『長安牡丹花異聞』 森福 都

(2005年8月読了分。感想などは当時のもの) 長安牡丹花異聞 森福 都(文春文庫) ¥650 評価…★★★★☆ <あらすじ>舞台は唐の都・長安。父の病没後15歳の身で心身共に健康でなくわがまま放題の母を養うため苦労していた黄良は、金を手に入れるため暗いところで発光する牡丹を開発する。時あたかも富貴花(牡丹)の名花奇花を求めて人々が狂奔する時代。その牡丹が縁で知り合った崔融とふたりで、その牡丹をもとに一攫千金を目論むが…(表題作)。他、「累卵」「チーティング」「殿」「虞良仁膏奇譚」「梨花雪」全6編収録。
森福氏の作品は面白いんだけど夢中になるって感じじゃない。それはきっと登場人物に感情移入できないからだと思う。それは決して人物造型に難があるというわけではなく、ひとえに淡々としているからだ。今回、同時進行で古典訳の本を読んでいたので思い当たったのだが、氏の作品は古典の訳文や翻案の作品に近い。ある種の時代小説にも近いかな。私としては、やたら扇情的なシーンを入れる今時の小説よりこういう叙述的な小説の方が落ち着くので、このまま頑張って欲しいと思う。 でも、氏は現代ものも書いておられるんだよなぁ。寡聞にしてまだ読んだことがないのだが、それはどうなんだろう?