『 死の船荷 』 (2004・西)

◆ DRIFT ドリフト ( 2004年・スペイン )

 監督:ポウ・フレイクサス

 出演:シルク、ユナ・ウガルデ、アドリア・コラードアンドレ・ガートルディックス 他

評価…★★★☆☆

<あらすじ>

バカンスでセネガルを訪れたジャーナリストのサラは、地元のダイビングツアーに参加する。メンバーは地元の青年イヴァンとエドガーと、旅行者である妊婦・タイスとその夫・ビクターで、船長は何とまだ少年だ。少々はしゃぎ過ぎな感じの若者2人に、臨月間近な妊婦と神経質そうな夫ビクター、経験豊富らしいとは言え少年の船長に古い船…と、ちょっと不安は感じるがツアーはまずまず楽しく始まった。

ところが、沖に出た彼らはいきなり漂流している死体を発見してしまう。とりあえずボートへ収容してみると死体には明らかに暴力行為を受けた跡がある。どうも殺して投げ込まれたようだ。事件性を感じ不安に駆られていたところに、ちょっとした事で動揺したビクターが、なんと信号弾を発射してしまい、それが燃料タンクに当たりボートは炎上する。

岸まで6時間はかかるという沖合いに投げ出され、泳ぐか救出の船が通るのを待つしかないと聞き、妊婦のタイスが胎児が死ぬと騒ぎ出す。そこに折りよく船影が。狂喜して助けを求めながら、その船に向かって泳いでいった6人だが、その目の前に信じられない光景が展開される。その船の甲板で人が殺されて海に投げ込まれたのだ。先ほどの死体もこの船の仕業である可能性が高い。しかし、タイスのためにはこのまま海にいるわけにもいかない。彼らは、とりあえず密かにその船に乗り込むことを決意する。

彼らはこの危機を乗り切れるのか? そして、この船に乗っているのは何者なのか?


面白くないわけではないけど、予告篇で想像したような作品では全くなかったなぁ。これだからアルバトロスは…(-"-;)  ほんと、あの予告篇作ってる人たちの顔が見たい ( 凄く誉めてます^^; )。

※以下ネタバレ有り※

これを見てて、脳裏によぎったのは 「 自業自得 」 とか 「 勧善懲悪 」 って言葉ですね^^; まぁ、それに該当してない人もいないではないけど、いわゆる勧善懲悪モノって正義の名の下には何でもアリアリだったりするじゃないですか^^; だから、まぁ、いいんじゃない?って感じ。

短絡的な行動をとって一同を窮地に陥れた夫婦者の夫と、その窮地における選択肢を狭めた妻 ( 今にも生まれそうな腹で海に出るなよ…(-"-;) が敵に殺され、敵方はほぼ全滅ですからね。

まぁ、個人的な意見を言わせてもらえば、金銭目的で違法なことをしてるかもしれないけど、それを踏まえてもなお、ダイビングツアーの連中よりはいかがわしい船 ( おそらく法に触れるような動物の密輸が業務 )の船長の方によっぽど感情移入できたけどね。彼は常識も良識も人情もある人だよ。嗜虐癖だか殺人淫楽症だかがある男以外の船員も至極真っ当な感じだったし。

あ、そういえば、あらすじに 「 この船に乗っているのは何者なのか? 」 とか勢いで書いちゃったけど、驚くべきことに全く明らかにはなりません。目的は前述の通り密輸なんだろうけど、これも推定レベル。この事実だけ取っても実にスバラシイ作品だという事がわかりますな(-_-)

ダイビング側は、前述の非常識な夫婦と、自己中心的な若者 ( まぁ、これは強ち責められるべきでもないと思うが )に、意味不明なな正義感らしきものを振りかざして非常識な行動をとる女と、もう最悪です。覗き趣味のある少年については判断材料が少ないのでよくわからんが、とりあえず彼のおかげで冒頭でサラのヌードは見られた。まぁ、別に見なくても良かったけど。でも、こいつらは夫婦者以外は全員助かるんですねぇ。それもほとんど無傷で。罪もない若者をよってたかって殴り殺したくせに。でも、イイモン側だからその点はなかったことになってるんだよね。こいつらに殺された若者は何か物語有り気だったのに、全く無意味で理不尽な殺され方をして、しかも、命を落とした真実の経緯さえ仲間うちに伝わっていないというのに。悪しき側に属するものは全て悪だということで顧みられないわけですねー。全く神とは恐ろしい存在であります ( 別にそんな話じゃないです )。

まあ、とにかく、そんな感じでお話としての面白さも映画としての面白さも非常に低いのですが、主人公側が驚くほど非常識な連中ばかりなので、それが逆に面白かったですね。もう言動全てが有り得ないって感じで、ムカつくのを通り越しちゃいました^^;

唯一彼らに感心したのは、死体が動いたように見えてびっくりしたというチキン野郎という呼称も勿体ないような小心さから、非常識にもボートの中で( それも他人のボートだ )信号弾を撃ったことによって、全員を窮地に陥れたビクターを誰一人として責めなかったことですね。まさか、誰も気付かなかったということはあるまいに。いや、ほんと素晴らしいですわ。私だったら、あれが他人でも自分の配偶者でも、恐ろしい勢いで口汚く罵るね。あ、もしや、余りにも驚天動地な振る舞いだったので、全員が該当する部分の記憶を失ったんだろうか?(笑)

あと、どうでもいいことなんですけど、檻に入れられて海中に沈められたサラにイヴァンが口移しで息を吹き込むのですが、あれは大半が漏れてて全然意味ないと思うんですけど。だって、移した後にサラはすぐ口開けてんだもん。あれは単なるキスですよ。あれでは呼吸の助けにならず、むしろ苦しいと思います。それが一回なら見過ごすのだけど、しきりにやるので非常にイラつきました。かなり長時間沈められてるので言い訳として必要だと思ったのかもしれないけど、今さらそんなところに頓着しませんよ(-_-)

ちなみに邦題の 『 DRIFT 』 はおそらく 「 漂流 」 の意味なんでしょうが、本作では漂流してないし、何より日本人の多くはドリフトって言うと車のドリフト走行( タイヤをスリップさせながら走るヤツ )の方をイメージすると思うんですが、何故こんな題名にしたのでしょうか? 

なので、今回の題名は原題 『 DEADLY CARGO 』 より和訳。我ながらセンスねぇ(-"-;)

でも、いいの。B級ホラーやサスペンスはこういうベタな題名の方がそそるんだから( 私だけか?(^^;)

ちなみに私は、前述のサラが檻に入れられて海中に沈められるシーンを見ながら、「 おお! まさに 『 DEADLY CARGO 』! 」と、ちょっと喜んじゃいましたので、この原題は結構いいと思ってます^^;  DVDパッケージもそのシーンをイメージしてるみたいだし、邦題もその路線にすればよかったのに。

(3月末鑑賞分)