『 顔のない裸体たち 』 平野 啓一郎

◆ 顔のない裸体たち  平野 啓一郎 ( 新潮文庫 ) \380 評価…★★★☆☆ <あらすじ> 地方の中学教師・吉田希美子が出会い系サイトで知り合ったのは、陰気な独身公務員・片原盈だった。平凡な日常の裏側で、憎悪にも似た執拗な愛撫に身を委ねる彼女は、ある時、顔を消された自分の裸体が、投稿サイトに溢れているのを目にする。その時、二人は……。人格が漂流するネット空間を舞台に、顰蹙の中でしか生きられない男女の特異な性意識と暴力衝動に迫る衝撃作!  ( 文庫裏表紙紹介文 )
※以下ネタバレ有り※ うーん、何というか思いの外に表面的な作品なのですね。題材は刺激的で扇情的ですから、それなりには面白く読めましたが、平野啓一郎ならではの何かと言うのはなかったように思います。いや、平野氏の本をろくに読んでないのに、こういうことを言うのは僭越だとは思いますが、でも、やっぱりねぇ。 作品は作家のものですから書きたいように書いていいとは思いますけど、平野氏クラスになるとある種のブランドのような安心感とか期待感があるので、少しはそういうのに応えて欲しかったなと思います。この題材で、この程度の内容であれば、『 新潮45 』 のドキュメント読んでた方がいいなと思っちゃいましたよ。 ふだん純文学しか読まないような方には瞠目の作品なのかもしれないですけど、裏社会や鬼畜系好きの私には何ともありきたりな感じの作品でした。内面描写も叙景描写も展開もね。 もしかして、何かの意図があって、わざと薄っぺらくしているのかしら? そういう深い文学的意図みたいなを読み取るのは苦手なので、全くわかりませんでしたが。それにしても、学校襲撃的になっちゃうラストは全くもっていただけないなぁ。 まぁ、出会い系とか露出趣味とかに興味がある人には面白いかもしれません。実際にそういう趣味がある人には食い足りないかもしれないけど。あ、そういう題材なので、そこそこ過激な性的描写を含んでいますので、そういうのがお好きな人にもいいかな?(笑) 私にはいずれもイマイチでしたが。 そんなわけで、結構軽く読めて退屈はしませんので、平野啓一郎作品として読むのではなく、扇情的な内容のエンタテイメントとして読む分にはいいかなと思いましたので、星は3つにしてみました。