『 ファーストフード・ネイション 』 ( 2006・米 )

◆ ファーストフード・ネイション  ( 2006年・アメリカ )

 監督:リチャード・リンクレイター

 出演:グレッグ・キニアイーサン・ホーク、 カタリーナ・サンディノ・モレノ

    アシュレイ・ジョンソン、アヴリル・ラヴィーンパトリシア・アークエットポール・ダノ

 評価…★★★★☆

<あらすじ>

大手ファーストフードチェーンのミッキーズ・バーガーの人気商品はビッグワンというハンバーガーだ。 バーベーキューの匂いの人工香料を添加するなどの手法が受けているようだ。もちろんこれは公にはされてない手法だが、本社の研究室ではその手の添加物に開発に余念がないし、マーケティングにも熱を入れている。

そんな折、ある筋からとんでもない情報が入ってきた。ある大学院の学生がファーストフード各社の肉パテを分析したところ、ミッキーズ社のパテからは多量の糞便性大腸菌が検出されたというのだ。常識では考えられないことで何かの間違いだろうとは思うが、たとえ何らかの手違いで生じたことだとしてもこれが公になったら社の存続にも関わりかねない。

マーケティング部長のドンは、社長から密かに内部調査をするよう命じられ、コロラドにある工場へと向かった。社長もドンも古くからある工場と担当者に信頼を置いており、何らかの事故のようなものだろうと思っていた。実際に視察した工場も衛生的で効率的に管理されている。なのに何故?困惑するドン。

しかし、周辺の関係者への調査を進めるうちに驚くべき真実が明らかになってきた。効率と利益を追求するうち、工場で勤務する人員は低賃金で違法労働をする密入国者ばかりになっていた。コミュニケーションも万全でない上に、過酷な労働で疲弊した密入国者たちを使い、フル回転で稼動する工場は必然的に事故や不備が多くなる。そして、それを気に留める者もいなくなるのだ。

事情を知り問い詰めるドンにコロラド支社長は平然と言い放つ。「 焼いちまえば安全だ 」。そして、自らがそれを証明するように自社のバーガーにかぶり付く。

付け加えれば、自分のことだけを考えて、目の前の仕事を適当に片付けているのは工場関係者だけではない。店舗での作業に従事するアルバイト店員のほとんどがそうだ。店にも製品にも仕事にも愛情も誇りもなく、効率や衛生管理などという概念もない。製品をつまみ食いし、汚い手で作業をし…。

企画、製造から店舗での調理、給仕に至る全ての段階で大小様々な問題をはらんだファーストフード。しかし、人々は何も知らず、考えることもなく、今日も明日もそれを食べ続ける。


食べ物話がすきで、そこから流れてファーストフード系の話も好きな私。あ、ファーストフードも好きですよ。 田舎の貧しい子供だったので、憧れの食べものという意識がいまだに消えなかったりします f^_^;) ファーストフードの栄養面における怖さを描いたノンフィクションである 『 スーパー・サイズ・ミー 』 も面白く見ましたが、いまだにレビューを書いてませんf^_^;)

で、これはフィクションだけど、原材料汚染からくる現場視察という大筋があるようなので、内部告発系なのかなと思って見たら、これがなかなか難しい話なんですねぇ…。

んーと、はっきり言うとオチてないし、映画としての首尾結構はいかがなものか?って作品ではある( 無論これは好みの問題 )のですが、様々な問題提起をはらんだ作品ではありました。

ファーストフード業界 ( に限らず、おそらく食品業界全般 )に蔓延する欺瞞とか、外食産業における管理の甘さ ( とは言え、バイトひとりひとりの行動まで管理できないのが現実ですよね…。まぁ、日本人は比較的安心な気はするけど )、 価格競争に対抗するための手段としての外国人労働者アメリカにおいては多くは密入国者 ) の起用と、その労働者たちの人間模様などなど…。

オチてない感じのラストはわざとで、そして、あれはある意味オチてるんですが、うーむ…って感じなんですよねぇ…。正直言って、自分で調理した以外の料理ってほとんど信頼できないとは思っているので、ファーストフードになんか何の期待もしてないんですよ。だから、個人的な理由でムカついたバイトにバーガーに唾を入れられるくらいは想定の範囲内。まぁ、物凄く嫌で許しがたいですけど、廉価な外食ってのはそのくらいのリスクを負うことだと思うわけです。しかし、最初から肉に糞便性大腸菌が存在すると言われてはさすがに凹みますよね…(-"-;) まぁ、何も事故は起こってないから実際問題はないのかもしれないけど。

ともあれ、この衛生上の管理の杜撰さは許されることではないのですが、その職に従事している移民たちの姿を見たりすると、うっかり 「 ああ、そういうことが起こっても仕方ないかなぁ 」 とか思っちゃいそうになります。が、しかし、それは勿論間違いなのです(>_<) 

密入国者を使うこと自体は構わないと思うのですよ。様々な問題があるとは言え、当面はお互いのためになることですし。ただ、不当にこき使い、その結果、製品も製造者も安全が脅かされるという状況だけは避けねばならないと思うのです。 今回のように問題が発覚して大事になって、正規労働者も密入国者による非正規労働者も職を失うことになったら意味がないでしょう。 場当たり的な対応になりがちだとは思うけど、目先のことだけを考えずに何が大事なことか、考えて行動することが必要だと思うのですよね。それを踏まえた上での必要悪はある程度許されると思う。もちろん放置しておいてはならないのですけど。…って、だんだん何を言っているのだかわからなくなってきましたな(*_*)

そんな感じで大きな問題を様々はらんだ作品で、実際にキツイ描写もあるのですが、全体的にはそんな重苦しいシリアスな雰囲気はありません。学生バイト店員で、その後、環境破壊反対の運動かなんかに目覚めるアンバーちゃんがらみの話はかなりコメディタッチで、エピソードや会話も面白いです^^ 牛たちを解放しようと牧場の柵を壊したのに、牛たちは全く動かなくて呆然とするシーンとか、何てバカなんだろうと滑稽に思いつつ、机上の論理を振り回す連中の危険性とかいったまた別の問題を感じたりなんかもして。あと、奔放なお母さんとその弟である叔父さんとアンバーのやりとりも面白かったな。なかなか深い台詞もありましたし。あんな叔父さん欲しいよねー。日本にはまずいなさそうだけど。

キツイ描写の中でも、工場内の食肉加工作業は相当見応えがあります。 これはどこかの工場でのリアルな作業風景だと思うのですが、人によっては正視に耐えない可能性大。 皮を完全に剥いだ牛の顔を初めて見たよ(*_*) 最初何だかわかんなくてじっと見て、途中で気付いて目が離せなくなってしまった…。

ちなみに魚のハギに似てました。やはり生き物の進化の過程というのは共通であるのだなぁと実感。( そこなのか? )

しかし、本作って実は凄い豪華キャストなんだよね。地味な感じの作品なのに。ちなみにアヴリル・ラヴィーンはかなりチョイ役^^; でも、確か彼女自身が環境保護運動か何かしてるんだよね( 例によってうろ覚え。ウソだったらごめんなさい… )。そういう関係で出演したのかなぁ。