないのかなという気がしてきてはいるんですね。古いタイプの日本人である私としては 「 言わぬが花 」 的な志向もあり、正しいに決まってることや悪いと決まってることをわざわざ言う必要はないだろうという思いがあったのですが、行間とか言外のことを読みとる訓練がなされてない人々が増殖してる( むしろ、こちらが一般的? ) 現代社会においては、わかりやすく提示しないといけないのかなと。何というか色々難しい世の中ですねぇ…。 しかし、1巻からこの服装の好みはどうなんだろうと思っていた佐々木さんですが、本巻においては明白に露出狂気味になってますね(*_*) 洋服のセンスもかなり変だけど、作画者の絵が下手な上に好みの問題だか何だかで中年女としか思えないぼってりした体型で、そんな格好されてもなぁという気がしますねぇ(-"-;)  無意味かつ不自然なノーブラ強調 ( つまり、服の上から見える( 場合によっては見えるはずもない )突起をわざわざ描いている ) もなんだかなぁって感じなんですけど、これは評判いいんだろうか? しかし、この人、あいかわらず中途半端に絵が下手だよな…。いや、結構好きな絵柄だし、いわゆる下手っていうとはちょっと違うんだけど…。生き生きとした表情を描く能力とデッサン力に欠けるというのが正確かな?