『 粘膜人間 』 飴村 行

◆ 粘膜人間  飴村 行 ( 角川ホラー文庫 ) \540  評価…★★★☆☆       <あらすじ> 「 雷太を殺そう 」。15歳の利一と14歳の祐二の兄弟は11歳の義弟の殺害を決意した。 小学生ながら身長195cm、体重105kgという異常な巨体を持つ雷太の、反抗期というレベルではない横暴な振る舞いと、それに伴う暴力。一ヶ月ほど前から始まったそれが、とうとう父親にまで及んだのを目撃した時、ふたりは自分たちの身を守るためにはこうするしかないと判断したのだ。 そして、人間離れした雷太を殺すために二人は人間以外の生き物の手を借りることにする。それは村外れの沼に棲む河童たちだった。 しかし、人ひとり殺すという依頼はそう簡単なものではなく、まず河童への仲介を依頼した人物への礼、そして河童たちへの礼を果すために、兄弟たちは次々と道を踏み外していく。 そして、屈辱と罪の果てにようやく雷太を殺害する運びとなったが…。
えーと、とりあえず 「 粘膜人間 」 は出てこないです(笑) 私はそういう化け物が出てくるのかしらという期待をもって読んだので、そこはちょっとがっかり^^; で、紹介文とかに 「 衝撃の問題作 」 と書かれているのは、まぁ偽り無しですね。衝撃かどうかはともかく凄く問題のある作品です。何というか、エロいし、グロいし、汚いし、下劣。それなりに感情移入とか同情とかはできちゃうんですけど、でも、みんなそれぞれ最低なんですよねぇ…。これはR-18くらいにした方がいいんじゃないの?って気がするくらいの作品でございます。まぁ、私は嫌いじゃないし、面白いとも思うんですが、でも、好きとも言い切れないなぁ…。色々とちょっとひどいのよね。 ※以下ネタバレ有り※ まず、河童への仲介を依頼しに行ったベカやんが代償として、祐二に手淫を要求するのですね。物語はまだ冒頭だし、ベカやんはかなりいい人そうに見えるのに、いきなりこれかとちょっとショックです(*_*) まぁ、きちんと理由を説明 ( ってのも何だが… )してるし、体を要求するより百倍マシではあるんですけど、その手淫シーンをきっちり描写してるのがかなりげんなりします(T_T) で、獣欲に支配された河童の要求ぶりと、それに応えて村八分になった同級生の清美を差し出す祐二の下劣さに更にげんなり。まぁ、河童がケダモノ的なのは別にいいのはいいんだが、しかし…という感じ(-"-;) しかも、祐二はその後、自分も清美をモノにしようとか考え出して、実行するし。いや、そんなに珍しくない設定ではあるんだけど、対象も行為者も14歳の中学生ってとこがねぇ…。で、コトへの及び方も言動も薄汚い中年男みてぇなの(-"-;) そして、本筋とはさほど関係ない清美の話がまた物凄いのね。まず、兄と道ならぬ関係にあるし、国で禁じられた宗教の信徒( 江戸時代のキリシタンみたいな位置づけらしい )という設定。で、色々あって軍に拷問されるんだけど、その拷問ぶりがまた凄い。生命喪失の恐怖を疑似体験させる 『 髑髏 』 という幻覚剤を飲まされるんですが、この幻覚内での出来事が凄い。蕎麦が食べられなくなりますよ。個人的には槍のくだりが好きです^^;( 好きなんかい!…と一応突っ込んでおこう ) で、この際ついでに言っておけば、兵役拒否で失踪したことになっている兄とその婚約者を殺したのは清美で、彼女は祐二も事後に殺します。彼女は最初から壊れてるんですよね。 で、その後の河童と雷太の死闘とか、その結果、脳が半分零れ落ちて片目も潰れたのに生きて動いてしゃべってる雷太とか、河童の協力の下その状態を治療 ( というか何というか… )するくだりとかは、ちょっと滑稽な感じもしつつ、残虐でグロテスクで、でも、何だか淡々としていて面白いです。 ラストは 「 え? 」 って感じなのですが、まぁこれはストーリーを楽しむ作品ではないのでいいかと思えます。悪夢のような残虐で下劣な世界の描写を楽しめる人には素晴らしい作品でしょうね。しかし、これが良くて『 バトル・ロワイアル 』 がダメってのはどういう基準なのだ? リアルな世界だとダメってことなんですかね? ( 11月読了分 )