『 蝶のゆくえ 』 橋本 治

◆ 蝶のゆくえ  橋本 治 (集英社文庫) ¥600 評価…★★★☆☆ <作品紹介> 10代で出産離婚し23歳で再婚した美加だが、新しい夫は息子にまったく無関心だった。彼女もそんな夫に同調し、いつしか虐待が始まる……。突然、夫の両親と同居することになった37歳主婦のいらだち。定年退職した直後の夫をオヤジ狩でなぶり殺された58歳主婦の孤独。現代に生きる様々な年齢の普通の女たちを鋭く描いた第18回柴田錬三郎賞受賞の傑作短編集。   (文庫裏表紙紹介文)
何だか最近、自分の中で懐かしの作家フェアでもやってるんだろうかというぐらい物凄く久しぶりに読む作家さんの作品が続くなぁ。大学生の時、大好きでしたねー、橋本治さん。小説も評論も。実に多芸多才で幅のある方ですよね。『 源氏物語 』の現代語訳で出会ったという人の中には、この人のもうひとつの代表作である『 桃尻娘 』の系統や各種の前衛的とも言える評論を受け入れない人も多いのではないかなぁと思います。まぁ、最近は全く桃尻娘的なところはないのですが。 で、読後の感想。いやぁ、お互いオトナになったなぁ~。 …って、橋本氏は実際はずっと大人でいらしたんですけどね。ただ、昔の作品の読者からすると、「 うわぁ、橋本治がこんなの書いちゃうようになったんだぁ… 」って感じなんです。そのくらい普通のいい小説集なんですね、これ。そして、それがわかるところが自分がオトナになったと思った所以ですが^^; 男性である著者が書いたとは思えないほど女性の心情とか細かい背景がリアルで、こういうのが苦手な私としてはちょっとやられたって感じです。 そうなんです。いい小説だとは思うのですが、私はこういうの好きじゃないんですね(-"-;) だから、「 面白かった 」とは言いづらくて星もちょっと迷ったのですが、好きじゃないタイプの小説なのにここまで読ませるのだからと思って三つにしました。子供の視点から幼児虐待について描いた 『 ふらんだーすの犬 』 は読む価値のある作品です。ただ、私はこういう救済ではなく現実の救済が必要だと思います。もちろん辛く苦しく不幸なまま死んでいくよりは、せめてこうであって欲しいとは思うけど、それは問題のすり替えですよね。まぁ、著者はそんなことは当然わかっているし意図するところは違うのでしょうけど。 しかし、橋本氏は今後はずっとこういう路線なのかなぁ。 『 愛の矢車草 』 や 『 鞦韆 』 みたいなのはもう書かれないのかしら。ああいう普通とちょっと違う世界を書くのにはもう飽きちゃったのかな。まぁ、私も今あれらの作品を読むとちょっと濃い気はするだろうとは思うけど…。(ちなみにどちらも普通とはちょっと違う愛とか性の物語です。文体とか技法もちょっと独特)